今月、あなたは店の平均単価を見たとします。
先月と、大きくは変わっていません。
あなたは少し安心します。
その安心は、たぶん早すぎます。
平均は、中身がどうなっていても同じ値を出せるからです。
上と下が大きく割れていても、平均は静かなままです。
この記事を読み終えたあと、あなたは1つだけ持ち帰ります。
平均のとなりに、中央値と並び順を置く、という見方です。
あなたの管理画面で、今日できます。
中央値や分布という言葉は、かたく見えるところです。
けれど、やることは並べ替えだけです。
新しいツールも、計算式も出てきません。
平均は、ばらつきを1つの数に畳んでしまいます
平均の作り方を思い出してください。
全部を足して、個数で割ります。
それだけです。
この計算には、都合のいい性質があります。
どれだけばらついていても、1つの数にまとまります。
出た数は、いつも「ありそうな値」の顔をしています。
そこが、落とし穴です。
平均は、ばらつきを消す方向にしか働きません。
消えたばらつきは、出てきた値の中には残っていません。
あなたが見ているのは、畳んだあとの結果です。
畳む前に何が起きていたかは、その数字からは読めません。
同じ平均でも、あなたの店は別の店になります
2つの店を思い浮かべてください。
片方の店では、どの商品もだいたい同じくらい売れています。
もう片方では、1つの商品だけが飛び抜けて売れています。
残りの商品は、ほとんど動いていません。
この2つの店は、平均をとると近い値になることがあります。
数字の上では、似た店に見えます。
けれど、明日やることは正反対です。
前者の店は、全体を少しずつ押し上げる話になります。
後者の店は、飛び抜けた1つを守る話から始まります。
その1つが在庫切れを起こした月に、売上が崩れるからです。
平均は、この違いを教えてくれません。
教えないのではなく、構造として持っていません。
平均を超えている商品が、半分もないことがあります
平均を「真ん中の値」だと読んでしまうことがあります。
けれど、平均は真ん中ではありません。
大きく売れている商品がいくつかあると、平均はそちらへ引っぱられます。
引っぱられた平均は、大半の商品より上に来ます。
結果として、あなたの商品の多くが「平均以下」になります。
これは、あなたの店が弱いという話ではありません。
平均という計算の、ただの性質です。
だから、平均以下の商品を数えても意味がありません。
数えるべきなのは、列のどこで値が落ちているかです。
中央値は、列の真ん中に立っている商品です
中央値の作り方は、平均よりも簡単です。
売上の高い順に、商品を1列に並べます。
ちょうど真ん中にいる商品の値が、中央値です。
足し算も割り算も、いりません。
中央値には、平均にない強みがあります。
極端な値に引っぱられません。
上のほうで1つが跳ねても、真ん中に立つ商品は変わらないからです。
平均と中央値を並べると、あなたには形が見えてきます。
- 平均のほうがずっと大きい → 上に偏っています
- 2つが近い → ばらつきは小さめです
- 中央値のほうが大きい → 下に重い商品が多くあります
どれが良いという話ではありません。
どれなのかを知らないまま手を打つのが、いちばん遠回りになります。
分布は、並べ替えるだけで目に見えます
分布という言葉は、かたく聞こえます。
やることは、並べ替えだけです。
まずは、売上の高い順に商品を並べてみてください。
上から順に眺めていくと、どこかで値がガクンと落ちます。
その落ちた場所が、あなたの店の切れ目です。
切れ目より上は、いまの売上を作っている商品です。
切れ目より下は、棚に置いてあるだけの商品です。
この2つは同じ店の中にありますが、抱えている問題は別です。
1つの平均で語ると、その別々の問題が混ざります。
上と下では、打つ手が正反対になります
切れ目の上にある商品から見ていきます。
上位の商品は、守る対象になります。
在庫を切らさないこと。値引きに頼りすぎないこと。
広告を止めたときに何が起きるかを、先に知っておくこと。
ここが折れると、平均は一気に下がります。
切れ目の下は、増やす対象になります。
ただし、下位の商品はさらに2つに分かれます。
- そもそも人が来ていない商品
- 来ているのに、買われていない商品
前者は、見つけてもらう話です。
後者は、商品ページの中身の話です。
打つ手は、まったくちがいます。
平均だけを見ていると、この分岐にたどり着きません。
平均は、上と下を混ぜたあとの1つの数だからです。
平均が動かない月ほど、中身は動いています
いちばん気をつけたいのは、平均が安定している月です。
上位が落ちて、下位が少し伸びたとします。
このとき、平均はほとんど動かないことがあります。
数字の上では「変化なし」と読めます。
けれど、あなたの店は変わっています。
売上を支えていた柱が、細くなっています。
平均だけを見ていると、あなたはこれに気づくのが遅れます。
気づくのは、柱が折れたあとになります。
そのときには、打てる手が減っています。
平均を捨てる必要は、ありません
ここまで読むと、平均が悪者に見えるかもしれません。
そうではありません。
平均には、平均の役目があります。
月ごとに並べて、大きく動いた月を見つけるのに向いています。
見張り役としては、じゅうぶん働きます。
問題は、平均だけで止まることです。
平均が動いた理由は、平均の中には入っていません。
理由は、並び順のほうに残っています。
だから、平均は入り口として使ってください。
そのあとに、中央値と並び順を開きます。
同じ見方は、注文の金額にも使えます
分布で見る相手は、商品だけではありません。
注文1件あたりの金額にも、同じことが起きます。
平均客単価は、まとめ買いをした少数の注文に引っぱられます。
引っぱられた平均を目標にすると、届かない数字を追いかけることになります。
こちらも、並べれば形が出ます。
注文を金額の高い順に並べてください。
上のほうに、けた違いの注文がいくつかあるかもしれません。
その注文が、いつ、どの商品で起きたかを見ます。
まとめ買いが起きる条件が分かれば、増やしにいけます。
平均のままでは、条件は見えません。
「平均以上を目指す」は、目標になりません
平均を目標に使うと、あなたは動きにくくなります。
理由は2つあります。
1つ目は、平均が自分の行動で動くことです。
売れない商品を1つ消すだけで、平均は上がります。
店の中身は、何も良くなっていません。
2つ目は、平均以上という言い方が場所を指さないことです。
どの商品を、どこまで上げるのかが決まりません。
決まらない目標は、来週には忘れられます。
並び順で目標を立てると、場所が決まります。
「切れ目のすぐ下にいる商品を、上へ動かす」と言えるからです。
やることが1つに定まります。
今日あなたがやることは、10行ならべるだけです
分析ツールを増やす必要はありません。
いま使っている管理画面で終わります。
10行と聞くと、手間に思えるところです。
やるのは書き写すだけで、良し悪しの判断は今日はしません。
- 商品ごとの売上が出る画面を開きます
- 期間を決めます(直近1か月などで構いません)
- 売上の高い順に並べ替えます
- 上位5つを、商品名と値で書き出します
- 下位5つを、同じように書き出します
- 真ん中あたりにいる商品の値も、1つ控えます
合わせて、10行と少しです。
スプレッドシートでも、スマホのメモでも構いません。
書き出したら、上位5つと下位5つを見比べてください。
何倍ちがうかを計算する必要は、今日はありません。
桁がちがうかどうかだけ、目で見れば十分です。
そして、この10行を来月もう一度つくってみてください。
同じ商品が上位に残っているか。
下位から上がってきた商品があるか。
平均だけを見ていたときには、どちらも見えませんでした。
2回目からは、比べる相手が手元にあります。
そこから先は、あなたの店の話になります。
一度で全部を読み取ろうとしなくて大丈夫です。
毎月、この10行だけを残していってください。
積み上がった分だけ、あなたは自分の店の形を言えるようになります。
この記事の3点を、もう一度置いておきます
言いたいこと
平均は、あなたを安心させます。
けれど、上と下が大きく割れていても同じ値を出します。
割れている場所を知らないまま打つ手は、どちらにも効きません。
見る数字
中央値と、売上の高い順に並べた並び順(分布)です。
平均は入り口として残し、そのとなりに置きます。
次にやること
商品を売上の高い順に並べ替えて、上位5つと下位5つを書き出します。
真ん中の商品の値も、1つだけ控えます。
来月もう一度つくって、上位の顔ぶれが変わったかを見ます。

