BtoB取引において、「いつ・どのように支払ってもらうか」は、売上だけでなくキャッシュフローや取引先との関係にも大きく影響します。特に、掛け売りが中心となる法人間取引では、請求タイミングや支払いサイト、分割・一括などの条件を、取引先ごとに柔軟に調整できるかどうかが重要なポイントです。
この記事では、Shopifyを利用している事業者の方を対象に、BtoB向けの決済オプションを拡大し、柔軟な支払い条件を設定できるようにする考え方と、その活用イメージを整理します。専門的なIT知識がなくても理解できるよう、具体的なシナリオや運用時の注意点を交えながら、「取引先にとって支払いしやすく、自社にとっても管理しやすい」決済まわりの整え方を解説していきます。
目次
-
B2B取引で求められる多様な決済オプションとは
-
柔軟な支払い条件がもたらす売上拡大と取引継続の効?
-
請求書払いとクレジットカード払いをどう使い分けるか
-
分割払いと後払い条件の設計で注意すべき与信と回収リスク
-
Shopify上での支払い条件設定と運用フローの整理方法
-
取引先ごとに異なる決済条件を管理するための実務ポイント
-
トラブルを防ぐための契約条項と支払いルールの明文化方法
-
To Wrap It Up

B2B取引で求められる多様な決済オプションとは
法人間の取引では、クレジットカード決済だけでは現場のニーズを十分にカバーできません。仕入れサイクルや入金サイクルが取引先ごとに異なるため、売り手側は複数の支払い手段と支払サイトを柔軟に組み合わせる必要があります。Shopifyでは、外部サービスとの連携や支払い条件のカスタム設定を活用することで、取引先ごとの与信や支払いパターンに合わせた運用が現実的になります。
-
請求書払い(銀行振込・口座振替)
:月末締め翌月末払いなど、取引慣行に合わせた支払サイトの設計が可能
-
クレジットカード・デビットカード
:少額・スポット取引向けに運用しやすい即時決済手段
-
掛け払い・後払いサービス
:与信や入金管理を外部サービスに委託し、未回収リスクを軽減
-
分割・リース・サブスクリプション
:高単価商品や継続取引に対して支払いを平準化
|
決済オプション |
向いているケース |
Shopify上の運用イメージ |
|---|---|---|
|
銀行振込 |
既存取引先・高額受注 |
支払い条件をメタフィールドで管理し、請求書を別途送付 |
|
掛け払いサービス |
新規法人顧客・与信管理を任せたい場合 |
決済アプリ連携でチェックアウトに追加 |
|
カード決済 |
少額・オンライン完結の受注 |
標準のオンライン決済方法として常時表示 |
|
サブスクリプション |
定期仕入れ・保守サービスなど |
定期購買アプリを利用して自動課金を設定 |
柔軟な支払い条件がもたらす売上拡大と取引継続の効?
Shopify上でB2B向けに柔軟な支払い条件を用意すると、「すぐには買わないが検討中」の見込み顧客が動きやすくなり、中長期的な売上と取引継続率の両方に影響します。特に、締め支払い・分割・前金+納品後残金といったパターンを使い分けることで、取引先のキャッシュフローに合わせた提案ができ、結果としてカート離脱の抑制や平均受注単価の向上につながります。無理に一律条件を押しつけるのではなく、「いくつかの選択肢」の中から顧客に合うものを一緒に設計していくことがポイントです。
-
初回は前金重視、継続後は条件緩和
:与信が固まるまでリスクを抑えつつ、徐々に条件を緩めて受注を拡大。
-
発注頻度に応じて支払いサイトを調整
:月1回の顧客と週次発注の顧客で、支払いサイクルを変える。
-
キャンペーン的に条件を一時改善
:新商品の導入期だけ支払い条件を優遇し、採用ハードルを下げる。
|
支払い条件 |
売上への影響 |
取引継続への影響 |
|---|---|---|
|
一括前払いのみ |
単発受注は取りやすいが、客層が限定されやすい |
価格交渉に流れやすく、関係が浅くなりがち |
|
30〜60日後払いを選択可 |
初回ロットを増やしやすく、導入規模が拡大しやすい |
支払いサイトを理由に他社へ乗り換えにくくなる |
|
購入実績に応じた条件改善 |
顧客側が「まとめ買い」のインセンティブを持ちやすい |
長期的なパートナーシップとして位置づけられやすい |
運用面では、柔軟な支払い条件を「個別対応の例外」にせず、事前にいくつかのパターンとして社内ルール化しておくと、ショップ運営チームも対応しやすくなります。たとえば、Shopify上のB2B価格ルールやタグ管理と組み合わせて、特定タグの顧客には自動で「60日サイト+月末締め」を案内する、といった形です。これにより、営業担当が条件交渉に使う時間を減らしつつ、顧客ごとに最適な支払い条件を継続的に提供でき、売上拡大と取引継続のバランスを取りやすくなります。

請求書払いとクレジットカード払いをどう使い分けるか
日々の受注処理では、取引先の属性や目的に応じて支払い方法を切り替える発想が重要です。例えば、仕入れ規模が大きく、社内承認フローが複雑な法人には、社内経理と相性の良い
請求書払い
を基本とし、小口のスポット発注やテスト発注には、決済スピードが早い
クレジットカード払い
を提案する、といった運用です。あらかじめ顧客セグメントや取引金額の目安を決めておくことで、現場担当者が迷わず支払い条件を提示できるようになります。
運用ルールを整理する際は、次のような観点で使い分けを設計すると管理しやすくなります。
-
取引金額の大きさ
:高額は請求書、小額はカードを優先
-
取引頻度・継続性
:定期取引は請求書、単発や新規はカード
-
与信リスク
:新規・未実績の企業はカード、実績のある企業は請求書
-
社内経理との整合性
:締め日・支払日を揃えやすい方を選択
-
顧客の購買プロセス
:稟議・見積必須のケースは請求書を前提に設計
|
観点 |
請求書払いに向くケース |
クレジットカード払いに向くケース |
|---|---|---|
|
金額 |
大型ロット・高単価のB2B受注 |
少額の追加発注・サンプル購入 |
|
取引状況 |
継続的な取引先・既存顧客 |
初回取引・スポット注文 |
|
運用面 |
月次締めでまとめて請求したい場合 |
その場で入金確定させたい場合 |

分割払いと後払い条件の設計で注意すべき与信と回収リスク
分割払いや後払いを導入する際は、まず「どこまで与信を許容するか」を数値で定義しておくことが重要です。Shopifyの注文履歴や、過去の請求データをもとに、リピート顧客と新規顧客で条件を分けると管理しやすくなります。たとえば、新規は少額・短期、リピートは高額・長期といった形で、債権残高の上限や支払サイトを変えると、売上機会を維持しながらリスクを抑えられます。社内の営業判断だけで例外対応を広げてしまうと、未入金が積み上がりやすいため、運用ルールをあらかじめテキスト化し、共有しておくことが欠かせません。
-
与信上限額:
1社あたりの未回収残高の最大値
-
支払サイト:
月末締め翌月末払いなどの条件
-
初回取引条件:
分割不可・前払いのみなどの制限
-
延滞時の対応:
自動リマインド送信、次回以降は前払い限定 など
|
顧客区分 |
与信上限 |
支払条件 |
回収リスク対策 |
|---|---|---|---|
|
新規企業 |
10万円 |
納品後30日以内一括 |
分割・後払いは利用不可 |
|
通常取引先 |
50万円 |
月末締め翌月末払い |
延滞1回で一時的に前払いへ変更 |
|
優良取引先 |
150万円 |
最大3回分割可 |
遅延発生時のみ条件見直し |
回収リスクを抑えるには、Shopify上のワークフローと外部ツールを組み合わせ、できるだけ自動でステータス管理することが現実的です。たとえば、支払期日の7日前・当日・7日後に自動メールを送る、入金が確認できなければ「与信停止」タグを自動付与する、といった仕組みを用意すると、担当者に依存しない運用ができます。また、延滞が続いている先には、次回以降は
「分割回数の制限」
や
「後払い上限の引き下げ」
を行うなど、ルールに沿って機械的に条件を見直すことで、売上は確保しつつ、回収不能になる前のコントロールがしやすくなります。
Shopify上での支払い条件設定と運用フローの整理方法
まず押さえておきたいのは、「どの取引先に、どの支払い条件を適用するか」を明確にルール化することです。Shopifyの顧客グループ(タグや会社情報)を活用し、取引先属性ごとに条件を整理しておくと運用が安定します。例えば、与信済みのリピーター企業には掛売り条件を、初回取引の企業には事前入金を設定するといった形です。実務では、以下のような観点で条件を分類しておくと、後から運用を見直しやすくなります。
-
決済タイミング:
前払い/納品後◯日/月末締め翌月◯日払い など
-
対象となる顧客:
新規・既存、販売代理店、特約店 など
-
注文金額の閾値:
一定金額以上は別条件にする など
-
支払い方法:
銀行振込、クレジットカード、請求書払い など
|
顧客タイプ |
支払い条件 |
運用ルールの例 |
|---|---|---|
|
新規企業 |
事前入金 |
初回3件までは前払いのみ |
|
リピーター |
納品後30日 |
延滞がなければ自動で継続 |
|
代理店 |
月末締め翌月末 |
月次で注文をまとめて請求 |
運用フローは、
「受注」→「請求」→「入金確認」→「与信・条件見直し」
の4つのステップに分けて考えると整理しやすくなります。Shopify管理画面では、注文メモやタグを活用して「請求済み」「入金待ち」「入金済み」を可視化し、会計ソフトや請求書発行ツールと連携することで、手作業を最小限に抑えられます。また、入金遅延が発生した場合の対応(リマインドのタイミングや条件変更の基準)もあらかじめ決めておき、
社内で共有できる簡易フローチャート
やチェックリストを用意しておくと、担当者が変わってもスムーズに運用を引き継げます。

取引先ごとに異なる決済条件を管理するための実務ポイント
複数の取引先と継続的に取引する場合、まず押さえたいのは「誰に」「どの条件で」売掛を許容しているかを、Shopify外も含めて一元的に把握することです。スプレッドシートや外部ツールを使う場合でも、Shopifyの顧客タグやメタフィールドと連動させておくと、ストア運営チーム全体で条件を共有しやすくなります。例えば、取引先ごとに以下のような情報を必ず登録・更新しておく運用ルールを作ると、属人化を防ぎやすくなります。
-
標準支払サイト
(例:月末締め翌月末払い、30日後払いなど)
-
与信限度額
(1社あたりの上限、部門別の上限など)
-
請求書の送付方法
(メール・PDFダウンロード・郵送など)
-
遅延時の対応方針
(リマインド頻度、一時出荷停止条件など)
|
区分 |
支払条件の例 |
Shopify側の目印 |
|---|---|---|
|
新規・小口 |
前払い・クレジットのみ |
new-account
タグ |
|
通常取引先 |
月末締め翌月末払い |
net30
タグ |
|
重点先 |
60日後払い・個別上限額 |
key-account
+限度額メタフィールド |
次に、受注処理の現場で迷いが出ないよう、決済条件をオペレーションに落とし込むことが重要です。注文確認の際に「取引先タグ」「支払条件」「限度額の残枠」をひと目で確認できるビューを用意し、条件に合わない注文は自動フラグが立つように設計しておくと、出荷後のトラブルを減らせます。また、請求や入金確認の担当者と情報が分断されないように、以下の点を意識して運用を整えるとスムーズです。
-
ルールの文書化
:どの条件なら承認し、どの条件なら保留にするかを社内マニュアル化
-
ステータスの見える化
:入金遅延時は注文メモやタグで明示し、次回受注時に判断材料にする
-
定期レビュー
:売上・回収状況をもとに、支払サイトや限度額を四半期ごとに見直す
最後に、取引先ごとに条件を変えすぎると管理コストが増えるため、「パターン化」と「例外管理」のバランスを取ることが現実的です。まずは、2〜3種類の標準パターンを用意し、ほとんどの取引先はそのいずれかに当てはめます。そのうえで、取引規模や履歴に応じて一部の重要顧客にだけ個別条件を設定します。Shopify上では、標準パターンをタグや顧客グループで表現し、例外条件は顧客メモやメタフィールドに記録しておくと、スタッフが誤って標準条件を適用してしまうリスクを下げられます。
トラブルを防ぐための契約条項と支払いルールの明文化方法
支払い条件を柔軟にしつつもトラブルを防ぐには、「なんとなくの取り決め」を残さないことが重要です。shopifyの注文メモやドラフト注文、請求書メールのテンプレートを活用し、支払い期限や分割回数、前金の有無などをテキストで明文化しておきます。とくに、取引開始前にドラフト注文で条件を共有し、相手の確認・承諾をメールで残しておくと、後々の「言った・言わない」を避けやすくなります。
-
支払い期日
(〇日締め翌〇日払い など)
-
遅延時の対応
(リマインド日数・出荷停止条件)
-
キャンセル・返品条件
(受注生産品の可否、手数料有無)
-
決済手段ごとのルール
(銀行振込・請求書払い・カードなど)
-
与信・取引上限額
(初回注文の上限、増額の条件)
こうした項目は、取引先ごとにバラバラに管理するのではなく、Shopify内で使い回せるフォーマットを持っておくと運用が安定します。例えば、よく使う支払い条件パターンを
「標準条件」「短期決済」「分割可」
のようにテンプレート化し、ドラフト注文や見積もりメールに挿入できるようにしておくと、担当者ごとの書き方のブレを減らせます。下記のような簡易マトリクスを社内で共有し、取引先の規模や信頼度に応じて選べるようにしておくと便利です。
|
条件テンプレート |
支払いサイト |
前金 |
対象取引先の目安 |
|---|---|---|---|
|
標準条件 |
月末締め翌月末払い |
なし |
継続取引の既存顧客 |
|
短期決済 |
納品後14日以内 |
なし |
初回〜2回目の新規顧客 |
|
前金あり |
残金は納品後30日以内 |
受注金額の30% |
大型案件・受注生産品 |
To Wrap It Up
本記事では、B2B取引における決済オプション拡大のポイントと、柔軟な支払い条件を設定する際の考え方について整理しました。
B2B特有の与信や請求書払い、支払いサイトの調整などは、一度にすべてを変える必要はありません。まずは、自社の取引実態や取引先のニーズを確認し、「どの決済手段・条件から拡大するか」を明確にすることが重要です。そのうえで、運用フローや担当者の負担も踏まえながら、段階的に選択肢を増やしていくことで、リスクと手間を抑えつつ柔軟性を高めることができます。
今後、B2B ECの利用が一層一般的になるにつれて、「支払い条件の柔軟さ」は取引先にとっての比較ポイントのひとつになっていきます。自社のルールと体制に合った決済オプションを検討し、無理のない範囲で改善を重ねることで、取引先との関係性を維持しながら、オンラインでの受注・請求業務をよりスムーズにしていくことができるでしょう。