オンラインストアを運営していると、「もっとお客様に合わせた見せ方や販売ができたら」と感じる場面は少なくありません。同じ商品でも、地域や購入状況、利用シーンによって求められる情報や打ち出し方は変わってきます。しかし、あまり細かく分けようとすると設定が複雑になり、日々の運用負担が増えてしまう、というお悩みも多いのではないでしょうか。
そこで役立つのが、shopifyの「サブマーケット」機能です。サブマーケットを活用すると、国や地域ごと、あるいは特定の条件ごとにストアの見せ方や販売ルールを分け、より細かなターゲティングを行うことができます。従来の「マーケット」設定をさらに細分化できるイメージです。
本記事では、技術的な専門知識がなくても理解しやすいように、サブマーケット機能の基本的な考え方から、実際の活用イメージ、運用時のポイントまでを順を追って解説します。日々の業務に無理なく取り入れつつ、お客様により適切な体験を提供するためのヒントとして、参考にしていただければ幸いです。
目次
- サブマーケット機能とは何か Shopify運営における基本的な役割とメリット
- ターゲット市場の切り分け方 地域 言語 通貨別に整理する考え方
- 既存ストア構成の見直し サブマーケット導入前に確認しておきたいポイント
- 顧客セグメントごとの商品構成と価格設定 サブマーケットを活かした見直し方法
- 配送条件と決済手段の最適化 サブマーケット別に整える際の実務的な注意点
- コンテンツとプロモーションの出し分け サブマーケットごとに調整する運用例
- 運用開始後の効果測定 サブマーケット別レポートの見方と改善サイクルの回し方
- The Way Forward

サブマーケット機能とは何か Shopify運営における基本的な役割とメリット
Shopifyにおけるサブマーケットは、1つのストアの中に「ミニ店舗」を複数つくるようなイメージで、国・地域や言語、通貨などを軸にお客様を整理して管理するための仕組みです。これにより、同じ商品カタログを使いながらも、見せ方・価格・配送条件をセグメントごとに変えられるようになります。ストアを分割して別管理する必要がないため、在庫や商品情報は一元管理しつつ、フロントの体験だけを柔軟に変化させられる点が運営上の大きな利点です。
この機能を活用すると、オペレーションの設計がより整理されます。たとえば、以下のような観点で運営上の役割を持たせることができます。
- 地域別の価格戦略:購買力や競合状況に合わせた価格・ディスカウント設定
- 言語別の訴求内容:コピーやバナーを各市場に合わせて調整
- 通貨・決済手段の最適化:現地で一般的な通貨と支払い方法を優先表示
- 配送・返品ルールの分離:地域ごとに異なるリードタイムや送料ルールを設定
| 観点 | なしの場合 | サブマーケット活用時 |
|---|---|---|
| 商品ページ | 全地域で同じ内容 | 地域・言語別に訴求を調整 |
| 価格設定 | 一律価格で調整しづらい | 市場ごとに価格レンジを最適化 |
| 運営負荷 | 複数ストアで分散管理 | 1ストアで一元管理が可能 |
運営面でのメリットは、単に「多言語・多通貨に対応できる」というレベルにとどまりません。サブマーケット単位でKPIを切り分けられるため、どの市場がどのキャンペーンに反応しているのかを明確に把握しやすくなるほか、在庫・広告・クリエイティブの投資配分も根拠をもって判断しやすくなります。また、将来的に特定のエリアだけ独立ドメインに分けたい場合にも、事前にサブマーケットで検証しておくことで、リスクを抑えた段階的な展開が可能になります。

ターゲット市場の切り分け方 地域 言語 通貨別に整理する考え方
まず整理したいのは、「どの地域で」「どのような利用シーンの顧客に」フォーカスするかです。同じ国やエリアでも、購買タイミングやニーズが異なります。たとえば、日本国内でも都市圏と地方では配送スピードや送料への期待値が変わりますし、アジア圏では越境ECとしての関税や配送リードタイムが重要になります。こうした違いを整理するために、運営中のデータや問い合わせ内容をもとに、優先すべきエリアを明確に切り出しておくと、サブマーケットの設計がスムーズになります。
- 地域:配送可否、送料設定、リードタイム、祝日・セール時期の違い
- 言語:商品説明・FAQ・メールテンプレートの翻訳範囲と優先度
- 通貨:現地通貨表示の有無、為替変動リスク、決済手段の違い
| サブマーケット例 | 言語 | 通貨 | 運用ポイント |
|---|---|---|---|
| 日本向け国内 | 日本語 | JPY | 送料・お届け日表示を詳細に |
| 北米向け | 英語 | USD/CAD | サイズ表記と返品条件を明確に |
| ヨーロッパ向け | 英語+主要言語 | EUR | VAT込み価格と配送目安を統一 |
実務的には、最初からすべての地域・言語・通貨を細かく分ける必要はありません。優先したい組み合わせを決め、そこに対してだけ価格設定・コンテンツ・配送条件を最適化していきます。その際、サブマーケットごとに「何を変えるのか」をあらかじめルール化しておくと運営が安定します。例えば、価格は通貨ごと、配送ルールは地域ごと、ストア表示言語はアクセス国ごとに切り分ける、というように、基準を一つ決めて整理することで、後からサブマーケットを追加する際も混乱が少なくなります。

既存ストア構成の見直し サブマーケット導入前に確認しておきたいポイント
サブマーケットを活用する前に、まずは現在のストア構成が「どの国・地域に、どのような前提で」公開されているかを整理しておくことが重要です。特に、既存で複数ドメインやサブドメインを使っている場合、どれがどの市場向けなのかが曖昧になっているケースがよくあります。運用の重複や、意図しない地域のアクセス集中を避けるためにも、現状の構成を一度書き出し、役割が重なっているストアや不要になっている設定がないかを確認しておきましょう。
- ターゲット国・地域:現状どの国からの注文・アクセスが多いか
- ドメイン構成:メインドメイン/サブドメイン/国別ドメインの使い分け
- 言語・通貨:各市場ごとにどの言語・通貨を提供しているか
- 配送・決済:地域ごとに制限している配送方法・決済手段
| 現在の構成 | 確認したいポイント | サブマーケット導入時の検討例 |
|---|---|---|
| 単一ストアで全世界対応 | 主要な売上地域がどこか | 売上上位地域から順に専用サブマーケットを作成 |
| 国別に複数ストアを運営 | 在庫・コンテンツ管理が分散していないか | 共通の在庫・テーマを前提に統合を検討 |
| 言語別ストアを分割 | 同一地域に複数ストアが存在しないか | 1つのサブマーケット内で複数言語対応に集約 |
また、既存のテーマ設定やアプリ構成が、市場ごとの調整にどこまで耐えられるかも事前に洗い出しておきたいポイントです。例えば、価格表示のルールや配送料の計算ロジック、バナーやコレクションの見せ方など、「すべての国で共通とする部分」と「国・地域ごとに分けるべき部分」を切り分けておくと、サブマーケット導入後の設定がシンプルになります。特に、以下のような要素は、サブマーケット単位での出し分けが発生しやすいため、現状の依存関係を把握しておくとスムーズです。
- 送料テーブルや無料配送ライン:地域ごとにコスト構造が大きく異なる場合
- キャンペーンやクーポン設計:国別のプロモーションをすでに行っている場合
- 商品バリエーション:販売許可の有無やサイズ展開が国によって異なる場合
- ローカライズ済みコンテンツ:既に翻訳済みのページやブログ記事の扱い

顧客セグメントごとの商品構成と価格設定 サブマーケットを活かした見直し方法
まず押さえたいのは、サブマーケットごとに「誰に」「何を」「いくらで」売るのかを明確に切り分けることです。同じ商品でも、ターゲットによって見せ方も価格も変わります。例えば、日本国内のリピーター向けにはまとめ買いしやすいセット商品を中心に、海外向けサブマーケットでは単品購入しやすい構成にする、といった調整が可能です。これにより、在庫は共通管理しながらも、マーケットごとに最適な商品ラインナップを用意できます。
- 既存顧客向け:セット商品・定期購入・アップセル用の高単価ライン
- 新規顧客向け:お試しサイズ・スターターキット・ギフト需要を意識したパッケージ
- 価格に敏感な層:限定クーポン対象商品・旧モデル・アウトレット枠
- プレミア層:限定カラー・コラボ商品・先行販売枠
| サブマーケット | 代表的な構成 | 価格設定のポイント |
|---|---|---|
| 国内メイン | 定番・セット商品中心 | 基準価格を設定し、割引は最小限に |
| 海外向け | 単品+ギフト需要 | 関税・送料を含めた実質支払額で調整 |
| アウトレット | 型落ち・在庫過多品 | 基準価格からの値引率を明確にして整理 |

配送条件と決済手段の最適化 サブマーケット別に整える際の実務的な注意点
エリアごとに配送条件を調整する場合、まず意識したいのは「お客様の感覚」と「自社の採算」のバランスです。同じ国内でも、都市部と地方では配送リードタイムや配送料の相場が異なります。サブマーケットごとに、標準配送・速達/クール便・大型商品向けなどの区分を設け、各エリアの実コストとお客様の期待値をすり合わせることが重要です。また、キャンペーンや繁忙期には一時的に条件を変更することもあるため、「期間限定ルール」を想定しておくと、後から設定を見直しやすくなります。
- エリア別の配送コストの見える化(実績データをもとにサブマーケット単位で把握)
- リードタイムの差を明示(都市部1〜2日、離島3〜5日などの目安を表示)
- 送料無料ラインの分岐(平均客単価や送料負担を見ながら金額設定)
| サブマーケット | 送料無料ライン | 想定リードタイム | 備考 |
|---|---|---|---|
| 都市部 | ¥5,000 | 1〜2営業日 | 当日・翌日配送オプションを検討 |
| 地方 | ¥7,000 | 2〜4営業日 | 日時指定は余裕を持った設定に |
| 離島 | ¥10,000 | 3〜7営業日 | クール便・大型商品は追加料金を明記 |
決済手段については、サブマーケットごとの「支払文化」や「端末環境」に合わせることがポイントです。都市部ではモバイルウォレット決済や後払いの需要が高い一方で、地方や高齢者の多いエリアでは依然として代金引換や銀行振込のニーズがあります。実務上の注意点として、チャージバックや未払いリスクを抑えるために、リスクの高い決済手段は特定サブマーケットでのみ提供する、あるいは購入金額の上限を設けるといった線引きが必要です。
- 決済手段の出し分け:エリア特性や客層に応じて有効/無効を切り替える
- リスク管理:代引きは高額注文を制限、後払いは初回購入を対象外にするなどのルールづくり
- 表示の一貫性:商品ページ・カート・チェックアウトで案内内容をそろえ、混乱を防止
さらに、配送条件と決済手段は組み合わせで管理する設計が重要です。たとえば「離島では代引き不可」「クール便利用時は前払いのみ」「高額商品の分割払いは都市部サブマーケットのみ」といったように、エリア・商品属性・決済手段を組み合わせたルールを、あらかじめ社内でドキュメント化しておきます。WordPressや社内ナレッジとして、以下のような簡易表を管理画面に埋め込んでおくと、運用担当者の引き継ぎや変更時のチェックがしやすくなります。
| 条件 | 許可される決済 | 注意点 |
|---|---|---|
| 離島 × クール便 | クレジット、ウォレット | 代引き不可、到着遅延の可能性を明記 |
| 高額商品(¥50,000〜) | クレジット、分割払い | 後払い・代引きを除外し、事前決済を徹底 |
| 初回購入 × 地方サブマーケット | クレジット、銀行振込 | 後払いは2回目以降に限定 |

コンテンツとプロモーションの出し分け サブマーケットごとに調整する運用例
サブマーケットごとに最適な配信設計を行う際は、まず「誰に・何を・どこで」届けたいのかを整理します。同じ商品でも、市場によって強調すべきポイントは変わります。たとえば、日本と北米では購入動機や比較対象が異なるため、紹介する機能や実績も変えたほうが成果につながりやすくなります。そのうえで、Shopifyのコレクションやタグ、メタフィールドなどを組み合わせ、各サブマーケット専用のランディングページやおすすめ商品ブロックを用意しておくと、運用が安定します。
- 国内向けサブマーケット:サイズ感・配送スピード・レビューを重視した商品紹介
- 海外向けサブマーケット:ブランドストーリー・素材の信頼性・国際配送対応を中心に訴求
- 法人向けサブマーケット:ロット割引・請求書払い・導入事例を前面に出した構成
- リピーター向けサブマーケット:定期購入・セット割・買い替えガイドを軸にしたコンテンツ
| サブマーケット | 主なコンテンツ | プロモーション例 |
|---|---|---|
| 国内新規 | 使い方ガイド/Q&A | 初回送料無料・クーポンバナー |
| 海外新規 | ブランド紹介・英語レビュー | 通貨表示と関税説明ポップアップ |
| 法人 | 導入事例・見積もりフォーム | ボリュームディスカウントの固定バナー |
| リピーター | 購入履歴ベースのおすすめ | 次回購入◯%OFF・サンクスメール |

運用開始後の効果測定 サブマーケット別レポートの見方と改善サイクルの回し方
運用開始後は、まずサブマーケットごとの数値を切り分けて確認します。特に重要なのは、セッション数・コンバージョン率・平均注文額・リピート率の4つで、これらを一つのビューで比較できるレポートを用意しておくと変化を見つけやすくなります。たとえば、同じキャンペーンを配信しているにもかかわらず、特定のサブマーケットだけコンバージョン率が低い場合、「商品訴求が合っていない」「配送条件が障壁になっている」といった仮説につなげやすくなります。数値を見る際は、直近数日だけでなく、最低でも前月比・前週比で推移を見ることがポイントです。
| 指標 | 確認ポイント | よくある原因 |
|---|---|---|
| セッション数 | 流入が想定どおりか | 広告配分・リンク先設定 |
| コンバージョン率 | カート到達〜購入までの落ち | 決済手段・送料・在庫 |
| 平均注文額 | バンドル・アップセルの有無 | 価格構成・セット提案不足 |
レポートを見た後は、「気づき」で終わらせず、小さなテストを前提とした改善サイクルに落とし込むことが重要です。具体的には、次のような流れを週次〜隔週で繰り返します。
- 現状把握:サブマーケット別の主要指標を確認し、異常値や差分を洗い出す
- 仮説立案:「誰に」「何が」「なぜ刺さっていないか」を1〜2行で言語化する
- 施策設定:バナー文言変更、割引条件の調整、対象商品の差し替えなど、1サイクル1〜2施策に絞る
- 検証・記録:施策前後の指標を比較し、結果と学びを簡潔にメモとして残す
この改善サイクルを複数のサブマーケットで回していくと、エリアや顧客層ごとに「効きやすいパターン」が見えてきます。たとえば、ある地域では送料無料よりもお届け日指定が重視されている、一部のリピーター向けには定期購入の訴求が有効、といった学びです。こうした知見は、サブマーケット単位だけでなく、全体の販促や商品企画にも応用できます。レポートは「結果を眺めるため」ではなく、「次の一手を決めるため」のツールと位置づけ、運用担当者間で共有・比較しやすいフォーマットに整えておくと、継続的な改善がスムーズになります。
The Way Forward
サブマーケット機能を活用することで、これまで一括でしか管理できなかった販売戦略を、地域や市場ごとに丁寧に分けて運用できるようになります。
すべてを一度に完璧に設定しようとする必要はありません。まずは主要なターゲット市場から分けてみて、言語や通貨、配送条件など、影響の大きい項目から少しずつ調整していくと、運用負担を抑えながら改善を進めやすくなります。
自社の商品や体制に合わせて、どの市場をどのように分けると管理しやすくなるかを検討し、テストと見直しを繰り返すことで、よりお客様にとって利用しやすいストア設計につながります。サブマーケットを「細かなターゲティングを実現するための土台」として捉え、自社の成長に合わせて段階的に活用範囲を広げていくことをおすすめします。












