Shopifyでストアを運営していると、ふと立ち止まって考える瞬間があります。売上は出ているのに「この伸びは一時的なのか」、広告を回しているのに「本当に伸ばすべき商品はこれで合っているのか」。商品数が増えるほど、感覚だけでは判断が難しくなり、チャンスもロスも静かに積み重なっていきます。
売れ筋商品は、派手に“当たり”として現れるとは限りません。数字の裏側に潜むリピートの兆し、特定の流入経路でだけ強い反応、カートに入るのに買われない理由――それらはデータの中に散らばった小さなサインとして現れます。大切なのは、感覚を捨てることではなく、感覚を裏づける「見つけ方」を持つことです。
この記事では、Shopifyの管理画面で確認できる指標やレポート、分析の切り口を使いながら、売れ筋商品を見極めるための具体的な考え方と手順を整理します。いま伸びている商品だけでなく、「伸びる前兆がある商品」まで見つけ、次の打ち手(在庫・広告・価格・導線)につなげるための視点を、一緒に探っていきましょう。
Shopify分析で見える売れ筋の兆し 売上ではなく需要の熱量を読?
売上は「結果」であって、兆しはもっと手前に落ちています。Shopifyの分析画面で注目したいのは、購入完了より前の行動に宿る
需要の熱量
です。たとえば、特定商品の閲覧が増えているのに在庫が動かない場合、価格・配送条件・信頼要素(レビューや返品ポリシー)のどこかで熱が逃げている可能性があります。逆に、まだ売上が小さくても
“温度が上がっている商品”
は、数字の奥で確かに息をしています。
最初に拾いたいのは、「見られ方」の質です。単にPVが多いより、
商品ページへの流入元
や
ページ滞在の深さ
、そして回遊の仕方が需要の輪郭を描きます。具体的には次のようなサインが揃うと、売れ筋の芽が育ち始めています。
-
商品ページの閲覧数
が増え、同時に
検索(サイト内検索)
からの流入が伸びている
-
コレクション→商品
への遷移率が上がり、関連商品も一緒に見られている
-
再訪問
が増え、同じ商品に複数回戻ってきている
-
スマホ比率が高いのに、画像拡大や説明の開閉など
操作が多い
次は「一歩手前」の行動です。Shopifyでは、
カート追加
や
チェックアウト到達
といった購入前段の動きが、売上よりも早く需要の上昇を教えてくれます。ここで大切なのは、単発の数字ではなく
流れ
として見立てること。カート追加が増えているのにチェックアウトが伸びないなら、バリエーション選択の迷い、送料の見え方、決済手段の不足など、熱が冷める地点を特定できます。熱量は「行動の連鎖」として観測すると、改善ポイントが浮かびます。
|
指標(Shopify分析で確認) |
熱量が高い状態 |
伸び悩み時の示唆 |
|---|---|---|
|
商品ページ閲覧 → カート追加率 |
上昇 (迷いが減っている) |
訴求不足 / 価格納得 / 写真・説明の弱さ |
|
カート追加 → チェックアウト到達率 |
上昇 (購入の意志が強い) |
送料・納期の不安 / クーポン待ち / 決済不安 |
|
チェックアウト到達 → 購入率 |
安定 (障壁が少ない) |
入力の手間 / エラー / 追加費用の表示タイミング |
|
リピート訪問(参照元含む) |
増加 (比較検討の本命) |
競合比較で負ける要因(保証・レビュー・差別化) |
さらに精度を上げるなら、「どの言葉で熱が上がっているか」を見ます。Shopifyの参照元やUTM、サイト内検索のクエリから、需要が
“商品名”
ではなく
“悩み”
や
“用途”
で動いている瞬間が見つかります。たとえば「軽い」「時短」「ギフト」「汗対策」など、購入者の頭の中のタグが見えたら、そのまま商品ページの見出しや画像テキストに反映できます。売れ筋は、商品そのものより先に
言葉の熱
として現れます。
最後に、「売れていないのに熱い商品」を埋もれさせないための見立ても重要です。次の条件が複数当てはまるなら、売上が追いつく前に
配置と表現
を整える価値があります。
-
閲覧数
は伸びているが、
購入率
が平均より低い
-
カート追加
はあるのに、
離脱
がチェックアウト前で増えている
-
広告流入は少ないのに、
指名や検索
で来ている
-
関連商品の同時閲覧が多く、
比較検討の中心
になっている
こうした商品は「売れない」ではなく、「
まだ伝わりきっていない
」可能性が高い存在です。熱量が見えるうちに、ファーストビューの訴求、価格の根拠、配送・返品の安心材料を足していくと、売上は後から追いついてきます。
商品別パフォーマンスの深掘り 粗利率と回転率と在庫日数を同時に最適化する
売れ筋を「売上順位」だけで判断すると、利益を削る商品や在庫を寝かせる商品まで主役に見えてしまいます。ここでは
粗利率
(1個売っていくら残るか)、
回転率
(在庫がどれだけ早く売れて入れ替わるか)、
在庫日数
(今の在庫が何日もつか)を同じ画面で見て、商品ごとの“稼ぎ方のクセ”を炙り出します。たとえば粗利率が高くても回転が遅い商品は資金を止めがちで、逆に回転が速くても粗利が薄い商品は広告費に飲まれがちです。
Shopifyの注文データと原価情報(原価は商品メタフィールドやスプレッドシート連携でも可)を揃えたら、商品別に次の3指標を並べて評価します。ポイントは「優劣」ではなく「役割」を決めること。
集客商品
と
利益商品
と
安定回転商品
を混ぜてこそ、全体の利益とキャッシュフローが安定します。
-
粗利率
: (販売価格 − 原価) ÷ 販売価格
-
回転率
: 期間販売数 ÷ 平均在庫数(ざっくりでもOK)
-
在庫日数
: 現在庫数 ÷ 1日あたり販売数(過去30日平均など)
|
商品タイプ |
粗利率 |
回転率 |
在庫日数 |
判断 |
|---|---|---|---|---|
|
アクセサリーA |
62% |
1.2 |
75日 |
利益は強いが在庫が重い |
|
TシャツB |
28% |
4.8 |
12日 |
回転は強いが粗利が薄い |
|
ケア用品C |
45% |
3.1 |
18日 |
バランス型の主力候補 |
表のように並べると、次にやるべき調整が自然に見えます。粗利率が高いのに在庫日数が長い商品は、値引きで“売り切る”より先に
露出の筋道
を作るのが得策です。具体的には「購入後メールでの同梱提案」「カート内アップセル」「商品ページでの比較表」など、広告に頼らない導線を増やして回転を上げます。逆に回転が速いのに粗利が薄い商品は、まず
セット化
や
まとめ買い
で客単価を引き上げ、広告費率を下げて粗利を守ります。
最後に、在庫日数は“正義”ではなく“戦略の温度”です。新作や季節商品は在庫日数を短く、定番は適度に長く持つのが合理的なこともあります。目安として、次のようにルール化すると判断がブレません。
-
利益商品(粗利率が高い)
:在庫日数を短縮するより、露出と提案で回転を上げる
-
回転商品(回転率が高い)
:値上げではなく、セット・送料設計・原価改善で粗利率を底上げ
-
寝ている在庫(在庫日数が長い)
:次回仕入れ停止+バンドル/特典で自然に消化
-
バランス主力
:欠品が最大の損失。安全在庫を厚めにして機会損失を減らす
この三つ巴で商品を見直すと、「売れているのに儲からない」「儲かるのに動かない」「在庫があるのに売れない」を同時にほどけます。売上だけのランキングでは見えない、
利益の速度
と
資金の滞留
が可視化され、次の一手(値付け・導線・仕入れ・広告配分)が商品ごとに切り替えられるようになります。
顧客行動から当たり商品を特定 検索語と閲覧パスと離脱ポイントの実践分析
売れ筋は「売れた結果」ではなく、「売れる兆候」が集まった地点に先に現れます。Shopifyの
行動データ
を読み解くと、その兆候はだいたい
検索語
・
閲覧パス
・
離脱ポイント
の3点に凝縮されます。広告やSNSで伸ばす前に、サイト内で起きている“迷い”と“確信”を見分けることで、当たり商品候補が絞り込めます。
まずは検索語。サイト内検索やShopifyの検索データ(テーマやアプリの検索ログ)を見たとき、注目すべきは「購入に近い言葉」と「比較が長引く言葉」の混在です。前者が増えている商品は、既に需要が温まっています。後者が多い場合は、商品は魅力的でも決め手が不足している可能性があります。
-
購入に近い検索語
:サイズ・色・型番・用途(例:防水、ギフト、即日発送)
-
比較が長引く検索語
:おすすめ・違い・どっち・口コミ・失敗
-
“当たりの芽”
:検索語に「目的」と「条件」が同時に含まれている(例:冬 乾燥 肌 低刺激)
|
検索語のタイプ |
見える顧客心理 |
当たり商品候補の判定 |
|---|---|---|
|
条件指定(例:黒 M 防水) |
買う準備ができている |
強い (在庫・導線最優先) |
|
用途(例:出張 2泊 バッグ) |
目的が明確、選択肢に迷い |
中〜強 (比較表が効く) |
|
不安解消(例:洗える? 匂い) |
最後の一押しが足りない |
中 (FAQと写真追加で化ける) |
|
漠然(例:人気 おすすめ) |
入口探索、意思が固まっていない |
弱 (導線で育てる領域) |
次に閲覧パス。セッションリプレイがなくても、
「どのページを経由して商品に辿り着いたか」
を追うだけで、当たり商品の居場所が見えます。たとえば、ブログ→カテゴリ→商品→レビュー→カートという流れが多い商品は、
納得が積み上がって購入される
タイプ。一方、トップ→商品→カートが多い商品は、直感買いされやすく、写真とファーストビューの強さが武器です。
-
短いパス
:求心力がある(画像・価格・訴求が刺さっている)
-
長いパス
:比較されている(情報設計次第でCVが伸びる)
-
繰り返し回遊
:決断できない(決め手不足 or 選択肢過多)
最後に離脱ポイント。ここが最も“当たりの原石”を見つけやすい場所です。離脱が多い=不人気ではなく、
「欲しいが、決められない」
の可能性があります。商品ページで離脱が増えるなら、上部で疑問が解消できていない。カートで離脱が増えるなら、送料・納期・クーポンの表示が遅い。チェックアウトで離脱が増えるなら、入力負荷や決済手段の不足が疑われます。特に、検索語が具体的なのに離脱が高い商品は、テコ入れで一気に主力へ跳ねる“当たり候補”になりやすいです。
-
商品ページ離脱
:写真の不足/サイズ感不明/ベネフィットが弱い
-
カート離脱
:送料・到着日・同梱条件が見えない/クーポン導線が不親切
-
チェックアウト離脱
:入力項目過多/決済不足/信頼要素(返品・保証)の提示不足
-
当たり商品のサイン
:閲覧は多い+再訪がある+検索語が具体的なのに離脱が高い
リピートとLTVで本当の売れ筋を選別 初回購入の勢いに惑わされない判断軸
Shopifyの売上ランキングは、どうしても「初回購入の勢い」が映えます。広告やSNSで一時的に跳ねた商品ほど数字が大きく見え、仕入れや追加生産の判断を急がせます。しかし、
本当の売れ筋
は「一度売れた」よりも「何度も選ばれた」で輪郭がはっきりします。そこで軸になるのが、
リピート率
と
LTV(顧客生涯価値)
です。
リピートの強さは、単なる満足度だけでなく「購入理由が生活に組み込まれているか」を映します。例えば、消耗品や定期的に使うアイテムはもちろん、嗜好品でも“買う習慣”を作れた商品は強い。判断の目線を揃えるために、まずは次の指標を並べて見ます。
-
リピート購入率
:初回購入者のうち、2回目以降を買った割合
-
2回目購入までの日数
:早いほど「習慣化」しやすい
-
購入回数別の人数分布
:1回で終わる層が厚いのか、3回以上が育っているのか
-
返品・交換率
:売れているのに信頼が積み上がっていないサイン
売上だけで見ると同じ「人気商品」に見えても、LTVで並べると序列が逆転することがあります。
単価の高い“派手な新商品”
より、
単価は中くらいでも継続される定番
のほうが、長期利益を押し上げるケースは珍しくありません。特に、購入後の接点(同梱物・使い方ページ・メール)で体験が改善される商品は、時間とともにLTVが伸びやすいのが特徴です。
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商品タイプ |
初回販売の勢い |
リピート傾向 |
LTVの伸び方 |
|---|---|---|---|
|
トレンド型(限定カラー等) |
強い |
低〜中 |
横ばいになりやすい |
|
定番型(ベーシック) |
中 |
中〜高 |
じわじわ伸びる |
|
補充型(消耗・メンテ用品) |
中 |
高 |
安定して積み上がる |
「初回は売れたのに、その後が続かない」商品は、魅力がないのではなく、
リピートの理由が設計されていない
ことが多いです。たとえば、用途が広すぎて“次に選ぶ動機”が弱い、使用目安が伝わっていない、関連商品への導線がない——こうした“静かな摩擦”が購買習慣を止めます。売れ筋選別のときは、売上ランキングに加えて、
リピートとLTVで上位に残る商品だけを「次の投資先」にする
。このルールがあると、短期の波に振り回されず、在庫も広告も強くなります。
PV増よりCVR改善 価格改定と商品ページ設計とバンドル提案の具体策
アクセスが伸びても購入率が伸びないとき、売れ筋の「種」はすでに見えていることが多いです。Shopifyの分析で
PVの多い商品
と
カート投入率・購入率
を並べた瞬間、伸びしろの場所が特定できます。PVが多いのに売れない商品は「入口として強い」ので、改善が刺さると一気に回ります。逆にPVが少なくてもCVRが高い商品は、
見つけてもらう導線
を整えるだけで伸びます。
価格は「安くする」よりも
納得の梯子
を作るほうが効きます。値上げを含む価格改定は、商品価値の見せ方とセットで行うのが前提です。たとえば、同じ商品でも
比較軸
を提示するだけで選ばれやすさが変わります。
|
価格の置き方 |
見せ方の工夫 |
狙い |
|---|---|---|
|
松竹梅(3プラン) |
おすすめに「竹」を強調 |
中価格への誘導 |
|
端数価格(例:4,980円) |
送料・保証を合わせて明記 |
総額不安の解消 |
|
プレミアム版の追加 |
違いを3点に絞る |
高単価でも迷わせない |
商品ページ設計は「読み物」ではなく
判断の道筋
です。ファーストビューで迷いが生まれると、PVが増えるほど取りこぼしも増えます。配置は複雑にせず、必要な材料を上から順に渡していく構成が強いです。
-
1画面目:
誰のどんな悩みを解決するか+ベネフィットを1文で
-
2画面目:
選ばれる理由(差別化)を3つだけ箇条書き
-
3画面目:
レビューは「悩み→解決」の文脈があるものを優先表示
-
4画面目:
サイズ・素材・使い方は図解で、返品条件は短く明確に
バンドル提案は「ついで買い」ではなく、購入の不安を減らす
完成形の提案
です。売れ筋商品の周辺には、相性の良い同時購入が必ず存在します。Shopifyの購入データやカート分析で「一緒に買われやすい組み合わせ」を拾い、
用途別セット
として商品ページ内で提案するとCVRが上がりやすいです。
-
スターターセット:
初回の失敗を減らす基本構成(迷いを減らす)
-
メンテナンスセット:
長く使うための周辺品(後悔を減らす)
-
ギフトセット:
包装・メッセージ・手提げを同梱(手間を減らす)
具体策としては、商品ページ内に
バンドル専用のCTA
を置き、「単品で買う理由」より先に「セットで買うメリット」を提示します。さらに価格改定のタイミングでは、単品の値付けを上げるのではなく、
セットの実質割引
で体感価値を作ると摩擦が少ないです。最後に、売れ筋のページほど「改善の速度」が成果を決めるため、A/Bテストが難しい場合でも、
ファーストビューの1文・レビュー並び替え・セット提案の位置
だけは定期的に更新し、PV増をそのままCVR改善に変えていきます。
重要なポイント
売れ筋商品を見極めることは、偶然のヒットを待つのではなく、「売れる理由」を自分の手でつくっていく作業です。Shopifyには、そのためのヒントが日々の数字やお客様の動きとして積み重なっています。どの商品が伸びているのか、なぜ支持されているのか——それらを丁寧に読み解けば、次の一手はもっとクリアになります。
今日見つけた気づきは、明日の仕入れや改善、そして新しい企画の種になるはずです。まずは小さく検証し、反応を確かめながら磨いていく。その積み重ねが、ストアの「勝ち筋」を静かに太くしていきます。
数字の向こうにいるお客様の気持ちを想像しながら、次の売れ筋を探しにいきましょう。あなたのショップにしかない強みが、次のベストセラーを呼び寄せます。

