ネットショップを運営していると、ふと不安になる瞬間があります。
「このままの品揃えで、本当に売上は伸びていくのだろうか?」
「もっと商品数を増やしたほうがいいのか、それとも今はまだ早いのか?」
Shopifyは、少ない商品数からでも始めやすい一方で、成長を目指す段階では「商品数を増やす」という選択肢が必ず視界に入ってきます。しかし、やみくもに商品を追加しても、在庫やオペレーションが複雑になり、かえって売上や顧客体験を損ねてしまうこともあります。
では、どのようなサインが現れたときに、商品数を増やすべきなのでしょうか。
アクセス数、リピート率、検索ニーズ、在庫回転率、顧客からの問い合わせ内容──それらはすべて、「そろそろラインナップを拡張してもいいタイミングかもしれない」という静かなメッセージでもあります。
本記事では、Shopifyストアの成長段階ごとに、「商品数を増やすべきタイミング」とその見極め方を整理し、やみくもな”商品追加”ではなく、戦略的な”ラインナップ拡張”につなげるための視点を紹介します。
売上データから見極める 商品数を増やす最適なタイミングのサイン
なんとなく「そろそろ新商品かな」と感覚で判断していると、在庫だけが増えてキャッシュが寝てしまいます。まず見るべきは、Shopifyの売上推移と商品別の貢献度です。全体の売上が伸びているのに、特定の数点だけが売上の大部分を占めているなら、ラインナップを拡張する余地があるサインかもしれません。逆に、現状の商品群がどれだけ「稼げているか」を数字で可視化できていない状態で商品数だけ増やすのは危険です。
判断材料として役立つのが、以下のような指標です。
- 売上構成比:上位数商品で全体売上の何%を占めているか
- リピート率:同じ商品ばかりリピートされていないか
- 客単価の推移:長期的に見て横ばいor微減していないか
- PVと購入数のギャップ:よく閲覧されるが購入されていないカテゴリがないか
これらを定点観測することで、「今ある商品の売り切り」だけでなく、「どのタイミングで選択肢を増やすべきか」のヒントが見えてきます。
| 指標 | 状態 | 読み取れるサイン |
|---|---|---|
| 売上構成比 | 上位3商品で80%以上 | ヒット軸に近い商品を追加しやすい |
| 客単価 | アクセス増でも横ばい | 関連商品を増やす余地あり |
| 閲覧数 | 特定カテゴリに集中 | そのカテゴリ内のバリエーション拡張候補 |
特に注目したいのは、アクセス増に売上が追いついていない状態です。広告やSNSで集客はできているのに、カート投入率・購入率が伸びない場合、「欲しいものがない」「選択肢が足りない」というユーザーの無言のメッセージかもしれません。同じテイスト・価格帯で色やサイズ、セット商品などを増やすと、すでに興味を持っている見込み客の受け皿を広げられます。
一方で、売上が落ちているからといって、やみくもに商品数を増やすのは逆効果になりがちです。数字上のサインとしては、以下のような組み合わせが「増やす前に現行商品の改善が先」という判断材料になります。
- アクセスも少なく、かつ購買率も低い
- 在庫回転率が悪く、滞留在庫が増えている
- レビュー数が極端に少ない、または評価が低い
この状態で商品数を増やしても、問題の原因が「商品数の少なさ」ではなく「商品の魅力不足」や「訴求の弱さ」にあるため、数字は改善しづらいのです。
在庫回転率と利益率のバランスで判断する SKU拡張の基準
商品数を増やす前に確認したいのが、既存商品の在庫回転率と利益率の関係です。極端に在庫回転が遅いのに、利益率だけを理由にSKUを増やすと、キャッシュフローが詰まりやすくなります。一方で、回転率が高いのに利益率が薄い商品ばかりだと、売上は伸びても手元に残るお金が増えません。つまり、「売れているか」「儲かっているか」のバランスを見ながら、商品ラインナップを厚くするかどうかを判断することが重要です。
たとえば、以下のようなシンプルな指標をダッシュボード化しておくと、Shopifyの管理画面でも視覚的に判断しやすくなります。
| タイプ | 在庫回転 | 粗利率 | SKU拡張の方針 |
|---|---|---|---|
| スター商品 | 高い | 高い | バリエーション追加を優先 |
| 集客商品 | 高い | 低〜中 | 関連商品のクロスセルを検討 |
| ニッチ高利益 | 低〜中 | 高い | 在庫を絞りつつ限定販売で維持 |
| 滞留在庫 | 低い | 低い | SKU削減・入替え候補 |
実務的には、次のようなラインを「拡張の目安」としてルール化しておくと、感覚に頼らずに意思決定がしやすくなります。
- 在庫回転率が一定以上(例:年6回転以上)のカテゴリには、新規SKUの追加を優先する
- 粗利率が基準値以上(例:40%以上)の商品グループから、色・サイズ・セット品などの派生SKUを検討する
- 回転率が低くてもLTVが高い顧客が好む商品は、あえて残してSKU拡張の「核」にする
- 逆に低回転かつ低利益の商品は、拡張ではなく廃盤・在庫処分を優先する
ここで重要なのは、「売れているからSKUを増やす」のではなく、「在庫と利益のバランスが良いゾーンを厚くする」という発想に切り替えることです。同じカテゴリーでも、回転と利益のバランスが崩れている商品にバリエーションを増やしても、倉庫スペースとオペレーションコストが膨らむだけで終わる可能性があります。Shopify上でコレクション別・商品タイプ別にレポートを確認し、どのゾーンが最も健康的かを見極めましょう。
さらに、SKU拡張を検討する際は、数字だけでなくオペレーション面の負荷もセットで考えるべきです。たとえば、次のような観点です。
- ピッキング・梱包の複雑さが増えすぎないか
- 商品説明・画像撮影・登録作業にかかる時間に対して、見込める利益が十分か
- アプリやテーマでバリエーション表示が煩雑にならないか(スマホ画面での選びやすさ)
在庫回転率と利益率の両方を満たし、かつ運営負荷も許容範囲に収まるラインが見えたとき、はじめてSKUを増やす「タイミングが来た」と言えます。その基準を一度言語化しておけば、チームで判断を共有でき、感覚的な商品追加から、戦略的なSKU設計へとシフトしていけます。
指名検索とリピート率から読む お客様が求めている商品バリエーション
サイト内検索でブランド名や商品名が頻繁に入力されているなら、それは「この店で”あの商品”を買いたい」という強い意思表示です。アクセス解析で検索ワードを確認し、指名キーワードがどれだけ占めているかを見てみましょう。同じ名称や型番が繰り返し検索されている場合、それはバリエーション不足のサインであり、「色違い」「容量違い」「セット商品」などを求めている可能性があります。
さらに、リピート率との掛け合わせでニーズはより鮮明になります。リピート顧客の購入履歴を追うと、「同じ商品を何度もリピートする人」と「近いカテゴリの商品を渡り歩く人」に分かれます。後者が多い場合、ユーザーは同一カテゴリ内での”選択の幅”を求めていることが多く、同系統の商品数やバリエーションを拡張することで、顧客単価と満足度の両方を押し上げる余地があります。
- ブランド名・型番指定での検索が増えている
- 検索結果から同じ商品ページへの流入が集中している
- 同じカテゴリの商品を短期間にリピート購入する顧客が多い
- レビューや問い合わせで「他の色・サイズ・香り」への言及がある
これらのシグナルが揃ってきたら、次に検討すべきは「どこまで増やすか」です。闇雲にSKUを増やすのではなく、指名検索の多い商品を軸にバリエーションを広げるのが効果的です。たとえば、トップ3商品のみ先行して色・サイズ展開を増やしたり、リピーター向けに大容量版や定期購入専用パッケージを用意するなど、「すでに選ばれている商品」に集中的に投資すると、在庫リスクを抑えつつ売上の最大化が狙えます。
| 指標 | 状態 | おすすめ施策 |
|---|---|---|
| 指名検索数 | 右肩上がり | ヒーロー商品のバリエーション拡張 |
| リピート率 | 安定〜微増 | セット商品・定期購入プランの追加 |
| レビュー内容 | 「他の色も欲しい」などの声 | 色・サイズ・フレーバーの追加テスト |
最後に、増やしたバリエーションが本当に求められているかは、Shopifyのコレクションページの回遊や、絞り込み機能の利用状況からも読み取れます。「フィルターで条件を細かく絞るのに、候補が少ない」といった”物足りなさ”は、データ上では直帰や離脱として現れます。指名検索とリピート率を出発点に、ユーザーが迷わず・選べるラインナップを丁寧に増やしていくことが、ムダなSKU拡大を防ぎつつ、求められている商品バリエーションにピンポイントで応える近道になります。
広告と集客チャネル別に考える ラインナップ拡充の優先順位
商品ラインナップを増やすかどうかは、「なんとなく」ではなく、運用している広告や集客チャネルごとに役割を分けて考える必要があります。同じ1商品追加でも、リスティング広告ではCVR向上、Instagramでは世界観強化のように、チャネルによって価値の出方がまったく異なります。つまり、「どのチャネルで、どの指標を伸ばしたいのか」を明確にしておくことが、ラインナップ拡充の優先順位を決める軸になります。
たとえばリスティング広告やGoogleショッピング広告では、「検索キーワードの網羅性」が重要になります。ユーザーの検索意図に近い商品ページが存在するほど、クリックの無駄打ちを減らし、CPAを安定させやすくなります。ここでは、まず既存で売れている商品に近いバリエーションや、よく検索されている関連キーワードを狙った商品から追加していくのがセオリーです。
| チャネル | 重視する指標 | 拡充すべき商品タイプ |
|---|---|---|
| 検索広告 / ショッピング広告 | CVR・CPA | ニーズ特化・キーワード起点の商品 |
| Instagram / TikTok | 保存・シェア・エンゲージ | ビジュアル映え・ストーリー性のある商品 |
| メルマガ / LINE | 再購入率・LTV | セット商品・限定品・季節商品 |
一方、instagramやTikTokなどのSNSを中心に集客している場合は、「目を引く投稿ネタ」が不足したタイミングが追加のサインになります。フィードやリールで映えるプロダクトが不足していると、投稿のバリエーションが乏しくなり、フォロー・保存が伸びにくくなります。ここでは機能性よりも、色・形・世界観などのビジュアル要素を優先したラインナップ拡充が有効です。
さらに、メルマガやLINE配信のようなリテンションチャネルでは、「紹介するネタが尽きてきた」「キャンペーンの切り口がマンネリ化してきた」と感じたときが、商品数を増やす絶好のタイミングです。ユーザーとの関係性を深めるために、以下のような商品を優先して追加すると、LTVを底上げする起点を作りやすくなります。
- 既存人気商品のセット化・バンドル商品(まとめ買いの単価アップ)
- 季節・イベント連動の限定商品(配信の口実づくり)
- 定期購買に転換しやすい消耗品カテゴリー(サブスク化の布石)
失敗しない商品追加の進め方 小ロット検証と段階的な拡大戦略
思いついた商品をいきなり大量発注してしまうのは、Shopify運営で最も避けたいリスクのひとつです。まずは「小ロット」でテストし、売れ筋・死に筋を早期に見極めましょう。テスト段階では、在庫数をあえて絞ることで、売れ行きやアクセス数、カート投入率などの指標を集中的に観察しやすくなります。こうしたデータは、感覚ではなく数字に基づいて商品構成を組み立てるための、いわば”安全装置”です。
小ロット検証を行う際には、単に「売れたかどうか」だけではなく、次のような観点もチェックします。
- アクセス数に対する購入率(ページは見られているのに売れていないのか、そもそも見られていないのか)
- 商品ページの離脱率(どの段階でユーザーが離れているのか)
- レビューや問い合わせ内容(サイズ感・色味・使い方など、改善ヒントの宝庫)
- セット購入の傾向(どの商品と一緒に買われているか)
これらを総合的に見て、「改善すべきなのか」「SKUを残すべきなのか」「撤退すべきなのか」を冷静に判断します。
| フェーズ | 在庫数の目安 | 主な目的 |
|---|---|---|
| テスト導入 | 5〜30個 | 需要の有無を確認 |
| 検証強化 | 30〜100個 | 価格・ページ改善の効果測定 |
| 拡大前夜 | 100〜300個 | 安定したリピートと粗利の確認 |
検証の結果、一定の手応えが見えた商品は、次に「段階的な拡大」に移ります。このとき重要なのが、在庫だけを増やすのではなく、販路と導線も同時に広げることです。たとえば、最初は既存顧客向けのメルマガだけで案内していた商品を、次のステップではトップページの特集バナーに掲載し、さらに広告やインフルエンサーとのタイアップへと広げていく、といった具合に露出の幅を計画的に増やしていきます。
また、拡大戦略では「闇雲なSKU追加」ではなく、関連性の高いラインナップ構築を意識すると、無駄な在庫を増やさずに世界観を強化できます。
- 人気カラーを基準にした「色違い展開」
- よく一緒に買われている商品の「セット化」
- トップセラーを軸にした「サイズ・容量違い」
- 季節・イベントに合わせた「期間限定バリエーション」
こうしてコア商品を中心に周辺商品を少しずつ足していくことで、ストア全体の売上と客単価をバランスよく高めることができます。
今後の進め方
商品数を増やすべきタイミングに「絶対の正解」はありません。
しかし、データとお客様の声、そして自社の運営リソースを冷静に見つめ直すことで、「いま増やすべきか」「もう少し磨き込むべきか」は、驚くほどクリアになります。
・アクセスはあるのに売れ筋が偏っている
・カゴ落ちや離脱の理由が「欲しい商品がないこと」に近い
・在庫・オペレーション体制を拡張しても回せる自信がある
こうしたサインが揃ってきたときこそ、商品数を増やすチャンスです。
単に「数を増やす」のではなく、「お客様の選択肢を丁寧に広げていく」という視点でラインナップを設計していけば、ショップ全体のストーリーもより豊かになっていきます。
あなたのShopifyストアにとって、”次の一品”は何か。
それを見極めるプロセスこそが、長く愛されるブランドづくりへの近道になるはずです。

