Shopifyでネットショップを始めたものの、
「売上は上がっているのに、なぜかお金が残らない」
そんな違和感を抱いたことはないでしょうか。
広告費、手数料、仕入れ、送料、外注費──
ダッシュボード上の「売上」と、現実の「利益」のあいだには、
いくつもの見えにくい溝が存在します。
本記事では、
Shopify運営で利益が残らなくなる典型的な原因を分解しながら、
「どこをどう見直せば、ビジネスとしてきちんと利益が残るのか」
という改善の視点を整理していきます。
単にコストを削るだけでもなく、
闇雲に売上だけを追いかけるのでもない。
数字の構造を理解し、ショップ運営を”儲かる設計”へと
組み替えていくためのヒントを、一つずつ紐解いていきましょう。
売上はあるのにお金が残らない Shopify特有の「利益消失ポイント」を見抜く
月商は伸びているのに、なぜか口座残高が増えない。その裏には、Shopify特有の「見えないコスト」がいくつも潜んでいます。とくに注意したいのは、アプリ・広告・決済手数料・物流・為替の5つのポイント。売上管理画面だけを眺めていても、これらがジワジワと利益を侵食していることに気づきにくく、「売れているのに苦しい」状態に陥りがちです。
まずインパクトが大きいのは、気づけば増殖しているアプリ課金です。便利そうだからと試しに入れたアプリが、そのまま放置されて毎月課金され続けるケースは珍しくありません。さらに、
- 売上連動で手数料が加算されるアプリ
- 無料トライアル後に自動で有料プランへ移行するアプリ
- 複数アプリで同じ機能を二重に課金しているケース
などが絡み合うと、「売上が上がるほどアプリコストも増える」という悪循環を生みます。月次で「使っているか/なくても運営できるか」を棚卸しし、利益を食いつぶすアプリを意識的に削る必要があります。
| 項目 | よくある落とし穴 | 見直しの観点 |
|---|---|---|
| アプリ | 機能かぶりで二重課金 | 同機能を1つに集約 |
| 広告 | 粗利を超える入札単価 | 1注文あたりの許容CPAを設定 |
| 決済 | 複数ゲートウェイの高率手数料 | 主要決済の手数料を比較 |
次に見逃せないのが広告と決済手数料です。Shopifyは集客を自前で行うモデルのため、「売上成長 = 広告費と手数料の増加」になりやすい構造です。とくに、
- 平均客単価に対して高すぎる広告CPA
- 粗利率を無視した割引クーポンの乱発
- 外部決済サービスの高い手数料率
などが重なると、表面上の売上は伸びていても、実際の利益はマイナスに近づきます。1注文あたりの「粗利 − 広告費 − 手数料」を必ず算出し、「売るほど減る商品」を生まないようなラインを決めておくことが不可欠です。
さらに、物流コストと在庫の持ち方も利益を奪う重要ポイントです。Shopifyは越境販売や複数倉庫との連携がしやすい一方、
- フルフィルメント手数料や保管料の見落とし
- 送料無料ラインの設定ミスによる赤字配送
- 在庫過多によるキャッシュフローの圧迫
といった罠にはまりやすくなります。海外販売をしている場合は、ここに為替レート変動も加わり、入金ベースで見たときに想定より利益が削られているケースも。Shopifyの管理画面だけで安心せず、会計・銀行・広告管理画面を横断して「どこで利益が消えているか」を可視化することで、初めて本当の黒字化への道筋が見えてきます。
広告費と手数料で赤字転落 隠れコストを可視化するためのチェックリスト
売上は伸びているのに利益が増えない場合、まず疑うべきは「見えていないコスト」です。特に、日々自動で引き落とされる広告費と決済手数料は、感覚的に把握しづらく、気づいたときには赤字というケースも珍しくありません。そこで重要になるのが、毎月かならずチェックする「隠れコスト」の洗い出しです。感覚ではなく、データで把握する仕組みをつくることで、ムダな支出を切り分けられます。
まずは、販促まわりの支出から棚卸ししてみましょう。Shopifyの管理画面だけでなく、広告プラットフォームや外部アプリ側の請求も含めて、以下のような観点でチェックすると漏れが減ります。
- 1注文あたりの広告費(CPA)を週次で把握しているか
- LTV(顧客生涯価値)より高い獲得コストになっていないか
- 止めても売上に大きく影響しないキャンペーンが走り続けていないか
- 利用していない外部アプリの月額課金がそのままになっていないか
- クーポン・セールによる「実質値引き額」を広告費と一緒に見ているか
| チェック項目 | 頻度 | 基準の目安 |
|---|---|---|
| 広告費 ÷ 売上 | 週次 | 20〜30%以内 |
| 広告費 ÷ 新規注文数 | 週次 | LTV以下 |
| アプリ月額費合計 | 月次 | 売上の3%以内 |
次に、見落とされがちなのが決済まわりのコストです。同じ売上額でも、決済手段の構成によって、手元に残る金額は大きく変わります。各決済方法の手数料率と利用比率を一覧化し、「どの決済がどれだけ利益を削っているか」を可視化しましょう。また、返金処理やチャージバックに伴う追加手数料も、別枠で集計しておくと、運用上のムダが見つかりやすくなります。
| 決済方法 | 手数料率 | 利用比率 | 利益への影響 |
|---|---|---|---|
| クレジットカード | 3.25% | 60% | 標準的・モニタリング必須 |
| 後払い | 4.0%+固定費 | 25% | 高コスト・要見直し |
| 銀行振込 | 定額 | 15% | 低コスト・案内強化余地 |
最後に、これらの情報を「一度きりの分析」で終わらせない仕組みづくりが重要です。スプレッドシートやBIツールで、広告費・アプリ費・決済手数料・値引き額を毎月同じフォーマットで記録し、粗利との関係を可視化しましょう。月次で確認すべきポイントをチェックリストとしてテンプレート化し、担当者が変わっても同じ水準で管理できる状態を目指すことで、ようやく「売上は伸びているのに、なぜかお金が残らない」という不安定な運営から抜け出せます。
値決めが甘いといつまで経っても黒字にならない 原価と販売価格の設計を見直す視点
「とりあえず競合より少し安く」「お客さんが買いやすそうな値段で」――そんな感覚的な設定だけで価格を決めてしまうと、どれだけ売れても手元にお金が残りません。まず押さえたいのは、商品1つあたりに紐づくすべての原価要素を洗い出すことです。仕入れ・製造コストだけでなく、梱包資材、配送料の一部負担、決済手数料、外注費、さらには広告経由比率が高い場合はCPA(顧客獲得単価)まで含めて「売るために最低限かかるコスト」を見える化します。
そのうえで、「いくらで売れば、いくら残したいのか」を逆算する視点が必要です。感覚的に利益率を決めるのではなく、例えば「粗利率40%を確保したい」「1注文あたり最低2,000円は粗利を取りたい」といった利益目標から価格を設計します。次のようなシンプルな表を作り、現状の価格がどれだけシビアなのかを数字で確認してみると、改善ポイントが一気にクリアになります。
| 項目 | 現状 | 理想 |
|---|---|---|
| 仕入原価 | 2,000円 | 1,800円 |
| 販売価格 | 3,000円 | 3,600円 |
| 粗利額 | 1,000円 | 1,800円 |
| 粗利率 | 33% | 50% |
見直しの際は、「原価を下げる」か「販売価格を上げる」か、その両方を同時に検討します。とはいえ、安易な値上げはカート離脱を招き、雑な値下げは赤字を加速させます。そこで、shopifyの分析機能やアプリを活用して、利益率別に商品を分類し、どこから手を付けるべきかを明確にします。
- 利益率が高い主力商品は:セット販売や定期購入でLTVを最大化
- 利益率が低い集客商品は:価格は据え置きで関連商品のクロスセルを強化
- 赤字〜ほぼトントンの商品は:値上げ or 終売も選択肢に入れる
さらに、価格自体の「見せ方」も、黒字化には欠かせません。同じ利益を確保しながらも、ユーザーにとっての納得感をどう高めるかがポイントです。
- 送料無料ラインを設けて平均注文単価を引き上げる
- 単品よりセット価格の方がお得に見えるように設計する
- 定期購入は「初回割引」だけでなく2回目以降の価格と利益から逆算する
最終的には、「安いから売れる」状態から「利益が出る設計の中で売る」状態への転換が必要です。そのために、原価と販売価格を一度ゼロベースで棚卸しし、以下のような視点でシミュレーションを繰り返すと、値決めが勘ではなく再現性のある数字の戦略へと変わっていきます。
- 月間売上ではなく、月間粗利額を目標として設定する
- 「1注文あたりの利益 × 注文数」でシンプルに黒字ラインを把握する
- 広告費をかけたとき/かけないときの損益分岐点を計算しておく
売れるけれど回らない 在庫・物流・オペレーションが利益を食いつぶす構造
広告をかければ売上は伸びるのに、なぜかキャッシュは増えない――その裏側には、商品が「売れるスピード」と現場が「回せるスピード」のギャップがあります。倉庫がパンクし、梱包待ちの段ボールが山積みになり、ミスピックが増えるころには、返品対応と追加人件費が静かに利益を削っていきます。つまり、ECのボトルネックは売上不振ではなく、在庫・物流・オペレーションの”構造的な歪み”にあることが少なくありません。
とくにshopifyでは、アプリを足せば足すほど機能は増えますが、その場しのぎで導入した仕組みが、やがて複雑なオペレーションを生み出します。商品ごとに保管場所がバラバラ、引当ルールは担当者の頭の中、出荷優先順位もケースバイケース――こうした「属人化オペレーション」は、売上増加とともに破綻しやすい領域です。売れ行きが好調になるほど、現場がボロボロになる構図を抱えていないか、早い段階で可視化する必要があります。
- 在庫があるはずなのに欠品表示になり、販売機会を逃している
- セール後に返品・キャンセル対応が集中し、サポートが麻痺する
- 倉庫費・梱包資材・スポット人材が、気づけば固定費化している
- 「どの商品が利益を生んでいるか」が現場レベルで分からない
こうした状況を断ち切るには、まず「どこで利益が漏れているか」を、数字で把握することが欠かせません。下記のようなシンプルなテーブルを作り、SKU単位・チャネル単位での採算をざっくりでも把握しておくと、現場と経営の認識ズレを減らせます。
| 区分 | 売上は好調だが危険なサイン | 見直しポイント |
|---|---|---|
| 在庫 | 常に一部SKUが欠品 or 過剰 | 発注ロット・安全在庫の基準 |
| 物流 | 繁忙期だけ黒字が細る | 外注単価・梱包フロー |
| オペ | 新人が育たず属人化 | マニュアル化・自動化範囲 |
最終的に目指すべきは、「売上が増えても、現場負荷とコストが比例して増えない状態」です。そのためには、Shopify上での受注・在庫ステータスと、現場の動きをできるだけ一元化・標準化し、人の判断が必要な場面を最小化していくことが重要です。人手でカバーしていた”その場しのぎの対応”を、ルールと仕組みに置き換えていくことで、初めて「売れても回る」体制が整い、売上ではなく利益を基準にした成長戦略へとシフトしていけます。
リピートとLTVで利益体質に変える Shopify運営の中長期改善ロードマップ
単発の売上だけを追いかける運営から脱却し、「次の購入が前提になる設計」へ切り替えることが、中長期で利益を積み上げる第一歩です。広告で獲得した初回顧客を、そのまま「使い捨て」にしてしまうのか、それともブランドのファンとして育てていくのかで、数ヶ月後のPLはまったく別物になります。Shopifyは、購入履歴やタグ付け、セグメント機能を活用することで、顧客ごとの関係性を段階的に深める仕組みを組み込みやすいプラットフォームです。
まず整理したいのは、新規と既存で追うべき指標を分けることです。新規獲得ではCPAや初回の粗利を、既存顧客ではリピート率やLTVを確認しながら、投資と回収のバランスを調整していきます。乱暴に広告費を削る前に、どのチャネルで獲得した顧客が最も長く残り、最も高いLTVを生み出しているのかを見極めることが重要です。
| フェーズ | 主なKPI | 改善の焦点 |
|---|---|---|
| 新規獲得 | CPA / 初回粗利 | オファー設計・LP |
| 育成 | 開封率 / クリック率 | メール・LINE設計 |
| リピート | 購入間隔 / 継続率 | 同梱物・CRM施策 |
LTVを高めるロードマップでは、接触タイミングとコンテンツの粒度を時系列でデザインしていきます。単に「メルマガを増やす」のではなく、購入直後・使用開始3日後・残量が減る頃など、顧客の行動に合わせて自動化フローを組むことで、自然な形で次の購入動機をつくれます。
- 購入直後:ブランドストーリーと「選んで正解だった理由」の再提示
- 使用開始タイミング:使い方のコツ、よくある失敗とその回避方法
- リピート前夜:前回購入からの経過日数を基準にしたクーポンや提案
中長期で利益体質に変えていくには、「一人あたりの売上」よりも「一人あたりの関係性」に目を向ける必要があります。レビュー依頼やアンケート、コミュニティへの招待、限定コンテンツの配布など、「売る」以外の接点を増やすことで、広告に頼らない受注がじわじわと積み上がります。Shopifyのオートメーションやアプリを組み合わせて、この関係性を育てるプロセスをテンプレート化してしまえば、担当者が変わっても利益を生み続ける運営に近づいていきます。
振り返って
利益が思うように残らない背景には、必ず「理由」と「構造」があります。
そしてそれらは、多くの場合「なんとなく続けてしまっている運用」や「見えていない数字」に静かに潜んでいます。
この記事で触れてきたように、
・売上ではなく「粗利」から逆算して考えること
・広告やアプリ、物流などの固定・変動コストを、まずは”見える化”すること
・一時的な施策ではなく、LTVやリピートを前提にした設計へ視点をずらすこと
この三つを丁寧に見直していくだけでも、「売れているのにお金が残らないストア」から「売上と利益が噛み合うストア」へと、少しずつ輪郭が変わっていきます。
大切なのは、「正解のテンプレート」を探すことではなく、
自分のショップにとっての利益構造を、自分の手で分解し、組み立て直していく姿勢です。
数字は、ときに厳しく、ときに心強い相棒になります。
なぜ残らないのかを知ることは、「どうすれば残せるのか」を見つける、いちばんの近道です。
今日の気づきをきっかけに、
・まずは1つの費用項目を洗い出してみる
・1商品の粗利シミュレーションをしてみる
そんな”小さな一手”から、ショップの未来の利益を変えていきましょう。
