オンラインショップを運営していると、ある日ふと「そろそろセット販売を始めたほうがいいのでは?」という考えが頭をよぎる瞬間があります。客単価を上げたい、新商品をもっと知ってもらいたい、在庫をうまく回転させたい──そのきっかけは店舗ごとにさまざまです。
しかし、やみくもに商品を組み合わせても、思うような成果につながらないことも少なくありません。
特にShopifyでは、アプリや機能が豊富なぶん、「とりあえずセット販売を導入してみる」ことが簡単にできてしまいます。だからこそ重要になるのが、「いつ」「どのタイミングで」セット販売を検討すべきかを見極めることです。
この記事では、Shopifyストアの成長ステージやデータの兆候、顧客行動の変化といった視点から、「セット販売を考え始めるべきタイミング」を整理していきます。ただ機能を足すのではなく、戦略としてセット販売を位置づけるためのヒントを探っていきましょう。
セット販売を導入すべきショップのサインを見極める
単品販売だけでは伸び悩んでいるのに、特定の組み合わせばかりが一緒に購入されている–そんなデータが出てきたら、それは新しい売り方を試す合図かもしれません。Shopifyの注文履歴や分析レポートをのぞいてみると、「毎回セットのように売れているのに、商品ページはバラバラ」という状況が見えてくることがあります。この”実質セット”が複数パターンで現れているなら、わざわざカートで組み立てなくてもよい、わかりやすい形にまとめる価値があります。
また、平均注文単価(AOV)が一定ラインからなかなか上がらないときも、販売方法を切り替えるタイミングです。割引クーポンやセールで一時的に伸びても、平常時に戻るとすぐに落ち込むようであれば、商品の「組み合わせ方」そのものを変える必要があります。たとえば、関連アイテムを自然な形で紐づけるだけで、ユーザーは比較検討する手間を省けて、ストレスの少ない選択ができるようになります。
もしサポートへの問い合わせ内容が「どれを一緒に買えばいいのか」「初心者セットはないのか」といった質問で埋まり始めたら、それはお客様が”答え”としてのパッケージを求めているサインです。選択肢が多いカテゴリーほど、この傾向は強くなります。そんなとき、以下のようなニーズが目立ってきていないかをチェックしてみてください。
- 初めての人向けに、最低限必要なものをひとまとめにしたい
- リピート購入を、まとめ買いでスムーズに済ませたい
- プレゼント用に、組み合わせ済みのギフトを探している
| ショップの状態 | 見えやすいサイン | セット化の方向性 |
|---|---|---|
| リピート多め | 同じ商品を毎回2〜3点購入 | 定番まとめ買いセット |
| 初心者流入が増加 | 「何を買えばいいかわからない」相談 | スターターキット |
| ギフト利用が拡大 | ラッピング要望が急増 | ギフトボックスセット |
さらに、広告やSNS経由での流入が増えているのに、商品ページでの離脱率が高い場合も注意が必要です。ユーザーが「欲しい世界観には共感しているのに、どれを選べばその世界観を再現できるのか」がわからず、そこで離脱してしまっている可能性があります。そんなときは、ブランドが理想とする使い方やスタイルをそのまま形にしたストーリー性のあるセットを用意して、迷いを減らしながらカートインまでの道筋を短くしてあげることが、次の一手になっていきます。
客単価と在庫回転率から逆算する最適なセット構成の考え方
まず押さえておきたいのは、セット販売は「なんとなくお得そうだから」ではなく、目標とする客単価(AOV)と在庫回転率から逆算して組み立てるものだということです。たとえば、単品平均客単価が4,000円なのに、事業として目指したいのが6,000円なら、その2,000円のギャップを埋める役割をセットに担わせます。同時に、倉庫で眠りがちな商品をセット内にうまく組み込めば、在庫回転率も引き上げられます。この「客単価アップ」と「在庫圧縮」を同時に満たせるバランスを探る作業が、セット構成の設計そのものと言えます。
そのためには、まず手持ちの商品を役割ごとにラベリングしてみるとわかりやすくなります。
- 軸商品:お客様が「これが欲しい」と思って来店する中心商品
- 利幅商品:利益率が高く、できれば一緒に買ってほしい商品
- 消化商品:在庫が過多で、なるべく早く回転させたい商品
- おまけ商品:原価が低く、値ごろ感を演出するための小物
この4つの役割を、どの比率で組み合わせれば客単価と在庫回転率の両方が改善するかを、数値を置きながら検討していきます。
| タイプ | 例 | 在庫状況 | セット内の役割 |
|---|---|---|---|
| 軸商品 | 人気Tシャツ | 安定 | 価格の基準 |
| 利幅商品 | アクセサリー | やや余裕 | 利益の押し上げ |
| 消化商品 | 昨シーズン在庫 | 過多 | 回転率アップ |
| おまけ商品 | ステッカー | 十分 | お得感の演出 |
実務では、まず「狙う客単価」からセット価格帯を決めるのが近道です。たとえば、目標客単価6,000円・粗利率50%を目指す場合、軸商品4,000円+利幅商品1,500円+消化商品1,500円=通常7,000円を、「セット価格6,000円・実質1,000円お得」に設定すると、体感的なお得さが出ます。このとき原価構成を見て、粗利率が落ちすぎない範囲でどの消化商品を組み合わせればよいか、在庫リストとにらめっこしながら調整します。数字上「おいしい」組み合わせを探る感覚です。
在庫回転率の観点では、「売れている軸商品に、売れていない在庫をどれだけ”安全に”抱き合わせできるか」がポイントになります。
- セット売上高のうち何%を消化商品に割り当てるか
- 消化商品を入れすぎてセット全体の魅力を下げていないか
- セットが売れたときにどの商品から在庫が先に尽きるか
この3点を見ながら、「消化商品は1セットあたり最大1点まで」「人気カラーと不人気カラーをセット化してバランスをとる」など、自分なりのルールを作ると設計が安定してきます。
最後に、Shopifyではタグや商品タイプを使って、こうした役割ごとの商品を自動コレクションにまとめておくと、在庫状況が変わったときでもすぐに見直しができます。たとえば、在庫日数が一定以上のものに「slow-mover」というタグを付与しておき、そのタグが付いた商品を優先的にセットに組み込む、といった運用です。客単価を引き上げるための「理想の価格帯」と、在庫回転率を改善するための「優先的に動かしたい商品リスト」を常に並べて見られる状態にしておくことで、感覚ではなく、データから逆算したセット構成を継続的に磨き上げることができます。
新商品発売やシーズン切り替えを活かしたセット販売の始めどき
「新商品が出たからとりあえず告知」だけで終わらせず、販売の組み立てから逆算して考えると、セット販売は一気に設計しやすくなります。たとえば、単品では魅力が十分に伝わりきらない機能や世界観も、関連アイテムを束ねることで「使うシーン」ごとに表現できます。特にShopifyではバリエーション管理やタグ付けで柔軟に組み合わせが作れるため、商品登録の段階からセット前提の構成を想定しておくと、その後のプロモーションに無理がありません。
新商品リリース時は、既存商品の在庫や売れ筋との「掛け合わせ」がしやすいタイミングです。たとえば、定番アイテムと新作をスターターセットとして束ねることで、「まずはこれを買えば間違いない」という導線を作れます。逆に、新商品同士をあえて組み合わせて世界観重視の限定セットにすれば、リピーター向けのアップセルにもなります。どちらに振るかは、ストア全体で「誰に」「どの価格帯で」届けたいのかを軸に決めるとブレません。
- 新商品 × 定番:安心感と新鮮さを両立
- 新商品 × 新商品:ブランドの方向性を強く打ち出す
- 新商品 × 在庫過多品:在庫圧縮を狙う値ごろ感セット
シーズン切り替え時は、「買い替え」「まとめどり」のニーズが自然に高まるため、単品よりセットのほうが心理的ハードルが下がりやすい局面です。たとえばアパレルなら、旧シーズンのボトムスと新シーズンのトップスを組み合わせてトータルコーデセットにしたり、季節家電なら消耗品と一緒にメンテナンス完了セットとして打ち出すことで、季節変わりの”面倒くささ”を解消する提案ができます。
| タイミング | ねらい | おすすめセット例 |
|---|---|---|
| 新商品発売直前 | 期待感の醸成 | 予約限定バンドル |
| 発売〜2週間 | 初速最大化 | 定番+新商品スターター |
| シーズン立ち上がり | まとめ買い促進 | フルシーズンセット |
| シーズン末期 | 在庫圧縮 | 旧品ミックス福袋 |
Shopifyで実装するときは、コレクションやタグを使って「セット候補」をあらかじめグルーピングしておくと、季節ごとの入れ替えもスムーズです。たとえば、テーマ側で.seasonal-setなどのクラスを用意し、視覚的にまとめ買いのメリットが伝わるデザインにしておけば、同じ仕組みを春夏・秋冬でテンプレート的に使い回せます。結果として、キャンペーンごとにゼロから設計するのではなく、「新商品」と「季節の変わり目」をトリガーに、セット販売を自然に組み込んだ更新サイクルを作ることができます。
ディスカウントしすぎない価格設計と利益確保のためのチェックポイント
セット販売は「お得感」が命ですが、むやみに値引きすると、気づかないうちに利益を削ってしまいます。まず押さえたいのは、単品販売時の粗利率と、セットにしたときの想定粗利率をきちんと見える化することです。原価・送料・梱包資材・決済手数料など、Shopifyのレポートでは埋もれがちなコストまで洗い出し、セットにした瞬間にどこまで利益が圧迫されるのかをシミュレーションしておきましょう。
そのうえで、値引き幅を決めるときは「何パーセントOFFか」ではなく、「1セットあたりどれだけ利益が残るか」を基準に考えます。たとえば、A商品とB商品を組み合わせたセットであれば、以下のように単品合計価格とセット価格の差額を精査しておくと安全です。
| 項目 | 単品合計 | セット販売 |
|---|---|---|
| 販売価格 | ¥4,000 | ¥3,600 |
| 原価合計 | ¥1,800 | ¥1,800 |
| 粗利益 | ¥2,200 | ¥1,800 |
| 粗利率 | 55% | 50% |
また、ディスカウントだけで魅力を出そうとせず、「金額以外の価値」をセットに上乗せする発想も重要です。たとえば次のような工夫を組み合わせると、価格を下げすぎなくても購入動機を高められます。
- 限定ラッピングや同梱カードなどの「ギフト感」を演出
- レシピ集や使い方ガイドをPDFで同梱して価値を補強
- 定期購入やメルマガ登録と連動させた特典でリピートを設計
Shopify上では、ディスカウントコードや自動ディスカウントを使うことで、値引きを簡単に設定できますが、頻度や条件をコントロールしないと「値引きが前提のブランド」になりかねません。テーマのカスタマイズやバッジ表示を活用して、常に安売りするのではなく「期間限定」「数量限定」「初回限定」といったメリハリをつけ、通常価格の価値もしっかり伝えるデザインにしておきましょう。
最後に、セット販売の価格が本当に妥当かどうかは、数字だけでなく顧客の反応でもチェックしていきます。購入率・カート投入率・平均注文単価・リピート率といった指標をShopifyアナリティクスで追いながら、次のような視点で定期的に見直してみてください。
- 単品よりもセットのカート投入率が極端に低い場合 → 魅力不足か価格が高すぎる可能性
- セットが売れているのに利益が伸びない場合 → 値引きしすぎ、もしくはコスト見落としの可能性
- 特定の組み合わせだけ極端に売れる場合 → そのセットを「基準価格」として他セットの価格設計を調整
Shopifyアプリと自動化機能を使ったセット販売の運用タイミングとワークフロー
手作業での在庫調整や注文メモでの「セット管理」に限界を感じはじめたときこそ、アプリと自動化の出番です。たとえば、単品販売が増えてSKUが細分化してきた、スタッフによって対応品質にバラつきが出てきた、セール時だけセットを組むと現場が混乱する――こういったシグナルが見えたら、運用フローそのものを見直すタイミングと言えます。単に「便利そうだから導入する」のではなく、「どの作業をゼロにしたいか」を明確にしておくと、後からアプリを選びやすくなります。
ワークフローの起点は、まず「どのレベルで紐づけるか」の設計です。親セット商品を1SKUとして見せるのか、構成アイテムまで分解して在庫を連動させるのかで、使うアプリのタイプも変わります。一般的には、以下のようなパターンで検討を進めることが多いでしょう。
- 見せ方優先:デザイン重視で、商品ページ上の体験を豊かにする
- 在庫優先:単品とセットの在庫整合性を自動化したい
- オペレーション優先:ピッキングや梱包の手順をシンプルにしたい
| 運用の状態 | おすすめの自動化 | 導入優先度 |
|---|---|---|
| セットが月1回程度 | タグ付け・表示切替だけ | 低 |
| 週次でセット内容を変更 | 在庫連動アプリ + フロー自動化 | 中 |
| 常時複数セットを運用 | SKU分解・バンドル専用アプリ | 高 |
実際のワークフローとしては、まず「企画 → 設定 → テスト → 公開 → 振り返り」という5つのステップに分解するとスムーズです。企画フェーズでセットの目的(在庫消化/客単価アップ/新商品の試食的な位置づけなど)を決め、次にアプリ側でセット商品を作成し、自動タグ付け・ディスカウント・在庫引当ルールを設定します。公開前には、非公開商品や限定URLを使ってスマホ表示・カート挙動・メール文面をテストし、不具合をゼロに近づけてから本番公開します。
Shopify Flow や類似の自動化ツールを活用すれば、運用後の細かなメンテナンスも「ルール化」できます。たとえば、在庫が一定数を下回ったら自動でセット商品を非公開にする、特定のタグが付いた商品が追加されたら既存セットに候補として追加する、キャンペーン期間終了と同時にディスカウントとバナーを一括で解除するといった処理が代表的です。これらをあらかじめシナリオとして設計しておけば、担当者のスキルや経験に依存せず、再現性の高いセット販売運用が可能になります。
今後の進め方
セット販売は、売上アップの”奥の手”というより、日々の運営やお客様の行動データから「今だからこそ活きる施策」として浮かび上がってくるものです。
「客単価を上げたいからセットを組む」のではなく、
「お客様が本当に欲している組み合わせを、最適なタイミングで提案する」–
その視点に立てるかどうかが、Shopifyでのセット販売を成功させる分かれ道になります。
アクセス数・購買データ・在庫状況・季節イベント…。
これらがひとつの線としてつながったと感じた瞬間が、セット販売を仕掛ける合図かもしれません。
もし今、あなたのストアで「よく一緒に買われている商品」や「説明すると売れる組み合わせ」が見え始めているなら、それはすでにスタートラインに立っているということです。
あとは、小さくテストし、反応を見て、セットの内容もタイミングも少しずつ磨いていくだけ。
その積み重ねが、単なる「まとめ売り」を超えた、ブランドらしい”提案型のセット販売”へと育っていくはずです。

