オンラインショップを運営するうえで、「売上」や「集客」と同じくらい重要なのが「セキュリティ」です。
特にShopifyを使っている場合、クレジットカード情報を含む顧客データや、会員情報、注文履歴など、多くの大切な情報を扱うことになります。これらが万が一流出してしまうと、ショップの信頼低下やクレーム対応だけでなく、法的な問題に発展する可能性もあります。
ただし、セキュリティ対策と聞くと、「専門知識がないと難しそう」「システム担当者がいないから不安」と感じる方も多いはずです。本記事では、そのようなShopify運営者の方に向けて、専門用語をできるだけ避けながら、「最低限ここだけは押さえておきたい」基本のセキュリティ対策を整理して解説します。
Shopify自体にはすでに高いセキュリティ機能が備わっていますが、運営者側の設定や日々の運用次第で、安心度は大きく変わります。
パスワード管理、権限設定、アプリの選び方、バックアップの考え方など、実務でそのまま活用できるポイントを中心に紹介しますので、自社ショップの状況を確認しながら、一つずつ見直していきましょう。
目次
- Shopify標準機能でできるセキュリティ対策の全体像を理解する
- 管理画面への不正ログインを防ぐための具体的な設定方法
- 顧客情報と注文データを安全に扱うための運用ルール
- アプリ導入時に確認すべき権限と信頼性のチェックポイント
- 決済情報保護の基本と不正利用を減らすための設定
- スタッフアカウントと権限管理で内部からの情報漏えいリスクを下げる
- 日常の店舗運営で実践したいセキュリティチェックと見直し手順
- 最後に
Shopify標準機能でできるセキュリティ対策の全体像を理解する
まず押さえておきたいのは、Shopify自体が「決済情報」や「パスワード」などのセンシティブな部分をプラットフォーム側で保護してくれている、という前提です。とはいえ、ストア運営者として何もしなくてよいわけではありません。標準機能の中には、設定しておくだけでセキュリティレベルを底上げできる項目が複数あり、それらを組み合わせることで「不正ログインを防ぐ」「怪しい注文を検知する」「顧客データへのアクセス権限を最小限にする」といった基本的な防御線を構築できます。
セキュリティ対策の全体像をイメージしやすくするために、標準機能を「誰を守るか」という視点で分類すると理解しやすくなります。たとえば、ストア管理者アカウントを守るための機能、顧客と注文データを守るための機能、テーマやアプリ経由のリスクを抑えるための機能、といった具合です。Shopifyの管理画面で日常的に触れる設定の多くは、このどれかに紐づいているため、「どの設定が、何を守っているのか」を意識しながら確認すると、抜け漏れを防ぎやすくなります。
| 対象 | 主な標準機能 | 目的 |
|---|---|---|
| 管理者アカウント | 2段階認証、権限ロール | 不正ログインや権限の乱用を防止 |
| 顧客・注文データ | スタッフ権限設定、注文権限の分離 | 閲覧・編集できる人を必要最小限に限定 |
| 決済・不正注文 | 不正注文解析、返金権限の制御 | なりすましや不正利用による損失を軽減 |
| テーマ・アプリ | アプリ権限確認、テーマ権限管理 | 外部ツール経由での情報漏えいを抑止 |
これらを踏まえると、運営者が標準機能で押さえておくべきアクションはおおよそ次のように整理できます。
- ログイン周り:すべてのスタッフに2段階認証を必須化し、共有アカウントを廃止する
- 権限設計:スタッフごとに職務に応じた権限ロールを割り当て、顧客情報・返金・アプリ編集など重要な項目へのアクセスを限定する
- 運用ルール:退職・異動時の権限停止、アプリ導入時の権限確認、定期的なアクセス権レビューを運用ルールとして明文化する
このように、追加のアプリや専門的な知識がなくても、標準機能と運用ルールを組み合わせるだけで、日常的なリスクの多くはコントロールすることが可能です。
管理画面への不正ログインを防ぐための具体的な設定方法
まず行いたいのは、ログインIDとパスワードの「入り口」を強くすることです。Shopifyの管理画面では、スタッフアカウントごとに強力なパスワードポリシーを徹底しましょう。具体的には、8文字以上ではなく「12文字以上」を目安にし、英字・数字・記号を組み合わせたフレーズ型のパスワードを推奨します。また、同じパスワードを他サービスと使い回さないよう、スタッフにも周知しておきます。実務では、パスワード管理ツールの使用をルール化しておくと、覚えやすさと安全性のバランスが取りやすくなります。
- 長く複雑なパスワードを「フレーズ」で設定する
- 他サービスとのパスワード使い回しを禁止する
- パスワード管理ツールの利用を推奨・ルール化する
| 項目 | 推奨設定 |
|---|---|
| 文字数 | 12文字以上 |
| 構成 | 英大文字・小文字・数字・記号を混在 |
| 更新頻度 | 6〜12か月ごとに見直し |
次に、二要素認証(2FA)の有効化は必須と考えてください。管理画面にログインする際に、パスワードに加えて、スマートフォンの認証アプリやSMSコードでの確認を求める仕組みです。Shopifyの「ユーザー設定」からスタッフごとに2FAを設定し、全スタッフへ導入締切日を設けて一斉に運用を開始します。実際の運用では、スマートフォン紛失時のバックアップコードを安全な場所に保管しておくこと、店舗用の共用端末には認証情報を保存しないことも合わせてルール化しておくと事故を防ぎやすくなります。
- 全スタッフアカウントで二要素認証を必須化する
- 認証アプリ(例:Google Authenticator 等)の利用を標準とする
- バックアップコードの保管場所を社内ルールで明確にする
最後に、ログインできる人と場所を絞り込む設定・運用を行います。まず、スタッフ権限を見直し、実際の業務内容に応じた最小限の権限だけを付与します。退職者や一時的な外部パートナーのアカウントは必ず即日で無効化します。また、共用PCを使う場合は、ブラウザの自動ログインやパスワード保存をオフにし、作業終了時には必ずログアウトすることを徹底します。可能であれば、社内ルールとして「管理画面にアクセスしてよい端末(社用PC・社用スマホなど)」を指定し、それ以外の端末からのログインを原則禁止することで、不正ログインの入り口自体を減らすことができます。
- スタッフ権限は「必要最小限」に設定する
- 退職・契約終了時にアカウントを即時削除または停止する
- 共用端末では自動ログインを禁止し、都度ログアウトを徹底する
顧客情報と注文データを安全に扱うための運用ルール
日々の運用では、まず「誰が」「どの情報に」アクセスできるのかを明確にし、権限を細かく分けて管理します。スタッフアカウントごとに役割を定義し、不要な権限は付与しないことが基本です。また、GoogleスプレッドシートやExcelへの出力・共有も、リンクの公開範囲やパスワード保護を徹底し、退職者や業務から離れたメンバーのアクセスは速やかに停止します。紙で印刷した注文一覧やメモも、放置せずシュレッダー処理や鍵付き保管を行うなど、オフラインの管理も同様に意識します。
- パスワードの共用禁止(個人ごとのログインIDを使用)
- 顧客データの二次利用制限(マーケティング用途の範囲を社内で明文化)
- 注文データのダウンロード制御(CSV出力は担当者に限定)
- 業務委託先との秘密保持契約(NDA)締結
| シーン | やってよいこと | 避けるべきこと |
|---|---|---|
| 顧客問い合わせ対応 | 管理画面で必要最小限の情報を参照 | 個人PCに顧客リストを保存 |
| レポート作成 | 名前を削除し、IDのみで集計 | 氏名・電話番号入りの資料を社外共有 |
| アプリ連携 | 実績あるアプリに限定して導入 | サポートのない不明なアプリに顧客データを接続 |
運用ルールは作って終わりではなく、定期的な見直しと教育が重要です。新しいキャンペーンや外部ツールを導入するたびに、顧客情報や注文データがどのように流れるかを図にし、リスクの有無を確認します。そのうえで、マニュアルやチェックリストとしてまとめ、スタッフがすぐ参照できる場所(社内Wikiや共有ドライブなど)に整理します。最後に、年に1~2回は簡単な社内テストや振り返りミーティングを行い、「どこで情報が漏れ得るか」「どの操作に注意が必要か」を再確認することで、日常的に安全な運用を定着させていきます。
アプリ導入時に確認すべき権限と信頼性のチェックポイント
Shopifyアプリを導入する際は、まず「どの情報にアクセスされるのか」を具体的に把握することが重要です。インストール画面で表示される権限は、できるだけ細かく確認し、店舗運営に本当に必要なものかを見極めます。たとえば、売上レポートを作成するアプリが「顧客情報の編集」や「支払い情報へのアクセス」を求めている場合は、過剰な権限の可能性があります。権限の内容がわかりにくいときは、アプリのヘルプページや開発元サイトを確認し、「なぜその権限が必要なのか」が説明されているかをチェックします。
- 最低限の権限か:機能に見合った範囲だけを要求しているか
- 顧客データの扱い:メールアドレス・住所・電話番号など、個人情報へアクセスする理由が明記されているか
- データ保存の有無:Shopify外のサーバーにデータを保存するか、その保存期間・削除ポリシーが示されているか
- サポート体制:日本語サポートや問い合わせ窓口があり、対応時間が明記されているか
| チェック項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 権限の範囲 | 顧客・注文・テーマ編集など、アクセス対象が明確か |
| 開発元情報 | 会社名・所在地・Webサイト・実績が公開されているか |
| レビューと評価 | 低評価レビューに対する開発元の対応内容 |
| プライバシーポリシー | データの利用目的・第三者提供の有無が記載されているか |
信頼性を確認する際は、評価の「点数」だけではなく、レビュー内容や更新頻度も重視します。最近のアップデート履歴が途切れていないか、バグ報告に対して誠実に対応しているかは、長期的な運用に直結するポイントです。また、インストール前にテスト用の開発ストアで試し、テーマや他アプリとの相性を確認することで、本番環境でのトラブルを減らせます。万が一に備え、導入前には必ずテーマのバックアップを取り、アプリを削除した後に残るデータやコードの有無についても、事前にドキュメントやサポートで確認しておくと安心です。
決済情報保護の基本と不正利用を減らすための設定
決済情報の保護は、テーマやアプリの設定よりも優先度が高い項目です。まず前提として、クレジットカード情報は自社で「保管しない」ことが鉄則です。Shopify ペイメントや主要な外部決済サービスを利用すれば、カード番号そのものは決済事業者側で管理され、ストアにはトークン化された情報だけが届きます。そのうえで、管理画面へのアクセス権限を最小限にし、余計なスタッフアカウントを放置しないなど、ヒューマンエラーを減らす運用が重要です。
- Shopify ペイメントなど信頼できる決済プロバイダのみを利用する
- カード情報やCVVをメモ・メール・チャットで保管しない
- 決済関連のアプリは必要最小限にし、不要なものは削除する
- スタッフごとに権限を分け、「決済設定」へのアクセスを絞る
次に、不正利用のリスクを減らすために、Shopify 管理画面の「チェックアウトとアカウント」「不正注文の防止」設定を見直します。住所情報の必須項目や電話番号の入力を求めることで、怪しい注文を見抜きやすくなります。また、不審な国・地域からの注文が多い場合は、配送先の制限や、ハイリスク国向けに「事前承認のみ」に設定して手動で精査する運用も有効です。以下は、実務でよく使う設定イメージです。
| 項目 | 推奨設定 | 目的 |
|---|---|---|
| 電話番号 | 入力必須 | なりすまし注文の洗い出し |
| 配送先国 | 主要販売国のみに限定 | 高リスク地域からの注文抑制 |
| 支払いのキャプチャ | 自動 or ハイリスク国のみ手動 | 怪しい注文の出荷前チェック |
不正利用対策では、Shopify 標準の不正検知に加え、自社の運用ルールを明確にしておくと対応がぶれません。例えば、下記のような「キャンセル基準」をチームで共有しておくと、担当者が変わっても一定レベルの判断ができます。さらに、チャージバックが発生したケースや、カード会社からの問い合わせ内容は必ず記録し、同じパターンの注文が来たら自動的に目視チェックするようにします。
- 配送先と請求先の国が異なる場合は必ず目視確認する
- 高額注文(例:平均単価の3倍以上)は出荷前に電話・メールで確認する
- 同一IPから短時間に複数のカードで決済が試行された場合はブロックする
- チャージバックが発生したパターンを社内メモ・マニュアルに残す
スタッフアカウントと権限管理で内部からの情報漏えいリスクを下げる
日々の運用では、スタッフごとに「どこまで触れてよいか」を明確にしておくことが、内部からの情報漏えいを防ぐうえで非常に重要です。Shopifyでは、スタッフアカウントごとに権限を細かく設定できるため、役割に応じて必要な範囲のみにアクセスを限定できます。例えば、店舗の更新作業が中心のメンバーにはテーマ編集や商品管理のみ、カスタマーサポートには注文閲覧や顧客情報の参照のみ、といった形で業務内容に合わせた権限設計を行います。この「必要な人が、必要な情報だけに触れられる状態」をつくることが、結果として情報の扱いをシンプルにし、ヒューマンエラーの減少にもつながります。
- 権限は「多め」ではなく「最低限」に設定する(必要になったら都度追加)
- 1人1アカウントを徹底(アカウントの共用はログ追跡を困難にする)
- 退職・異動時は即日でアクセス停止(権限の棚卸しを月1回などでルール化)
- パートナー・外部業者には限定的な権限のみ付与(一時的な利用なら期限も決めておく)
| スタッフの役割 | 推奨される主な権限 | 制限しておきたい権限 |
|---|---|---|
| カスタマーサポート | 注文・顧客の閲覧と編集 | テーマ編集、支払い設定 |
| コンテンツ担当 | 商品登録、コレクション、ブログ | 顧客情報のエクスポート、割引設定 |
| 広告運用・分析担当 | レポート閲覧、マーケティング設定 | 注文編集、決済関連の設定 |
日常の店舗運営で実践したいセキュリティチェックと見直し手順
日々の運営でまず意識したいのは、「毎日行う軽いチェック」と「週・月単位で行う見直し」を分けてルーティン化することです。たとえば、出勤して管理画面にログインした直後に、ダッシュボード上の通知やアラートを確認し、見覚えのないログイン通知やアプリの権限変更がないかをざっと目視します。また、店舗スタッフの退職や担当変更があった場合は、そのタイミングで必ずアカウントの停止や権限の見直しをセットにして実施する運用ルールを決めておくと、うっかり放置によるリスクを抑えられます。
- 毎日:管理画面のお知らせ・アラート確認
- 毎週:スタッフ権限・ログイン履歴のチェック
- 毎月:アプリ一覧とテーマ編集履歴の見直し
- イベント時(セール・キャンペーン時):決済エラーや不審な注文の増加状況を重点確認
具体的なチェック内容は、店舗の規模や体制に合わせてシンプルに保つことが重要です。次のような項目表を作成し、印刷してバックオフィスに貼るか、タスク管理ツールに登録しておくと、誰が見ても同じ基準で点検できます。
| 頻度 | チェック項目 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 毎日 | 不審なログイン通知・注文の有無 | 発見したら店長へ即共有 |
| 毎週 | スタッフアカウント・権限の見直し | 不要アカウントは停止・削除 |
| 毎月 | 利用中アプリとテーマ編集履歴の確認 | 不要アプリは削除・コード変更はメモ |
チェックとあわせて「見直し手順」を決めておくことで、異常を見つけたときに迷わず動けるようになります。たとえば、不審なログインを見つけた場合は、(1)該当アカウントのパスワード変更 → (2)他スタッフのログイン情報共有状況をヒアリング → (3)二段階認証が有効か再確認 という流れをマニュアルにしておきます。また、アプリを削除する際は、バックアップテーマの作成 → 削除後の動作確認(商品購入・会員登録など) を必ずセットで行い、売上に直結する機能に影響がないか、テスト注文やテスト顧客登録でサッと確かめる運用にしておくと安心です。
最後に
本記事では、Shopifyストアを運営するうえで押さえておきたい基本的なセキュリティ対策について整理しました。
セキュリティというと専門的で難しい印象があるかもしれませんが、多くの対策は「設定を見直す」「権限を適切に管理する」「日々の運用ルールを整える」といった、運営者としての基本的な取り組みから始められます。
顧客情報を安全に扱うことは、単にトラブルを防ぐだけでなく、ショップへの信頼を維持・向上させるうえでも欠かせません。
本記事で触れた内容を参考にしながら、
– アカウントや権限設定の定期的な見直し
– パスワードや二要素認証などの基本的な対策の徹底
– アプリ導入時のチェックとログの確認
– プライバシーポリシーや社内ルールの整備
といった点を、できるところから順番に進めていくことをおすすめします。
セキュリティ対策は「一度やれば終わり」ではなく、ショップの成長や環境の変化に合わせて更新していくものです。定期的に現状を振り返り、必要に応じて対策を見直しながら、安心して利用してもらえるオンラインストア運営を続けていきましょう。

