海外からのアクセスや注文が増えているものの、「言語」や「通貨」の対応に不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
Shopifyは標準機能として多言語・多通貨に対応しており、追加の開発を行わなくても、基本的な設定だけで越境ECの土台を整えることができます。
本記事では、技術的な専門知識がないショップ運営者の方でも取り組めるよう、Shopifyで多言語・多通貨対応を行う際の「基本設定」に絞って解説します。
どの画面から設定するのか、どのような点に注意すべきか、実務上よくあるつまずきポイントなどを、できるだけ分かりやすく整理してご紹介します。
これから越境ECを本格的に始めたい方や、すでに海外からのアクセスがあるものの十分に対応しきれていないと感じている方は、自社ストアの現状を確認しながら、設定の見直しに役立ててください。
目次
- Shopifyで多言語対応を始める前に確認すべきポイント
- Shopifyの標準機能と翻訳アプリの選び方
- 言語ごとのストア表示設定と翻訳運用の基本手順
- 多通貨対応の仕組みと為替レートの設定方法
- 決済方法と通貨の組み合わせで注意すべき実務上のポイント
- 海外向け送料・税金設定とチェックすべき法規制の概要
- 越境ECのCV向上につながる言語・通貨別の見せ方と運用改善例
- 最後に
Shopifyで多言語対応を始める前に確認すべきポイント
まず確認したいのは、どの言語を「どの優先度で」対応するかという全体方針です。アクセス解析や現在の注文データ、今後狙いたい国・地域をもとに、対象市場を明確にしておきます。そのうえで、完全翻訳が必要なページと、最低限翻訳すべきページを切り分けると、作業量を現実的な範囲に抑えられます。例えば以下のように、優先度を段階的に整理しておくと運用がスムーズです。
- 最優先:商品ページ(商品名・説明・サイズ情報・素材・注意事項)
- 次点:カート・チェックアウト関連の文言、送料・返品ポリシー
- 余裕があれば:ブログ記事、ブランドストーリー、FAQなど
| 種別 | 翻訳レベル | ポイント |
|---|---|---|
| 商品名 | 必須 | 検索を意識して自然な表現に |
| 説明文 | 必須 | 自動翻訳後に人の目で確認 |
| ポリシー | 必須 | 誤訳がトラブルの原因になりやすい |
次に、ストアの運用体制と更新フローを先に決めておくことが重要です。翻訳を一度入れて終わりにせず、商品追加・価格変更・キャンペーンなどの更新時に、どのタイミングで翻訳を反映するかを明確にします。たとえば、以下のような役割分担とルールをあらかじめ決めておくと、言語ごとの情報差異を減らせます。
- 日本語で商品登録を行う担当と、多言語への反映担当を分ける
- 商品登録後〇日以内に翻訳を反映する、といった基準を決める
- 自動翻訳ツールで下書きを作成し、重要ページのみ人力で校正する
また、多言語化と同時に多通貨・配送条件・税設定の見直しも避けて通れません。言語だけ増やしても、顧客が自国通貨で支払えなかったり、配送や関税の条件が不明確だと離脱につながります。対応前に、ターゲットとなる国ごとの基本条件を簡単に一覧化しておくと、その後の設定作業が整理しやすくなります。
| 対象エリア | 表示通貨 | 配送ポリシーの要点 |
|---|---|---|
| 北米 | USD | 関税・追加手数料の有無を明記 |
| EU圏 | EUR | VAT込み価格かどうかを明確に |
| アジア近隣 | JPY / 現地通貨 | 配送日数の目安を具体的に記載 |
Shopifyの標準機能と翻訳アプリの選び方
まず押さえておきたいのは、テーマによって対応度は異なるものの、Shopify自体にすでに多言語・多通貨のための土台が用意されている点です。言語や市場ごとに価格・通貨を出し分けできるほか、チェックアウト画面も標準で複数言語に対応しています。一方で、商品説明やブログ記事、メタフィールドなどの細かな文言は、管理画面だけでは「どこまで翻訳されているか」「どの言語が未翻訳か」を一覧しづらく、運用フェーズで抜け漏れが起きやすいのも実情です。この「標準機能だけで十分な範囲」と「アプリがあった方がラクな範囲」を切り分けることが、最初の判断ポイントになります。
翻訳アプリを検討する際は、まず自社の運用体制と更新頻度を基準に選ぶと判断しやすくなります。例えば、
- 商品数が少なく、更新頻度も低い:標準機能+シンプルな翻訳アプリでも十分
- 商品数が多く、コレクションも頻繁に追加:一括翻訳や翻訳管理画面が充実したアプリが向いている
- 自社で翻訳チェックを行いたい:機械翻訳後の編集がしやすく、レビュー用の表示切替ができるものが便利
- 外部翻訳パートナーと連携したい:エクスポート/インポート機能(CSVやXLIFF)があるアプリを優先
といったように、「どの程度自動化したいか」「誰がどの画面で作業するか」を言語化しておくと、アプリの機能一覧を見たときに比較しやすくなります。
| 観点 | 標準機能で十分なケース | 翻訳アプリを使うべきケース |
|---|---|---|
| 運用負荷 | ページ数が少なく、手動更新でも追いつく | 商品・記事が多く、手作業だと更新漏れが出やすい |
| 翻訳品質 | シンプルな文言が中心で、最低限の自動翻訳で足りる | 専門用語やブランド表現が多く、微調整やレビューが必須 |
| 将来拡張 | 言語数は1〜2か国語で大きく増やす予定はない | 今後も対応言語・市場を段階的に増やしていく予定がある |
このように、初期コストだけで判断せず、将来の拡張や担当者のスキルセットも含めて検討することで、自社にとって無理のない多言語・多通貨運用の仕組みを組み立てやすくなります。
言語ごとのストア表示設定と翻訳運用の基本手順
まずは、管理画面で「言語を増やす」作業から始めます。Shopify管理画面の「設定」→「言語」で公開したい言語を追加し、対象となる販売国と紐づけます。そのうえで、オンラインストアテーマ側では、ヘッダーやフッターなどに言語スイッチャーを配置し、お客様がワンクリックで言語を切り替えられる導線を用意します。ここでは「どの国の訪問者に、どの言語を優先表示するか」を事前に決めておくと、運用後の修正が少なくなります。
- 表示言語の追加:対象国を決めて必要な言語だけを有効化
- 切替の導線設計:ヘッダー・フッター・ドロワーメニューにスイッチャーを設置
- 自動リダイレクトの有無:ブラウザ言語を使うか、あくまで手動切替にするかを決定
| 対象エリア | 推奨表示言語 | 備考 |
|---|---|---|
| 北米 | 英語(en) | デフォルト言語に設定しやすい |
| 欧州主要国 | 英語 + 各国語 | まず英語を共通軸に |
| 東アジア | 英語 + 日本語/中国語/韓国語 | 主要市場ごとに追加 |
翻訳運用は、最初に「何を自動翻訳に任せ、どこを人手で確認するか」のルールを決めると安定します。商品タイトルやコレクション名など検索に関わる部分は、人手チェックの優先度を高く設定し、説明文やブログなどは自動翻訳+後追い修正でも問題ないことが多いです。実務では、以下のように翻訳の更新フローを決めておくと、運営チーム全体で迷いが減ります。
- 初期構築時:アプリなどで全体を自動翻訳 → 重要ページだけ人手で校正
- 新商品追加時:商品登録 → 翻訳キューに投入 → 担当者が定期的にレビュー
- キャンペーン時:ランディングページとバナー文言を優先して多言語化
- 定期メンテナンス:月次で主要ページの用語ゆれや表現を見直し
翻訳対象は商品ページだけではありません。カート・チェックアウト前後の案内やポリシーページも、言語ごとに整えておくことで、お客様の不安を減らせます。とくに返品ポリシーや配送条件は、国ごとに内容が変わることが多いため、翻訳だけでなく記載内容もあわせて調整します。運用しながらアクセスの多いページを分析し、「アクセスが多いのに直帰率が高いページ」から順に翻訳の精度を上げていくと、限られた工数でも効果が出やすくなります。
- 必ず翻訳する箇所:商品ページ、カート、注文確認メール、ポリシー類
- 優先度を見て判断:ブログ、読み物コンテンツ、ブランドストーリー
- 運用で調整:FAQやヘルプページは問い合わせ内容を見ながら更新
多通貨対応の仕組みと為替レートの設定方法
Shopifyで複数通貨を扱うためには、まず「Shopify Payments」の多通貨機能を有効にし、販売対象とする国・地域ごとに利用したい通貨を追加していきます。管理画面では、国ごとの価格調整や小数点以下の処理ルールを設定できるため、あらかじめ自社の価格戦略とすり合わせておくことが重要です。特に、既存の国内向け価格との整合性を保つために、各通貨の「見え方」をテスト用の公開パスワードや非公開テーマで確認してから本番反映すると、トラブルを防ぎやすくなります。
- 対象国・地域ごとに通貨を追加し、不要な通貨はオフにする
- 税抜・税込のどちらで表示するかを各市場の商習慣に合わせて選択
- 端数処理ルール(ラウンディング)を通貨ごとに統一して設定
為替レートは、自動更新と手動設定の2つの方法があります。自動更新を使うと、Shopifyが市場レートをもとに定期的に換算してくれるため、運用負荷は小さくなります。一方で、価格をよりコントロールしたい場合は、通貨ごとに為替レートに対する調整率(マージン)を上乗せして、レート変動による利益のブレを吸収する設計が有効です。以下のようなイメージで、調整のパターンを作っておくと便利です。
| 通貨 | 為替レート方式 | 調整イメージ |
|---|---|---|
| USD | 自動更新+5%上乗せ | レート変動対策を優先 |
| EUR | 自動更新+3%上乗せ | 価格競争と利益のバランス |
| JPY | 基準通貨 | 元データとして固定 |
また、単にレートを設定するだけでなく、実際の販売価格が現地市場の価格帯とかけ離れていないかを定期的にチェックすることも欠かせません。例えば、競合ショップと比較して極端に高い・安い場合は、調整率や端数処理の設定を見直します。運用面では、次のようなポイントをルーティン化しておくと、非技術者でも安定した多通貨運用が行えます。
- 月に一度、主要通貨の販売価格と利益率を簡易的に確認する
- 大きな為替変動があった週は、調整率の再設定を検討する
- 値下げキャンペーン時は、全通貨で割引率が揃っているかをチェックする
決済方法と通貨の組み合わせで注意すべき実務上のポイント
実務でまず押さえたいのは、「表示通貨」と「決済通貨」が一致しているかどうかです。特にShopify Paymentsと外部決済(PayPalやコンビニ決済など)を併用している場合、チェックアウト画面での通貨表示や、最終的に顧客カードに請求される通貨が異なるケースがあります。これを放置すると、為替差額や手数料の問い合わせが増え、サポート負荷が一気に高まります。管理画面での通貨設定だけでなく、各決済プロバイダ側の「受付通貨」「清算通貨」の組み合わせを一覧化しておくと、運用上の認識ズレを防ぎやすくなります。
- 決済手数料:カード会社・決済代行・Shopify側の手数料を通貨ごとに確認
- 為替レート:自動レートか手動レートか、更新頻度と反映タイミングを把握
- 返金・キャンセル:返金時のレート差損益や手数料の扱いをルール化
- 口座通貨:売上の入金先口座の通貨と、現地通貨との換算コストを確認
| ケース | 表示通貨 | 決済通貨 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 日本向け | JPY | JPY | 返金処理・ポイント連携など社内フローをJPY前提で統一 |
| 米国向け | USD | USD | 送料・関税をUSDで固定し、原価と利益率を定期的に見直す |
| 欧州向け | EUR | EUR / JPY | 表示と請求通貨がずれる場合は、説明文とFAQで明記 |
加えて、国ごとに利用されやすい決済手段と通貨の組み合わせを考えることが重要です。たとえば、EU圏ではEUR表示・EUR決済とKlarnaなど後払い手段の組み合わせが一般的であり、東南アジアでは現地通貨とキャッシュレスアプリの併用が求められることがあります。Shopify上では、どの国の顧客にどの通貨と決済手段を見せるかをルール化し、不要な通貨・決済手段はあえて出さない設計が有効です。運用段階では、問い合わせ内容を定期的に振り返り、「どの通貨・決済の組み合わせでトラブルが多いか」を洗い出して、設定とガイド文言の両面から改善していくと、サポート負荷とチャージバックリスクを抑えやすくなります。
海外向け送料・税金設定とチェックすべき法規制の概要
まずは、どの国・地域に発送するのかを明確にし、それぞれの「送料ルール」と「税金ルール」を切り分けて考えることが重要です。Shopifyでは配送プロファイルや配送ゾーンを使って、国別・地域別に送料を設定できます。たとえば、EU向けは重量別、北米向けは金額別など、マーケット特性に合わせて設計すると、コストと転換率のバランスを取りやすくなります。目安としては、原価(配送料+梱包費)から逆算しながら、以下のような基準で検討すると管理しやすくなります。
- 重量別送料:アパレルや雑貨など、重量差が売価に大きく影響しない場合に有効
- 金額別送料:一定額以上で送料無料にして客単価を上げたい場合に活用
- 一律送料:SKU数が少なく、パッケージサイズがほぼ一定の場合におすすめ
- リアルタイム料金:DHLやFedExなどの実費連動が必要な場合に検討
| 地域 | 税金の考え方 | チェックすべきポイント |
|---|---|---|
| EU | VATが原則必須、一定額超でOSS登録の検討 | インボイス額、IOSS番号の有無、HSコードの整合性 |
| 北米 | 州によって消費税ルールが異なり、ネクサスの有無が鍵 | 発送拠点の州、売上規模、プラットフォーム上の税設定 |
| アジア | 関税・輸入税は国ごとにバラつきあり | 免税枠(De Minimis)、禁制品・制限品のリスト |
法規制面では、税金以外にも各国の輸入規制や表示義務を押さえておく必要があります。とくに注意が必要なのは、化粧品・健康食品・食品・電気製品など、認証や成分表示が厳格に求められるカテゴリです。以下のポイントを最低限チェックしたうえで、必要に応じて物流パートナーや通関業者と連携し、最新情報を確認しながら運用することをおすすめします。
- 禁制品・規制品の確認:航空輸送で禁止されているもの、国ごとに輸入禁止となる成分・素材
- ラベリング・表示義務:原産国表示、言語要件、成分表記、使用上の注意など
- 輸出入許可・認証:FDA等の登録、PSE・CEマークの有無、事前申請の必要性
- 関税負担ルール:DDP(関税ショップ側負担)かDAP/DDU(受取人負担)かの事前明示
越境ECのCV向上につながる言語・通貨別の見せ方と運用改善例
言語や通貨を増やすときは「ただ翻訳する」「ただ通貨を切り替えられるようにする」だけでは不十分です。各マーケットの購買行動に合わせて、同じ商品でも見せ方・伝え方・価格表示を調整すると、CVRに大きく差が出ます。たとえば英語圏では「スペックと用途」を簡潔に、東南アジア圏では「使用シーンの写真やレビュー」を厚めに、といった形で、言語ごとに訴求の軸を変えることが有効です。翻訳アプリで全言語一括翻訳した後に、売上上位の国だけでも手動でコピーを調整するだけで、クリック率やカート投入率が改善するケースはよくあります。
- 価格表示:小数点有無($19.99 vs €20)、税込・税抜表示、送料込み表記の有無を国ごとに合わせる
- 通貨スイッチャー:ヘッダー固定表示など、ユーザーが迷わず変更できる位置に配置する
- 決済手段:市場ごとの定番(例:アメリカはShop Pay・PayPal、ドイツはKlarnaなど)を目立つ位置で表示する
- コピー:「返品ポリシー」「配送日数」「関税」の説明は、各言語でページ上部またはカート近くに明示する
| 市場 | 推奨の見せ方 | 運用改善の例 |
|---|---|---|
| 北米(USD) | $表記・小数点あり、仕様を箇条書き中心 | 商品名・1行説明を短くし、レビューをファーストビューに表示 |
| EU(EUR) | 税込価格を明記し、配送・関税情報を近くに配置 | 「税込」「関税込み」のラベルを追加し、カート離脱を抑制 |
| 中東(AED など) | 現地通貨をデフォルト、ラグジュアリー寄りのビジュアル | 高価格帯は通貨切替でUSDも併記し、価格感の比較をしやすくする |
最後に
本記事では、shopifyでの多言語・多通貨対応に関する基本的な考え方と、主要な設定項目について整理しました。
言語や通貨の設定は、一度にすべてを完璧に整える必要はありませんが、「どの国・地域のお客様に、どのような体験を提供したいのか」という方針を明確にしておくことが重要です。
まずは、
– 対応したい国・地域の優先順位を決める
- 対象言語と通貨を絞り込む
– 自社の運用体制(翻訳・サポート・物流など)とのバランスを確認する
といった点から着手し、少しずつ範囲を広げていくと、負担を抑えながら越境ECの基盤を整えていくことができます。
多言語・多通貨対応は、単なる「設定作業」ではなく、海外のお客様との接点をつくるための重要な要素です。自社のビジネスモデルやリソースに合わせて、無理のない形で運用できる仕組みづくりを進めていきましょう。
