在庫切れの商品に対する「バックオーダー」は、EC運営において避けて通れない課題のひとつです。人気商品や予測しづらい需要の変動により、どうしても在庫が追いつかない場面は発生します。その一方で、お客様にとっては「注文したのに届かない」「いつ届くのかわからない」といった不安や不満につながりやすく、対応を誤ると信頼低下を招く要因にもなりかねません。
こうした中で重要になるのが、「バックオーダーを発生させないこと」だけでなく、「バックオーダーが発生したあと、いかにスムーズに管理し、顧客満足度を維持するか」という視点です。どれだけ在庫管理を工夫しても、バックオーダーを完全にゼロにすることは現実的ではありません。だからこそ、受注から入荷・発送までの流れを見える化し、お客様への案内や社内の対応を標準化できる仕組みが求められています。
本記事では、Shopifyでの運営に携わる方を対象に、バックオーダー管理を効率化しながら顧客満足度を保つための「新機能」と、その活用ポイントをわかりやすく解説します。専門用語や複雑な設定に踏み込みすぎず、日々の受注対応や在庫調整の現場で、そのまま役立てられる視点を重視して紹介していきます。
目次
- バックオーダー管理の基本と顧客満足度への影響
- 新機能で変わる在庫ステータス表示とお客様への見せ方
- 納期表示と通知設定の最適化による不安軽減のポイント
- バックオーダー時の受注ルール設計とキャンセルリスクの抑え方
- 顧客コミュニケーション文面の作り方とテンプレート活用例
- 販売データを活用したバックオーダー発生原因の分析方法
- チーム運用フローの整備と店舗規模別の導入ステップ
- Future Outlook

バックオーダー管理の基本と顧客満足度への影響
ネットショップの運営では、在庫がゼロなのに注文が入り続ける状況をどのように扱うかが重要です。これが適切に整理・記録された状態がバックオーダーであり、単なる「在庫切れ」とは違います。ポイントは、いつ・どの商品が・どのくらい不足していて、どのタイミングで補充されるのかを、受注情報と結びつけて把握することです。Shopifyでは、在庫数と販売可能数がずれると、画面上では見えにくい「隠れた受注残」が生まれやすいため、日次で状況を確認し、担当者間で同じ数字を参照できる状態を維持することが欠かせません。
顧客満足度に影響するのは、在庫が不足している「事実」よりも、不足していることをどのように伝え、どう扱うかです。多くのトラブルは、納期が曖昧なまま受注を続けたり、発送予定が変わっても連絡をしなかったりすることから発生します。シンプルでも効果的な運用として、以下のような工夫があります。
- 商品ページでの明確な納期表示:「〇月〇日以降順次発送」など具体的な目安を記載
- 受注確認メールへの追記:バックオーダー商品には個別に納期と注意点を明記
- ステータス別のフォロー連絡:入荷遅延時にはテンプレートを使い、速やかにメール送信
- キャンセルポリシーの明文化:一定日数以上遅れる場合の対応方針をあらかじめ提示
| 運用ポイント | 顧客から見たメリット |
|---|---|
| 納期の見える化 | 不安を感じにくく、待つかどうかを自分で判断できる |
| こまめな状況共有 | 「放置されている」印象が薄れ、信頼感が保たれる |
| 柔軟な選択肢の提示 | キャンセルや代替提案など、納得感のある対応が受けられる |

新機能で変わる在庫ステータス表示とお客様への見せ方
新機能では、従来「在庫あり/在庫切れ」といった二択だった表示を、入荷時期や注文可能数まで含めた多層的なステータスに分解できます。これにより、ショップ側は「売れるか・売れないか」だけでなく、「いつ・どれくらいなら売れるか」をお客様に伝えられるようになります。特にバックオーダー商品では、曖昧な文言を避け、具体的な目安をセットにして表示することで、不安感やカゴ落ちを抑える効果が期待できます。
- 即日出荷可能:「在庫あり」「○点まで即日発送」
- 入荷待ち:「入荷予定日:〇月〇日」「予約受付中」
- 生産待ち・不定期入荷:「納期目安:2〜3週間」「メーカー取り寄せ」
- 販売終了候補:「在庫限り」「再入荷未定」
| 表示パターン | お客様に伝わる印象 | おすすめの見せ方 |
|---|---|---|
| 残りわずか(3点) | 急ぎたいが、まだ選べる | 商品価格の近くに小さく表示 |
| 予約受付中(入荷予定:〇月中旬) | 待てば買えると分かる | カートボタン付近に目立たせて掲載 |
| 再入荷通知を受け取るボタン | 再訪のきっかけになる | 在庫切れ時の代替アクションとして配置 |
バックオーダーを受け付ける商品については、ステータス表示だけでなく、文言の位置と組み合わせが重要です。商品名の近くにはシンプルな在庫状態を、カートボタンの近くには「お届けの目安」や「同時注文商品の発送タイミング」など詳細な説明を配置すると、問い合わせを減らしつつ納期に納得してもらいやすくなります。また、コレクションページでは簡潔なラベル表示、商品詳細ページでは詳しい説明といった形で、ページごとに情報量を調整すると、閲覧のしやすさと分かりやすさの両立が可能になります。

納期表示と通知設定の最適化による不安軽減のポイント
バックオーダー商品の不安を抑えるうえで重要なのは、「いつ届くのか」が一目でわかることです。Shopifyの商品ページでは、在庫切れ時の表示をデフォルトのままにせず、バックオーダー専用のメッセージを設定します。たとえば、単に「在庫切れ」ではなく、「予約受付中(◯月上旬入荷予定)」や「メーカー取り寄せ:通常◯〜◯営業日」といった、期間がイメージしやすい表現に変えると、購入前の心理的ハードルを下げられます。また、コレクション一覧やカート画面でも同じメッセージが見えるようにしておくと、途中で不安になって離脱されるリスクを抑えられます。
- あいまい表現を避ける:「近日入荷予定」よりも「◯月中旬頃」など具体的に
- 表示場所をそろえる:商品ページ・カート・確認画面で表現を統一
- 遅延リスクも記載:「交通事情等により前後する場合があります」など一文を添える
| ケース | 推奨メッセージ例 |
|---|---|
| 入荷日が確定 | ◯月◯日以降の出荷予定 |
| 目安のみわかる | ご注文から約5〜7営業日で出荷予定 |
| 供給が不安定 | おおよそ2〜3週間でのお届け(前後する可能性あり) |
もう一つの不安要素は、「今どうなっているのか分からない」という状態です。ここは通知設計で解消できます。Shopifyの標準通知メールやアプリを活用し、注文〜入荷〜出荷までの各タイミングで、自動的に連絡が届くようにしておきます。特にバックオーダーでは、「入荷予定が変わったとき」「入荷が確定したとき」の追加通知があると、問い合わせ件数の削減にもつながります。文面は専門用語を避け、「現在のステータス」「次に何が起きるのか」「目安の時期」が一通り分かる構成にすると安心感を与えられます。
- 自動メールのタイミング:注文受付時/入荷予定確定時/出荷完了時
- 件名はシンプルに:「ご予約商品の入荷予定についてのお知らせ」など
- ショップ側の姿勢を明記:遅延時の対応方針やキャンセル可否をあらかじめ記載
最後に、購入前後での情報差をなくすことも重要です。商品ページに記載した納期情報と、通知メール・注文状況ページの内容をそろえておくことで、「聞いていた話と違う」という不満を防げます。Shopifyの注文状況ページ(ステータスページ)には、バックオーダー専用の一文を追記しておくと、問い合わせ前にお客様自身で状況を把握できます。また、よくある質問をまとめたリンクを用意し、「いつまでに届かなければ連絡したほうが良いか」を明示しておくと、お客様の中で判断基準が明確になり、漠然とした不安を減らすことができます。
- 同じメッセージを使い回す:商品ページとメールで表現を統一
- FAQへの導線:「詳しい納期ポリシーはこちら」などのリンクを配置
- 問い合わせの目安:「予定日から◯日以上経過した場合はご連絡ください」と明記

バックオーダー時の受注ルール設計とキャンセルリスクの抑え方
バックオーダーを前提とした受注ルールの設計では、まず「どの受注を優先して在庫を割り当てるか」を明確にしておくことが重要です。たとえば、注文日時、販売チャネル(自社サイト・マーケットプレイスなど)、顧客区分(リピーター・法人顧客など)を基準に優先度を決めておくと、在庫が一時的に不足しても慌てずに配分できます。Shopifyではタグやメタフィールドを活用して、こうした優先度情報を注文に紐づけておくと、後から並び替えや抽出がしやすくなります。
次に、キャンセルリスクを抑えるために、バックオーダーを許可する条件と上限を事前にルール化しておきます。特にリードタイムが読みにくい商品は、以下のような基準で受付を制御すると、過剰な受注と大量キャンセルを防ぎやすくなります。
- リードタイムが〇日以内の商品だけバックオーダーを許可する
- SKUごとに受付上限数(例:直近入荷予定数の◯%まで)を設定する
- 配送希望日指定の制限(バックオーダー時は日付指定不可など)を行う
- 決済方法を限定(後払い・代引きに絞る、もしくは前払いのみにする)
| 商品タイプ | 推奨ルール | キャンセル抑制ポイント |
|---|---|---|
| 定番品 | 「先着順」で常に受注可 | リードタイム表示を商品ページに固定で記載 |
| シーズン品 | 入荷予定数の70%まで受付 | 残り30%は欠品・返品対応用として確保 |
| 限定品 | バックオーダー原則不可 | 在庫表示を厳密にし、予約のみ別途ページで管理 |

顧客コミュニケーション文面の作り方とテンプレート活用例
バックオーダーが発生した際の文面は、「いつ」「どのように」伝えるかで顧客の印象が大きく変わります。ポイントは、状況を正直に開示しつつも、不安をあおらない表現にすることです。例えば、入荷予定日は幅を持たせた日付を提示し、「最短で」「遅くとも」といった言い回しを使うと、多少の前後にも対応しやすくなります。また、Shopifyの自動メール(注文確認・発送通知)に追記する形でテンプレートを組み込んでおくと、オペレーションの負荷を増やさずに、常に一定品質のコミュニケーションを維持できます。
- 状況の明確化:在庫切れの理由と現在のステータスを簡潔に説明
- 見通しの共有:入荷予定の目安や、今後の連絡タイミングを明示
- 選択肢の提示:待機・代替品・キャンセルなど顧客側の選択肢を案内
- 感謝とお詫び:形式的でよいので、継続利用への感謝とお詫びを一言添える
| シーン | 件名テンプレート | 本文の出だし例 |
|---|---|---|
| 注文直後 | 【重要】ご注文商品の入荷予定について | このたびは当店をご利用いただき、誠にありがとうございます。ご注文いただいた商品につきまして、現在バックオーダーとなっております。 |
| 入荷時 | お待たせしました|ご注文商品の発送準備が整いました | お待ちいただいておりました商品が入荷し、ただいま発送準備を進めております。 |
| 遅延時 | 入荷予定変更のお知らせとご対応のお願い | ご案内しておりました入荷予定に変更が生じました。ご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません。 |
実務では、これらのテンプレートをShopifyの「通知」設定や、利用しているメールツールにあらかじめ登録し、バックオーダー用タグやメモをトリガーに送信できるよう整備しておくと運用が安定します。文面はブランドトーンに合わせて語尾や敬称をそろえ、最低でも半年に一度は見直します。また、問い合わせが多いフレーズ(例:「いつ届きますか?」など)はQ&Aとして本文末に短く追記しておくと、カスタマーサポートへの負荷も軽減できます。

販売データを活用したバックオーダー発生原因の分析方法
まず押さえたいのは、「どのタイミングで、どの商品に、どのチャネルから受注が集まりバックオーダーになったのか」を販売データから切り分けることです。Shopifyの注文エクスポートやアナリティクスを使い、期間別・商品別・販売チャネル別にデータを分解して確認します。特に、在庫ゼロまたは在庫閾値を下回っているタイミングで急に受注が増えていないかを見ていくことで、需要予測の甘さと、補充タイミングの遅れを切り分けやすくなります。
- 商品別売上・受注数:どの商品で継続的に欠品が発生しているか
- チャネル別売上:オンラインストア・マーケットプレイス・実店舗間の偏り
- 期間別トレンド:セール・SNS投稿・メルマガ配信後などの変化
- リードタイム情報:発注から入荷までの日数と誤差
| 分析軸 | 見るべきデータ | 想定される原因 |
|---|---|---|
| 商品 | SKUごとの販売数・在庫推移 | 需要予測不足・仕入れ数量の設定ミス |
| 期間 | キャンペーン前後の売上推移 | プロモーションの反響過小評価 |
| チャネル | チャネル別売上構成比 | チャネルごとの在庫引き当てルール不足 |
| サプライヤー | 入荷予定日と実際の入荷日 | リードタイムのばらつき・納期遅延 |
次に、販売データの「傾向」と「例外」を切り分けて見ます。日々のばらつきではなく、一定期間続いているパターンを探すことがポイントです。たとえば、毎回同じサイズやカラーだけが品切れになる場合は、バリエーションごとの発注配分の見直しが必要です。一方、SNSで突然バズった投稿の直後にだけバックオーダーが集中しているのであれば、マーケティングと在庫計画の連携が不足していた可能性が高くなります。このように、販売データを「いつ・どこで・何が・どれだけ売れたか」の視点で整理すると、属人的な勘ではなく、具体的な数字にもとづいて原因を説明できるようになります。

チーム運用フローの整備と店舗規模別の導入ステップ
まず、バックオーダー機能をチームに浸透させるためには、「誰が・いつ・何をするか」を明確にした運用フローが必要です。特に、在庫担当・受注担当・カスタマーサポートの3者で役割を分けると混乱が起きにくくなります。たとえば、在庫担当は入荷予定日の管理と在庫数の更新、受注担当はバックオーダー可否の判断とステータス変更、カスタマーサポートは顧客への案内とフォローを担う、といった形です。フローはテキストだけでなく、簡単な図やチェックリストにしてShopify管理画面のブックマーク横や社内マニュアルにまとめておくと、属人化を防ぎやすくなります。
店舗規模ごとに見ると、少人数のショップでは「最小限のルールから始めて、後から詳細化する」アプローチが現実的です。たとえば、初期段階では次のような簡易ルールに絞り込みます。
- 1日1回、入荷予定日とバックオーダー対象商品を確認する
- バックオーダー受注が入ったら、同じテンプレートで顧客に案内メールを送る
- 入荷遅延が発生した場合のみ、追加でメールを送るフローを用意する
この段階では、自動化よりも「担当者が迷わず対応できるか」を優先し、オペレーションの負荷が高くなってきたタイミングでアプリ活用や自動タグ付けなどの改善を検討します。
一方で、注文数やスタッフ数が増えている店舗では、チーム間の連携ルールをより細かく定義しておく必要があります。以下のようなテーブル形式で、店舗規模別の導入ステップを整理しておくと、社内共有がスムーズになります。
| 店舗規模 | 初期ステップ | 運用ポイント |
|---|---|---|
| 小規模(〜3名) | 担当を兼任し、シンプルなチェックリストで対応 | 毎日のルーチン化を優先し、詳細な例外ルールは後回し |
| 中規模(4〜10名) | 在庫・受注・サポートの役割を分け、共通テンプレートを整備 | Slackやメールでの連絡タイミングをあらかじめ決めておく |
| 大規模(11名〜) | 担当部署ごとにSLA(対応期限)を設定し、レポートで進捗管理 | Shopifyのタグやメタフィールドを使い、状況を一目で判別できるようにする |
このように、店舗の規模と体制に合わせてルールの細かさを変えながら、バックオーダーに関する情報と対応手順をチーム全体で共有しておくことが、顧客満足度を安定して維持するうえで重要になります。
Future Outlook
本記事では、バックオーダー管理の新機能が、どのように顧客満足度の維持・向上に役立つかをご紹介しました。
在庫切れが避けられない状況でも、
- 正確な在庫状況の把握
– 納期の見通しを含めた丁寧な情報提供
– 透明性のある注文・出荷フローの管理
といった基本を押さえることで、お客様の不安や不満を大きく減らすことができます。
日々の運営のなかで、すべてを一度に改善する必要はありません。
まずは、自社で「どの商品が」「どのタイミングで」バックオーダーになりやすいのかを把握し、今回ご紹介した機能のうち、取り入れやすいものから試してみるのがおすすめです。
バックオーダーを「トラブル要因」として捉えるのではなく、「お客様との信頼関係を強める機会」として活用できれば、長期的な顧客ロイヤルティの向上にもつながります。
今後の店舗運営の見直しや、バックオーダー対応フローの整備に、本記事の内容が少しでもお役に立てば幸いです。