オンラインストアの見た目を整えることは、ブランドイメージや売上に直結する大切な作業です。しかし、「テーマのコード編集」や「CSSの調整」といった言葉を聞くだけで、難しそうだと感じる方も多いのではないでしょうか。ちょっと色を変えたい、ボタンの形を整えたい、文字サイズを調整したいだけなのに、開発者に依頼したり、編集画面で迷子になってしまったりすることもあります。
こうした中で注目されているのが、「AIにテキストで指示を出すだけでテーマのデザインを変更する」という新しいカスタマイズ方法です。たとえば、「ボタンの色をブランドカラーの紺色にして」「商品タイトルの文字を少し大きくして読みやすく」など、日本語の文章で指示を出すと、その内容をAIが理解し、テーマの見た目に反映してくれます。
本記事では、専門的な知識がなくても扱える「テキストプロンプトによるAIテーマカスタマイズ」について、基本的な考え方から、実際の使い方や注意点までを、Shopify運営者の方向けにわかりやすく解説します。コードを直接触ることに不安がある方や、デザイン調整にかける時間を減らしたい方に、具体的なイメージを持っていただくことを目的としています。
目次
- テキストプロンプトでできることとできないことを正しく理解する
- デザイン変更前に準備しておきたいブランド情報と注意点
- AIに意図を正確に伝えるテキストプロンプトの書き方
- 配色やフォントを自然に調整するためのプロンプト例
- トップページや商品ページのレイアウトを見直すときのポイント
- 画像やバナーのスタイルを統一するためのAI活用方法
- 変更内容をテストしながら段階的に反映する運用手順
- In Summary
テキストプロンプトでできることとできないことを正しく理解する
まず押さえておきたいのは、テキストで指示できるのは「テーマの見た目や構成の調整」であって、「テーマ自体の仕組みの作り替え」ではないという点です。AIに対して、たとえば「商品一覧をカード風にして余白を増やす」「見出しのフォントを少し太く、色は #333 に」「PCでは3列、スマホでは1列にしたい」といったリクエストはしやすく、結果もイメージしやすい領域です。一方で、会員ランクに応じて自動的にバナー内容を変えるといった高度なロジックや、アプリ連携が絡む処理は、プロンプトだけでは完結しないことが多く、開発者や専用アプリのサポートが必要になります。
- テキスト指示で調整しやすい例
- フォントサイズ・色・余白・ボタン形状
- セクションの表示/非表示や並び順の変更
- バナーやスライドショーの文言・配置の微修正
- スマホ・PCでのカラム数や画像比率の変更
- テキスト指示だけでは難しい例
- 外部アプリとの連携設定や会員機能の追加
- 複雑な割引条件や独自ロジックを含む処理
- テーマの構造を大きく変えるリニューアル
| 指示の種類 | テキストプロンプトでの適合度 | 運用上のポイント |
|---|---|---|
| 見た目の微調整 | 高い(プロンプト向き) | 「どのページの」「どの要素か」を具体的に伝える |
| 配置やレイアウト変更 | 中〜高 | ワイヤーフレームのイメージを文章で細かく説明する |
| 機能追加・仕様変更 | 低〜要開発 | 要件整理をAIに手伝ってもらい、実装は専門家に依頼 |
デザイン変更前に準備しておきたいブランド情報と注意点
テキストプロンプトでテーマを変える前に、まず整理しておきたいのが「ブランドをどう見せたいか」という基本情報です。これはデザイナー向けの資料というより、AIに渡すための「ブランドメモ」のようなイメージで構いません。具体的には、ブランドの方向性・ターゲット像・ショップの価値提案を一文レベルでまとめておくと、プロンプトに落とし込みやすくなります。たとえば、ターゲットの年齢層や購入シーン、価格帯の感覚(プチプラ〜高価格帯)、競合ショップのURLなども書き出しておくと、AIが色味やレイアウトを提案する際のブレが減ります。
- ブランドのコアメッセージ:一言で言うと何のショップか
- ターゲット像:年齢・性別だけでなく、ライフスタイルや悩み
- ビジュアルの方向性:「ミニマル」「ナチュラル」「ラグジュアリー」などのキーワード
- 禁止したい表現:使いたくない色、フォント、写真の雰囲気
| 項目 | 例 | プロンプトへの書き方 |
|---|---|---|
| ブランドカラー | 深いネイビー+アクセントにゴールド | 「メインカラーは落ち着いたネイビー、ボタンやリンクには控えめなゴールドを使用」 |
| トーン&マナー | 信頼感・専門性・シンプル | 「医療系サービスのような清潔感と信頼感を優先し、装飾は最小限」 |
| 写真の雰囲気 | 自然光・生活シーン・やわらかい色味 | 「商品写真は自然光で、生活に溶け込むイメージが引き立つレイアウト」 |
あわせて、AIでデザインを変える際の運用面の注意点も事前に押さえておくと、後戻りが少なくなります。特に、既存の顧客が混乱しないよう、ロゴや主要なボタン位置(カート・検索・ログイン)などの「変え過ぎない部分」を決めておくことが重要です。また、PCとスマホで見え方が大きく変わるため、スマホ側の読みやすさやボタンの押しやすさを優先することをプロンプトに明記します。さらに、公開前に必ずテスト用テーマで確認すること・売上のピーク時間帯には大きな変更をしないことも運営上の基本ルールとしてプロンプトとは別にメモしておくと、安全にデザイン変更を進められます。
AIに意図を正確に伝えるテキストプロンプトの書き方
テキストプロンプトでテーマを調整する際に重要なのは、「Shopify上でどの要素を、どのように変えたいのか」を具体的に言語化することです。あいまいな指示(例:「いい感じのデザインにして」)では、AI側の解釈に大きく依存してしまい、意図した結果になりにくくなります。そこで、対象・目的・条件の3点を含めて書くことを意識します。例えば「トップページのヒーローバナーの見出し」といった対象、「新商品の訴求を強めたい」といった目的、「フォントは現在のテーマに揃える」「背景色は白ベース」といった条件を一つの文にまとめるイメージです。
- 対象:ヘッダー、商品カード、フッターなど、ページ内のどの部分かを明示する
- 目的:クリック率を上げたい、読みやすさを高めたい、ブランドイメージを統一したい など
- 条件:色、フォント、余白、画像の有無など、変えてよい範囲と変えたくない要素
| あいまいな指示 | 改善された指示 |
|---|---|
| トップページをおしゃれにして | トップページのヒーローセクションで、背景は白のまま、見出しを太字にしてフォントサイズを一段階大きくしてください |
| 商品一覧をもっと見やすく | 商品一覧ページで、商品名の文字を現在より少し大きくし、価格は商品名の下にグレーで表示してください |
また、AIにとっては「どの程度まで変更してよいか」を明確にしておくことも重要です。特に既にブランドガイドラインがある場合は、テキストプロンプトの中で固定ルールと調整してよい項目を分けて書きます。例えば、次のような構造で指示すると、意図が伝わりやすくなります。
- 変えてはいけない点:ブランドカラーは #FF6600、ロゴ周辺の余白は現状維持、英字フォントは変更しない
- 調整してよい点:商品一覧のカードの角丸、ボタンのサイズ、セクション同士の余白
- AIへの期待:上記の条件を守りながら、モバイルで読みやすく、視線を商品画像に誘導するレイアウトに最適化してください
| 項目 | プロンプトでの書き方例 |
|---|---|
| ブランド固定 | 「ブランドカラーとロゴ位置は変更しないでください」 |
| 調整範囲 | 「ボタンのサイズと角丸の有無は自由に変更して構いません」 |
最後に、テキストプロンプトでは一度で完璧を目指すよりも、試して修正する前提で書くことが現実的です。最初の指示で大枠のレイアウトやスタイルを指定し、その結果を見ながら「もう少し」「ここだけ戻す」といった追加の指示を短く重ねていきます。その際、前回との差分をはっきり書くと、AIはより正確に修正できます。例えば「前回提案してくれた商品カードのデザインで、画像サイズはそのまま、商品名の文字色だけを黒から濃いグレーに変更してください」のように、どの案をベースに、どこをどう変えるかを具体的に伝えることがポイントです。
- 初回:「コレクションページの商品カード全体のレイアウト案を3パターン提案してください」
- 修正:「2つ目の案をベースに、ボタンの背景色をブランドカラーに変更し、ボタンの角を少し丸めてください」
- 微調整:「同じ案で、SP表示時のみ商品名の文字サイズを一段階小さくしてください」
配色やフォントを自然に調整するためのプロンプト例
配色やフォントをAIに任せるときは、抽象的な表現ではなく「ショップの目的」「ターゲット」「雰囲気」を具体的に伝えることが重要です。たとえば、次のような指示を組み合わせます。
- 「20〜40代の女性向け、ナチュラルコスメブランド」のように、想定顧客を明記する
- 「落ち着いた」「信頼感」「やさしい印象」など、与えたいイメージを3〜4語で指定する
- 「リンクはボタンより少し暗い色に」など、要素ごとの差も一言添える
フォントを調整したいときは、書体名を知らなくても「どんな読み心地にしたいか」を言葉で説明します。そのうえでAIに候補を提案してもらい、不要なデザイン崩れを避けるために「見出し」「本文」「ボタン」ごとに役割を分けて伝えます。例えば、次のようなプロンプトが使えます。
- 見出し:少し太めで、スマホでも読みやすい英字+日本語の組み合わせ
- 本文:長文でも読み疲れしない、シンプルなサンセリフ体
- ボタン:見出しより控えめだが、一覧ページでも埋もれない太さ
| 目的 | プロンプト例 |
|---|---|
| 落ち着いた配色 | 「全体を白と淡いベージュ基調にして、アクセントカラーにくすみグリーンを1色だけ使ってください。セール用の赤は暗めで、目立つが派手になりすぎないトーンにしてください。」 |
| 読みやすいフォント | 「ブログ記事と商品説明が読みやすくなるように、日本語が崩れないシンプルなフォントを選んでください。見出しはやや太く、本文は細めで行間を広めに設定してください。」 |
| 一貫性のあるデザイン | 「ブランドカラーの#3A7C6Bをベースに、背景・ボタン・リンクを同系色の明るさ違いで3パターン作ってください。フォントは全ページで同じ系統を使い、見出し・本文・ボタンのサイズと太さだけ変えて統一感を保ってください。」 |
トップページや商品ページのレイアウトを見直すときのポイント
まず確認したいのは、「どこで離脱されているか」と「どこで迷われているか」です。AIにプロンプトを書く前に、Shopifyのアナリティクスやヒートマップツールをざっと見て、ユーザーの動線をイメージしておきます。そのうえで、テキストプロンプトには「ファーストビューで商品価値が一目で伝わるように」「カートボタンまでを視線が自然に追えるように」といった、具体的な状況を言語化して入力します。装飾や色よりも、視線の流れと情報量のバランスを優先して指示することで、AIが生成するレイアウトも実務に即したものになりやすくなります。
- ファーストビュー:何を売っているか、誰向けかが3秒で伝わる構成にする
- 商品一覧:画像・価格・商品名・主要な訴求1行に情報を絞る
- 商品詳細:写真 → 信頼要素 → 選択項目 → 購入ボタンの順番を意識
- 共通要素:ヘッダーやバナーは「小さく・シンプルに」を基本にする
商品ページでは、情報の「見せ方」をプロンプトで細かく指定すると、AIによる自動配置でも使いやすいレイアウトになりやすくなります。たとえば、「スマホで読みやすい2カラム風の構成」「特徴はアイコン付きの箇条書き」「よくある質問はアコーディオン形式で折りたたみ」といった具合に、構造を文章で伝えます。下記のようなテーブル形式で、必要なブロックと役割を整理しておき、その内容をそのままプロンプトに盛り込むと、レイアウト変更を繰り返すときも迷いにくくなります。
| ブロック | 目的 | プロンプト例 |
|---|---|---|
| 商品画像エリア | 商品を直感的に理解 | 「画像は大きく、サムネイルは下に横並びで」 |
| 商品情報エリア | 価格とメリットを簡潔に提示 | 「価格・在庫・主なメリットを1画面に収める」 |
| レビュー・FAQ | 不安を解消 | 「レビューとFAQは折りたたみ式で下部に配置」 |
画像やバナーのスタイルを統一するためのAI活用方法
Shopifyでは、コレクション画像やトップバナー、ブログのアイキャッチなど、パーツごとにバラバラな雰囲気になりがちです。AI画像生成ツールを使うときは、まず「お店の世界観」を言語化しておくと、テイストを揃えやすくなります。たとえば、プロンプトの末尾に共通ルールとして「white background, soft natural light, minimal, pastel color palette, for online store banner」と必ず付け足すと、各ページでデザインが大きくズレにくくなります。あとは、シーンだけを変えて同じ書式でプロンプトを使い回すことで、コレクション別のバナーも比較的安定したスタイルで量産できます。
- 背景色・質感:白背景/テクスチャ背景などを必ず明示する
- 構図:被写体の位置(中央/左右)、余白の多さを固定する
- 色味:使用する色を2〜3色に絞り、プロンプトに毎回指定する
- 用途:「Shopify hero banner」「collection thumbnail」など目的を添える
- テキスト有無:画像内に文字を入れず、Shopify側のテキストで統一
| 用途 | プロンプトのコツ | Shopify側の設定例 |
|---|---|---|
| トップバナー | wide, plenty of negative space on the right, soft light | スライドショーで「テキスト位置:右」を固定 |
| コレクション画像 | square format, product close-up, same background color | 同じアスペクト比で登録し、一覧レイアウトを統一 |
| ブログ用サムネ | simple illustration style, consistent icon color | 記事テンプレートでサムネサイズを共通化 |
変更内容をテストしながら段階的に反映する運用手順
AIで生成したデザイン変更は、一度に全ページへ反映せず、テスト用のテーマや限定的なトラフィックを使って段階的に確認します。まずは現在の公開テーマを複製し、その複製テーマでAIプロンプトによるカスタマイズを行います。公開前に、PC・スマホ両方で表示や操作感をチェックし、想定外のレイアウト崩れや文字の読みにくさがないかを確認します。この段階では、売上への影響を避けるため、あくまで「テスト用」として扱うことが重要です。
- 複製テーマでの検証:公開テーマをコピーしてからAI編集を実施
- 主要ページを優先確認:トップ、商品詳細、カート、コレクションページを重点的にチェック
- デバイス別チェック:PC・スマホ・タブレットでの見え方や操作性を確認
- ブランド基準との整合:フォント、カラー、余白がブランドガイドラインとずれていないかを確認
ある程度見た目の問題が解消できたら、テストテーマを一時的に公開するか、ShopifyのプレビューURLを社内・関係者に共有し、運用目線のフィードバックを集めます。その際、以下のような簡単なチェックリストを用意しておくと、非エンジニアのメンバーでも評価しやすくなります。
| 確認項目 | ポイント | ステータス |
|---|---|---|
| 商品が探しやすいか | カテゴリーや検索が直感的か | OK / 要調整 |
| テキストの読みやすさ | フォントサイズ・行間・色のコントラスト | OK / 要調整 |
| 購入導線 | 「カートに追加」「購入」ボタンの位置と見つけやすさ | OK / 要調整 |
| ページ表示速度 | 体感的に遅くなっていないか | OK / 要調整 |
最終的な公開時も、一気に大規模な変更を行うより、小さな単位で切り替えていく方が運用上は安全です。たとえば、先に「ボタンの色」と「フォント」だけをAIで変更し、コンバージョン率や離脱率の変化を数日単位で確認してから、「セクション構成」や「バナーのデザイン」など大きな変更に進むイメージです。変更ごとに簡易的なメモを残しておくと、どのAIプロンプトが成果に結びついたかを後から振り返りやすくなり、次のデザイン改善サイクルにも活かせます。
In Summary
本記事では、テキストプロンプトだけでテーマの見た目を調整できる「AIによるテーマカスタマイズ」について、概要と活用イメージをお伝えしました。
これまで、デザインの変更にはコード編集や専門知識が必要になる場面も多くありましたが、AIを活用することで、「こうしたい」というイメージを言葉で伝えるだけでデザイン案を得られるようになりつつあります。もちろん、現時点では人の確認や微調整が欠かせず、すべてを自動化できるわけではありません。しかし、日々の細かな変更や、デザインのたたき台づくりなど、運用の負担を軽減できる可能性があります。
今後、AIの精度向上や機能追加により、より自然な指示でのカスタマイズや、ブランドガイドラインとの整合性チェックなど、実務に役立つ機能が増えていくことが予想されます。まずは、小さな範囲から試しながら、自店舗の運用フローの中でどのように組み込めるかを検討していくのが現実的です。
デザインや開発の専門家の知見は今後も重要であり、AIはそれを補完するための新しい選択肢のひとつです。自社の体制やスキルセットに合わせて、AIによるテーマカスタマイズを「どの範囲まで任せるか」「どこから人が関与するか」を整理しながら、継続的な改善に役立てていくことが求められます。

