オンラインショップを運営するうえで、「メールがちゃんと届くこと」は、売上やお客さまとの信頼関係に直結します。ところが近年、なりすましメールやフィッシング詐欺が急増し、「本物のショップからのメールかどうか」を受信側が厳しくチェックする流れが加速しています。
こうした背景から、2026年には「DMARC(ディーマーク)」というドメイン認証の設定が、事実上の必須要件になると見込まれています。特に、Shopifyを利用している事業者にとっては、「ショップの独自ドメインで送るメールがきちんと認証されているか」が、今後ますます重要になります。
本記事では、技術的な専門用語をできるだけ避けながら、
– DMARCとは何か、なぜ必要なのか
– 2026年以降、設定していないと何が起こりうるのか
- Shopify運営者として、どのように準備を進めればよいか
を、順を追ってわかりやすく解説します。メール担当者がいない小規模ショップや、ITに詳しくない方でも、自店舗のメールセキュリティを見直すきっかけとしてご活用ください。
目次
- DMARCとは何か Shopify店舗運営に関係する理由
- 2026年にDMARC対応が必須となる背景とメール配信への影響
- なりすましメールの仕組みとブランド信頼性への具体的なリスク
- SPFとDKIMとDMARCの違いを押さえる 基本概念のやさしい整理
- Shopifyで使う独自ドメインの現状確認とDMARC設定前のチェックポイント
- 実務で使えるDMARCレコード設定例と推奨ポリシーの段階的な進め方
- メール到達率を維持するためのテスト方法とエラー発生時の対処の流れ
- 外部パートナーやスタッフと連携してDMARC運用を継続するための管理ルール
- In summary
DMARCとは何か Shopify店舗運営に関係する理由
メールの送信元を「なりすまし」から守るための仕組みが、DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting and Conformance)です。ざっくり言うと、「このドメインから送られるメールは、このルールで認証し、守ってください」とGmailやYahoo!などの受信側に指示する設定です。具体的には、すでに多くの方が聞いたことのあるSPFとDKIMという認証結果をまとめてチェックし、「合格しなかったメールはどう扱うか」をポリシーとして宣言します。これにより、第三者があなたのドメインを勝手に使ってスパムや詐欺メールを送るリスクを大きく下げることができます。
Shopify店舗運営において、この仕組みが重要になるのは、日々のコミュニケーションがほぼすべて「メール経由」で行われているからです。例えば、
- 注文確認メール(Shopifyの自動通知)
- 発送完了メール・追跡情報のお知らせ
- カゴ落ち(放棄チェックアウト)フォロー
- メルマガ・キャンペーン配信(Shopify Emailや外部メルマガツール)
- 問い合わせ対応の返信(独自ドメインのサポートアドレス)
といったメールが、DMARCの要件を満たしていない場合、Gmailなどで迷惑メールフォルダに入りやすくなったり、最悪届かなかったりする可能性が高まります。特に2026年以降は大手メールプロバイダの基準がさらに厳しくなることが想定され、これまで「なんとなく届いていた」メールが急に届かなくなるリスクを避けるためにも、DMARC対応は無視できません。
| 項目 | Shopify運営への影響 |
|---|---|
| 到達率 | クーポンや発送案内が届かず、売上や顧客満足度に影響 |
| ブランド信頼性 | なりすましメールでドメインの信用が下がるリスクを軽減 |
| トラブル対応コスト | 「メールが届かない」問い合わせを減らし、サポート負荷を抑える |
2026年にDMARC対応が必須となる背景とメール配信への影響
2026年に向けてDMARCが事実上の「必須要件」とみなされる背景には、主要メールプロバイダ(Gmail、Yahoo!、Outlook など)が、なりすましメールやフィッシング対策を一段と強化している流れがあります。これまでは、SPFやDKIMが設定されていなくても、ある程度メールは届いていましたが、今後は「認証されていない送信ドメイン=危険度が高い」と自動的に判断されやすくなります。特にshopifyで「info@自社ドメイン」などを使ってストア通知やメルマガを送っている場合、DMARCがないと、正規のメールでも迷惑メールフォルダ行き、もしくは配信拒否となるリスクが大きくなります。
メール配信への具体的な影響としては、DMARC対応の有無が到達率・ブランド信頼性・運用負荷に直結します。DMARCに対応しないまま2026年を迎えると、次のような事象が起こりやすくなります。
- 注文確認メールや発送通知が届きにくくなり、問い合わせやクレームが増える
- クーポン配布等のプロモーションメールが迷惑メール扱いとなり、キャンペーン効果が下がる
- なりすましメールが検知されず、自社ドメイン全体の信用が低下する
| 項目 | DMARC未対応のリスク | DMARC対応後の状態 |
|---|---|---|
| 注文関連メール | 配信エラー・迷惑メール行きが増える | 主要プロバイダでの到達率が安定 |
| ブランドイメージ | なりすましにより信頼低下の可能性 | 正規送信元が明確になり信頼を維持 |
| 運用負荷 | 個別の配信トラブル対応が増える | レポートで問題を把握し計画的に対処 |
なりすましメールの仕組みとブランド信頼性への具体的なリスク
なりすましメールは、表面上は「自社からの案内」や「ショップの自動通知」に見せかけながら、実際には攻撃者が送信しているメールです。送信元の表示名やメールアドレスを本物そっくりに装うことで、購入者は違和感を持たないままリンクをクリックしたり、パスワードやクレジットカード情報を入力してしまいます。とくに Shopify のようにオンライン上だけで完結するストアでは、「メール=公式な連絡手段」と捉えられがちで、1通の偽メールがそのまま被害につながるリスクが高いのが実情です。
このようなメールが横行すると、被害者は「騙された」というよりも「このショップに騙された」と認識しがちです。たとえ自社が直接送っていない場合でも、以下のような形でブランドへの信頼低下が起きます。
- 問い合わせの増加:「このメールは本物ですか?」という確認が増え、日々の運営対応が圧迫される
- クレーム・返金要求:なりすましによる不正決済を「ショップ側の責任」と誤解される
- レビューへの悪影響:SNSや投稿レビューで「怪しいメールが来るショップ」として拡散される
- 将来の購入機会の喪失:「メールが怖いから、もう利用しない」という静かな離脱
| リスクの種類 | 具体的な影響 |
|---|---|
| 開封率・クリック率の低下 | 本物のキャンペーンや新商品案内のメールまで「怪しい」と判断され、メール全体の成果が落ちる |
| ブランドイメージの毀損 | 「セキュリティに甘いショップ」という印象が残り、他店との比較で不利になる |
| 長期的な売上への影響 | 一度不安を感じた顧客がリピーターにならず、LTV(顧客生涯価値)が下がる |
SPFとDKIMとDMARCの違いを押さえる 基本概念のやさしい整理
まず押さえたいのは、どれも「なりすましメールを減らすための仕組み」だということです。そのうえで役割が少しずつ違います。SPFは「どのサーバーから送ったメールなら正当か」をDNSに登録しておく仕組みです。たとえば「このドメインから送るのは、Shopifyメールと公式メルマガサービスのサーバーだけ」と指定できます。一方でDKIMは、メール本文に「改ざんされていないことを証明する電子署名」を付ける仕組みです。届いた側はその署名を検証することで、「途中で内容を書き換えられていないか」を確認できます。
これらをまとめて運用ポリシーとして宣言するのがDMARCです。DMARCは、SPFやDKIMの結果をどう扱うかを、受信側に指示する「ルールブック」のような役割を持ちます。たとえば「SPFかDKIMのどちらかが合格しなかったメールは隔離する」「両方ダメなら受信拒否する」といった方針を細かく決められます。また、判定結果のレポートを送る仕組みもあり、どのサービスやツールが自社ドメインを使ってメールを送っているのかを把握するのに役立ちます。
Shopify運営でよく出てくる関係性を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 役割 | イメージ |
|---|---|---|
| SPF | 送信に使ってよいサーバーのリスト | 「この人からの発送なら本物」リスト |
| DKIM | メール本文が改ざんされていないかの署名 | 梱包に押された公式スタンプ |
| DMARC | SPF・DKIM結果にもとづく運用ルールとレポート | 不審な荷物の扱い方マニュアル |
- SPF・DKIMは「技術的なチェック方法」
- DMARCは「チェック結果にもとづく方針と見える化」
- Shopifyや外部メールツールを組み合わせるほど、DMARCの重要度が増す
Shopifyで使う独自ドメインの現状確認とDMARC設定前のチェックポイント
まずは、いま自分のショップがどのドメインをメール送信に使っているのかを整理します。Shopify管理画面の「設定 > ドメイン」で、「接続済みの独自ドメイン」と「送信元メールアドレス」を確認し、gmailやYahooなどのフリーメールを使っていないかチェックしましょう。フリーメールを送信元にしている場合、2026年以降は配信エラーや迷惑メール判定が増える可能性が高く、DMARC設定に対応した独自ドメインの利用が実質必須になります。
- 独自ドメインの管理元(レジストラ)を把握しているか
- Shopifyに接続しているドメインに「接続済み」「プライマリ」と表示されているか
- 送信元メールに「@自社ドメイン」のアドレスを利用しているか
- DNSの編集画面(TXT・CNAME・MXレコード)がどこから操作できるかを把握しているか
| 項目 | 確認方法 | DMARC前のチェック |
|---|---|---|
| 送信元メール | Shopify「通知」設定 | 独自ドメインかどうかを確認 |
| ドメイン状態 | 「設定 > ドメイン」 | SSL有効・接続済みになっているか |
| DNS編集権限 | ドメイン管理会社のマイページ | TXTレコードを自分で追加できるか |
DMARC設定の前に、すでにSPFやDKIMがどの程度整っているかを把握しておくと後のトラブルを減らせます。非技術者でも、以下を押さえておけば十分です。
- DNSレコード一覧に「TXT」「SPF」「DKIM」といった記述が存在するか
- 外部メールサービス(例:Google Workspace、Outlookなど)を併用している場合、どのサービスからメールを送っているか
- 注文確認メールとメルマガが同じ送信ドメインか、別サービスを使っているか
この段階で「どのドメインで、どのサービスから、どの種類のメールを送っているか」が整理できていないと、DMARCポリシーを強めたときに一部のメールだけ届かなくなるケースが起こりやすくなります。まずは紙やスプレッドシートに、
- 利用ドメイン(例:example.com)
- 用途(注文通知・メルマガ・社内メールなど)
- 送信元サービス(Shopify、メール配信ツール、Google Workspaceなど)
を書き出しておくことをおすすめします。これが、DMARCの設定値を決める前の「現状把握シート」として、その後の作業の土台になります。
実務で使えるDMARCレコード設定例と推奨ポリシーの段階的な進め方
Shopify運用でよく使うのは、「まずは監視だけ → 部分的に拒否 → 全面的に拒否」の3段階です。DNSのTXTレコードに記載するDMARC例としては、開始時は次のような設定が扱いやすいです。
- 監視のみ(スタート時)
v=DMARC1; p=none; rua=mailto:dmarc-report@example.com; fo=1; pct=100 - テスト期間の一部拒否
v=DMARC1; p=quarantine; rua=mailto:dmarc-report@example.com; fo=1; pct=25 - 本番運用(完全保護)
v=DMARC1; p=reject; rua=mailto:dmarc-report@example.com; fo=1; pct=100
| フェーズ | 目的 | 推奨ポリシー | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| フェーズ1 | 現状把握・誤検知の洗い出し | p=none | 2〜4週間 |
| フェーズ2 | テスト的なブロック開始 | p=quarantine; pct=10〜50 | 4〜8週間 |
| フェーズ3 | なりすましの本格的な遮断 | p=reject; pct=100 | 恒常運用 |
実務では、Shopify管理画面の「送信元メールアドレス」と、Shopifyメールアプリや外部配信ツール(Klaviyo、Mailchimp など)の差出人ドメインが、SPF・DKIMともに正しく設定されているかを確認してからDMARCを強めていきます。レポート用のアドレス(rua)は、通常の問い合わせとは分けて専用アドレスを用意し、次のような観点で定期的にチェックすると運用しやすくなります。
- shopify・外部メールサービス以外から送信されているメールがないか
- 正規のメールが「失敗」と判定されていないか
- 特定の国やIPからの不審な大量送信がないか
メール到達率を維持するためのテスト方法とエラー発生時の対処の流れ
DMARCを設定したら、まずは日常のメール運用に影響がないかを確認します。Shopifyの注文通知やカゴ落ちメール、ニュースレターなど、実際によく使うシナリオごとに送信テストを行いましょう。自分宛て、Gmail、Yahoo!メール、企業アドレスなど、複数の宛先に送って開封できるかを確認します。あわせて、メールのヘッダー情報を確認できる人が社内にいれば、DMARC・SPF・DKIMが「pass」になっているかを確認してもらうと安心です。
- Gmail・Yahoo!・Outlookなど主要サービス宛にテスト送信
- 件名・本文に「テストDMARC」「ショップ名」などを入れて見分けやすくする
- 届かない場合は、迷惑メールフォルダも必ずチェック
- メール配信アプリ側の送信ドメイン設定(Fromアドレス)が認証済みか確認
エラーや未達が発生した場合は、原因を切り分けながら対処します。まずは「どの配信元が問題か」を確認し、Shopify標準メールか、外部メール配信アプリか、あるいはスタッフが使うGmailなどなのかを整理します。そのうえで、影響を受けているメールの種類と送信ドメインを一覧化すると、漏れなく対応しやすくなります。
| 状況 | よくある原因 | 初期対応 |
|---|---|---|
| 特定のアプリからのメールだけ届かない | アプリ側の送信ドメインが未認証 | アプリ管理画面で独自ドメイン認証を再設定 |
| 特定の受信サービスでだけ届かない | DMARCポリシーが厳しすぎる | 一時的に「p=none」に戻しレポートを確認 |
| 迷惑メールフォルダに入る | 本文・件名と送信頻度の評価が低い | 配信頻度・タイトルを見直し、反応率を改善 |
実際の対処の流れとしては、まず①受信できているか、次に②迷惑メール判定されていないか、最後に③DMARCレポートの内容の順で確認します。レポートが読めない場合は、可視化ツールを使うか、制作会社やシステム担当者に共有して分析を依頼すると効率的です。原因が送信ドメイン設定にあると分かった場合は、DNSレコード(SPF・DKIM・DMARC)を修正し、再度テスト送信を行う。この「テスト → 確認 → 修正 → 再テスト」を小さく繰り返すことで、2026年以降も安定したメール到達率を維持しやすくなります。
外部パートナーやスタッフと連携してDMARC運用を継続するための管理ルール
社内だけで完結しないメール運用では、制作会社や広告代理店、外部CSチームなど、多くの関係者がメール送信に関わります。DMARCを安定して運用し続けるためには、「誰が、どのドメインで、どのツールから送るのか」をあいまいにしないことが重要です。まずは Shopify の通知メール、メルマガ配信ツール、CSツール(zendesk、Klaviyo など)を洗い出し、外部パートナーごとに利用している送信元ドメインと認証状況を棚卸ししておきます。この棚卸しを、新しいツール導入時のチェックリストとしてルール化しておくと、後からトラブルが起きにくくなります。
- 送信元ドメインの勝手な新設禁止(新しいサブドメインを使う場合は必ず申請)
- 外部パートナーへのガイドライン共有(SPF/DKIM の設定要件を簡易資料にして渡す)
- Shopify スタッフ権限の整理(メール関連アプリをインストールできる人を限定)
- 担当変更時の引き継ぎシート(利用中のメールツールとドメインを一覧化)
| 誰が | どのメール | 確認すること |
|---|---|---|
| 制作会社 | キャンペーン告知 | 既存ドメイン利用か、DKIM設定済みか |
| CSチーム | 問い合わせ返信 | サポート用アドレスがDMARC対応済みか |
| マーケ担当 | ステップメール | 新規ツール導入時にIT担当へ事前相談したか |
また、運用を継続するうえでは、「誰がどこまで見るか」を決めたうえでレポートのチェック体制を作ることが欠かせません。DMARCの専門的なログ解析は外部のITパートナーに任せつつ、Shopify側の運用チームは「配信停止になっていないか」「通常と比べて拒否率が急に増えていないか」といったシンプルな観点で月次確認を行うだけでも十分効果があります。最小限のルールでもよいので、月1回の報告ミーティングや、Slack・メールでの簡単な共有フォーマットを用意し、「異常が起きたら誰に連絡するか」を明確にしておくことで、担当者が変わってもDMARC運用を途切れさせずに継続できます。
In Summary
2026年の必須化に向けて、DMARC を含むドメイン認証は「専門的なセキュリティ対策」というよりも、「オンライン店舗を運営するうえでの基本的なインフラ」に近い位置づけになりつつあります。
本記事で見てきたように、
- 「なぜ必要なのか」(なりすまし・迷惑メール対策、到達率の向上)
- 「どの仕組みが関係するのか」(SPF・DKIM・DMARC の役割)
- 「いつまでに、どの程度対応が必要なのか」(2026年までの準備)
といった全体像を押さえておくことで、技術用語が多い領域でも、運営者として取るべき方針は判断しやすくなります。
今すぐすべてを自分で設定できなくても問題ありませんが、
- 自社ドメインで配信しているメールの種類を洗い出す
- 現在の認証状況(SPF・DKIM・DMARC)を確認する
- 必要に応じて、制作会社・システム担当・メール配信サービスのサポート窓口に相談する
といった基本的なステップから着手しておくことで、2026年の必須化のタイミングでも、慌てずに対応できます。
Shopify ストアの運営では、集客や商品企画と比べると、メールの技術的な設定は後回しになりがちです。しかし、顧客との重要な連絡手段であるメールの「信頼性」を守ることは、長期的なブランド運営に直結します。
本記事をきっかけに、自社ドメインのメール環境を一度見直し、計画的に DMARC 対応を進めていく際の参考としていただければ幸いです。


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