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Shopify Plusで実現する卸売DX完全ガイド

ECの重要性が高まるなか、卸売ビジネスにも「デジタル化」「オンライン対応」がこれまで以上に求められるようになっています。これまで電話やFAX、メール、エクセルで行っていた受発注管理や、得意先ごとの価格・条件設定、在庫確認などを、いかに効率的かつ正確に運用できるかが、業務負荷と収益性を大きく左右します。

一方で、「btob専用のシステムは導入・運用コストが高い」「自社の商習慣に合わせた設定が難しい」「既存のShopifyストアとどう分けて運用すればよいかわからない」といった不安や疑問をお持ちの方も少なくありません。

本記事では、こうした課題を踏まえながら、Shopifyの上位プランである「Shopify ⁣Plus」を活用して卸売DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するためのポイントを、非エンジニアのご担当者の方にもわかりやすく整理して解説します。Shopify PlusのB2B機能の概要から、典型的な卸売の業務フローへの当てはめ方、実運用で押さえるべき注意点まで、「何から手をつければよいか」を具体的にイメージできることを目的としています。

日々の運営実務に携わるショップ担当者・卸売部門のご担当者の視点から、段階的に理解を深めていただける構成としていますので、自社の卸売DXを検討する際の参考としてお役立てください。

目次

Shopify Plusで始める卸売DXの全体像と導入の進め方

卸売のデジタル化を進める際には、まず「どの業務をオンラインに載せ替えるか」を整理することが重要です。Shopify Plusでは、BtoCで利用しているストア基盤を活かしながら、法人顧客専用の購入体験を構築できます。具体的には、顧客ごとに異なる掛け率やロール別の権限設定を行い、担当営業の工数を減らしながら、取引先が自分のタイミングで発注できる環境を整えます。これにより、電話・FAX・メールに分散していた受注をひとつの画面に集約し、在庫・受注・入金管理を一元的に把握できるようになります。

  • Step1:現状業務の見える化 -⁣ 受注〜出荷までの流れと例外パターンを洗い出す
  • Step2:要件整理 – ログイン制御、価格ルール、決済方法、出荷条件を明文化する
  • Step3:Shopify Plusでの構成設計 – メインストア/卸専用ストアの切り分けやアプリ選定を行う
  • Step4:限定公開でのテスト運用 – 既存の一部取引先から順番に切り替えてフィードバックを得る
  • Step5:社内・取引先向けマニュアル整備 – 受注登録の手順や問い合わせフローを標準化する
導入フェーズ 主なゴール 関わる担当者
準備・設計 要件定義と運用ルールの確定 EC担当・営業・在庫管理
構築・設定 卸専用ストアと価格ルールの構築 EC担当・制作会社
テスト運用 一部取引先での試験発注 EC担当・営業
本番展開 全取引先の切り替えと教育 EC担当・カスタマーサポート

導入を円滑に進めるポイントは、「システムの作り込み」よりも「運用の設計」に時間をかけることです。非対面の発注プロセスになることで、これまで営業が口頭で補っていた条件や例外対応を、どこまで画面やルールで表現するかを先に決めておく必要があります。そのうえで、Shopify Plusの機能やアプリを組み合わせて、できる限り標準機能に寄せた構成を選ぶと、将来的な拡張や組織変更にも対応しやすくなります。結果として、卸売DXが単発の「システム導入」で終わらず、継続的な業務改善の土台として機能するようになります。

卸売ビジネスに特化したShopify Plusの主な機能と活用イメージ

卸売ビジネスに特化したShopify ​Plusの主な機能と活用イメージ

Shopify Plusでは、B2B向けに必要な価格や支払い条件を、店舗ごとに無理なく整理できます。例えば卸先ごとに「取引条件」を定義し、ログイン後の会員にだけ卸価格を表示したり、最小注文数やケース単位での注文を必須にすることも可能です。これにより、電話やFAXで個別対応していた条件提示を、オンライン上で標準化しつつ、次のような形で分かりやすく運用できます。

  • 卸先ごとの専用価格表:A社とB社で単価や掛け率を変えて表示
  • ロール別の表示制御:一般顧客には小売価格、卸会員には卸価格のみを表示
  • 最低注文数の自動チェック:条件を満たさない注文はカートで警告
卸先区分 表示価格 最低注文数 決済条件
小規模店舗 定価の80% 各SKU 5点〜 クレジット即時
チェーン本部 定価の70% 合計100点〜 月末締め翌月末払い
海外ディストリビューター USD建て個別見積 ケース単位 銀行送金・前払い

また、自社の運用フローに合わせて管理画面や承認プロセスを組み立てられるのも特徴です。Shopify Flowなどの自動化機能を使えば、特定の条件を満たす受注だけ営業担当にメール通知したり、与信枠を超える注文は一時保留にして承認待ちステータスに切り替えるといった処理もノーコードで実装できます。さらに、B2B専用のフロントページを用意し、卸会員向けの資料ダウンロードやキャンペーン情報をまとめて掲載することで、担当者への問い合わせ件数を減らしつつ、取引先が「自分で調べて、自分で発注できる」状態を整えやすくなります。

取引先ごとの価格設定と与信管理を組み合わせた受注フローの設計

取引先ごとの価格設定と与信管理を組み合わせた受注フローの設計

卸売では、「誰に・いくらで売るか」と「どこまで売ってよいか(与信枠)」を別々に管理してしまうと、現場オペレーションが複雑になります。Shopify Plusでは、顧客グループと価格ルール、支払条件や与信枠を一体で設計することで、受注入力時に自動判定できるフローを構築できます。例えば、顧客タグやB2B機能の「会社」情報を使って、あらかじめ取引条件を紐づけておくことで、担当者はカート画面やドラフト受注作成時に、標準価格から自動的に取引先専用価格が反映された状態からスタートできます。

  • 顧客ごとの価格ルール:「標準掛率」「商品別/コレクション別の特別価格」「キャンペーン時の期間限定価格」などを、タグや会社プロファイルにひもづけて運用
  • 与信条件:「与信枠(金額)」「支払サイト(例:月末締め翌月末払い)」「支払方法(請求書・銀行振込など)」をセットで定義
  • フロー連携:Shopify Flowや外部与信ツールと連動し、受注時に「枠内/枠超過」を自動判定し、承認フローへ回すか即時確定するかを分岐
区分 設定例 受注時の動き
標準取引先 掛率95%・与信枠50万円 枠内は自動確定、枠超過は承認待ちへ
重点取引先 商品別特価・与信枠200万円 原則自動確定、一定金額以上のみ2段階承認
新規取引先 前払い・与信枠0円 決済完了後に在庫引当、未払いは自動キャンセル候補

BtoB向けオンラインカタログと発注体験のわかりやすい作り方

BtoB向けオンラインカタログと発注体験のわかりやすい作り方

卸売向けのオンラインカタログは、「営業資料」と「発注画面」を一体化させるイメージで構成すると運用が安定します。単なる商品一覧ではなく、バイヤーが仕入れ判断に必要とする情報を、画面を移動せずに確認できるように設計します。例えば、商品ページでは画像・サイズ・素材・原産国に加え、卸価格・上代・ロット・納期目安をセットで表示し、タブやアコーディオンで「販促ポイント」「売れ筋店舗事例」などを整理します。また、コレクション(カテゴリ)ページでは、シーズン別・用途別・価格帯別など、バイヤーの探し方に合わせた複数の切り口で絞り込みができると、紙カタログからの移行でも違和感が少なくなります。

  • サムネイルは「一覧で選びやすい情報量」に抑える(色数・主要サイズ・最低ロット程度)
  • 商品ページ上部に「仕入れ判断に必要な要素」を凝縮(価格・在庫・納期・条件)
  • BtoB専用ラベル(新商品・在庫僅少・再入荷予定あり など)で営業の補足説明を代替
情報項目 表示位置 ねらい
卸価格・上代 商品名のすぐ下 価格確認の手間を最小化
ロット・発注単位 数量入力欄の近く 誤発注の防止
在庫数・納期 カートボタン付近 納期調整の判断材料に

発注体験の設計では、バイヤーが「カタログを見ながら一気に入力する」ケースと、「品番が決まっていて素早く打ち込みたい」ケースの両方を想定します。前者には、コレクション一覧や商品詳細ページに数量入力フィールドとカートボタンを常設し、ページ遷移を最小限に抑えます。後者に対しては、品番検索・CSVアップロード・ドラフト注文機能を組み合わせると、従来のFAXやメール発注に近い感覚で利用できます。また、BtoBでは「カゴに入れて終わり」ではなく、見積り・確認・社内承認といったプロセスが挟まれるため、ドラフト注文の共有リンクや、ステータス別の注文一覧をわかりやすく用意しておくとスムーズです。

  • カート画面で1ページ完結(値引き、配送条件、支払条件をまとめて確認)
  • 注文履歴からの「前回と同じ内容で発注」ボタンでリピート発注を簡略化
  • CSVテンプレートのサンプル配布と、アップロード画面でのエラーメッセージの日本語化

最後に、BtoBならではの条件(得意先別価格・購入制限・決済条件)を、画面上で自然に理解してもらえるようにします。ログイン後には、顧客タグや価格ルールに応じてその取引先専用の価格・ミニマム・決済方法だけを表示し、「自分に関係のない情報が見えない」状態を作ると問い合わせ削減につながります。注意事項や取引条件は別ページにまとめるだけでなく、カート・チェックアウト直前に要点を再掲し、必要に応じてテーブル形式で整理しておくと、社内での説明資料としても使われやすくなります。

取引先タイプ 表示する情報の例 非表示にする情報の例
代理店 代理店価格、販促キット 一般小売店向け条件
小売店 通常卸価格、発注ロット 他社専用キャンペーン
テストアカウント ダミー価格、デモ在庫 実運用の決済方法

既存基幹システムとの連携パターンと運用負荷を減らすポイント

既存基幹システムとの連携パターンと運用負荷を減らすポイント

卸売向けのShopify Plus活用では、既存の販売管理・在庫・会計などの基幹システムと「どの程度つなぐか」を最初に整理することが重要です。大きく分けると、CSVインポート/エクスポート中心のゆるやかな連携iPaaSやミドルウェアを介したAPI連携フルスクラッチの専用連携といったパターンがあります。現場オペレーションに慣れた担当者が運用できるかどうかを軸に、最初はシンプルな方法から始め、取引量や拠点数の増加に合わせて段階的に自動化レベルを上げると、無理のないDX推進につながります。

  • CSV連携: ⁢ 毎日または決まったタイミングで受注データ・在庫データを手動で取り込み/出力する方式。導入コストが低く、テストもしやすい。
  • iPaaS/ミドルウェア連携: EAIツールやクラウド連携サービスを使い、Shopifyと基幹システムの間をノーコード/ローコードでつなぐ方式。運用ルールを画面から変更しやすい。
  • 専用API連携: 自社仕様に合わせて完全自動化する方式。要件が固まった段階で検討し、保守担当の体制確保が前提。
連携方式 運用負荷 向いているケース
CSV連携 中〜高(手作業あり) 取引先が限定的で、まず仕組みを試したい場合
iPaaS連携 中(例外対応は人が確認) 受注量が増え始め、ミス削減と自動化を両立したい場合
専用API連携 低〜中(開発・保守の体制前提) 卸先・商品数が多く、完全自動化でスピードを重視したい場合

運用負荷を抑えるポイントは、「人が判断すべき例外」と「自動化すべき定型処理」をはっきり分けることです。例えば、通常の受注は自動で基幹へ連携しつつ、「与信NG」「在庫不足」「納期指定が特殊」などだけを管理画面のタスクとして残す設計にすると、現場が追うべき案件が明確になります。また、卸特有の単価・掛率・締め請求などは、できるだけShopify Plus側の価格ルールやB2B機能で表現し、カスタマイズや個別マスタ管理を最小限に抑えると、システム担当に依存しない日々の運用が実現しやすくなります。

営業担当とECチャネルを連携させる社内オペレーション設計

営業担当とECチャネルを連携させる社内オペレーション設計

卸売DXを進めるうえで重要になるのが、「営業担当の動き」と「EC上のデータ」を分断させないことです。営業が日々収集している情報を、Shopify Plus上の顧客管理や価格ルールに素早く反映できるオペレーションを用意しておくと、個別交渉と標準化されたオンライン受注が矛盾しにくくなります。たとえば、営業ヒアリングの結果を元に、担当者が自ら「ドラフト注文」を起票し、顧客側にはマイページからの確認・支払のみを依頼するフローを標準化すると、従来のFAX・メールの見積運用をスムーズに置き換えられます。

社内オペレーションを設計する際は、部門ごとの役割と権限を明確にし、Shopify Plus上で何を誰が操作するのかを具体的に定義します。

  • 営業担当:取引条件の交渉、ドラフト注文の作成、卸先アカウントの申請受付
  • EC運用チーム:価格ルール・ディスカウントの設定、B2B顧客タグ付け、承認フロー管理
  • バックオフィス:請求書発行、入金消込、与信管理との突合せ

上記を土台に、以下のようなテンプレート化されたワークフロー図やチェックリストを共有しておくと、属人化を防ぎながら営業とECを一体運用できます。

ステップ 担当 Shopify Plus上の作業
新規卸先の登録 営業 企業情報ヒアリング、顧客レコード作成依頼
アカウント承認 EC運用 顧客タグ付与、価格表・支払条件の紐付け
初回注文の作成 営業 ドラフト注文作成、メールでリンク送付
出荷・請求処理 バックオフィス 受注ステータス更新、請求書出力・入金登録

運用開始後は、営業が現場で感じる「やりづらさ」を定期的に吸い上げ、ECチャネルの運用ルールに反映していくことが欠かせません。たとえば、キャンペーンや数量割引の条件を、店舗ごとの商習慣に合わせて「例外ルール」としてタグ管理する、在庫が逼迫しているSKUを営業向けに一覧化して共有するなど、現場の判断とShopify上の設定をつなぐ工夫が必要です。こうした微調整を四半期ごとにレビューすることで、営業が自信を持って「ECでの発注」を顧客に案内できる状態を維持しやすくなります。

卸売DXを定着させるためのKPI設計と現場への浸透施策

まず押さえたいのは、「DXの成果」を売上や新規取引先数だけで測らないことです。Shopify Plusでの卸売では、受注~出荷~請求までの一連の流れをどれだけ”人手に頼らず、ミスなく、素早く”回せるかが重要です。そこで、結果指標(売上・粗利)に加え、プロセス指標(受注処理時間・問い合わせ件数・在庫差異率など)をセットで設計します。たとえば、FAX・メールをやめてB2Bストアに集約したい場合、「オンライン受注比率」を明確なKPIとしておくと、現場が何を改善すべきかが分かりやすくなります。

  • オンライン受注比率(全受注に占めるB2Bストア経由の割合)
  • 1受注あたりの処理時間(受注確認~出荷準備完了まで)
  • 受注エラー率(数量・商品違いなどの修正発生率)
  • 在庫差異率(システム在庫と実在庫の差分)
  • 問い合わせ削減数(在庫・価格・納期に関する問い合わせ件数の推移)
カテゴリ KPI例 Shopify Plusでの見方
売上・取引 B2B売上比率 チャネル別売上レポート
業務効率 受注処理時間 現場ヒアリング+簡易タイムスタディ
品質 受注エラー件数 返品理由・メモ欄の集計
顧客体験 自己解決率 FAQ閲覧数と問い合わせ件数の比較

指標を決めたら、現場に「レポートを読ませる」のではなく、「一緒に画面を見る」場を定期的に作ります。おすすめは、月1回・30分程度のオンライン簡易レビューです。Shopify標準レポートやエクスポートCSVをベースに、現場担当者が自分の言葉で気づきを話すことを重視します。そのうえで、WordPressなど社内ポータルに、シンプルなダッシュボード風のまとめを掲載します。たとえば以下のような簡易ウィジェットを作り、誰が見ても「良くなっているのか」「何が課題か」が一目で分かる状態を維持すると、DX施策が現場の日常業務に自然と組み込まれていきます。

Wrapping⁢ Up

本記事では、Shopify Plusを活用した卸売DXの全体像から、具体的な機能や運用のポイント、導入時の注意点までを整理してご紹介しました。

卸売ビジネスのデジタル化は、単に受注方法をオンラインに置き換えるだけでなく、「取引先ごとの条件管理」「在庫・受注・請求の一元化」「バックオフィス業務の効率化」など、日々のオペレーション全体を見直すきっかけにもなります。
その一方で、既存の取引慣行や社内フローとのすり合わせ、システム連携、運用ルールの設計など、検討すべき事項も少なくありません。

まずは、現在の業務プロセスと課題を整理し、「どこからデジタル化を進めるか」「何をShopify Plusで実現するか」を明確にすることが重要です。小さく始めて検証しながら、ステークホルダーと合意形成を進めていくことで、現場に定着しやすい卸売DXの仕組みを構築しやすくなります。

Shopify Plusは、BtoCとBtoBを同一基盤で運用できる柔軟性を持っており、中長期的なチャネル戦略や事業成長にも対応しやすいプラットフォームです。本記事が、自社の卸売DXを検討・推進される際の整理や検討材料として、お役に立てば幸いです。

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