「商品も悪くない。アクセスも”それなり”にはある。それなのに、売上が伸びない――。」
Shopifyでストアを運営していると、多くのオーナーが一度はこの”停滞感”にぶつかります。広告費を増やすべきか、デザインを変えるべきか、アプリを足すべきか…。打ち手はいくつも思いつく一方で、「どこから手をつければいいのか」が見えなくなってしまうことも少なくありません。
本記事では、「なんとなく改善」から一歩抜け出し、売上が伸び悩んだときに”どの順番で””どこをどのように”見直せばいいのかを、手順として整理します。アクセス解析やCVR(コンバージョン率)、カート離脱、LTVといった指標をたどりながら、原因を丁寧にさかのぼることで、感覚ではなく「根拠のある改善」に近づいていきましょう。
思いつきの施策を重ねるよりも、現状を分解して一つずつ検証するほうが、遠回りに見えて実は近道です。ここから、あなたのShopifyストアの「伸び悩みポイント」を一緒に洗い出していきます。
現状の売上データを解剖してボトルネックを可視化する
まずは、「なんとなく伸びない」という感覚をやめて、売上を構成する要素をバラバラに分解して眺めてみましょう。売上は、ざっくり言えば 「アクセス数 × コンバージョン率 × 客単価」 の掛け算で決まります。この3つのどこに異常値や落ち込みがあるのかを特定できれば、闇雲に施策を打つ必要はなくなります。ダッシュボードのグラフやレポートを開いたら、期間を変えてトレンドを比較し、「いつから」「どの指標が」鈍っているのかを静かに洗い出していきましょう。
ここで役立つのが、指標ごとに現在地を整理するシンプルな表です。以下のように、期間を統一してデータを並べるだけでも、優先的に改善すべきポイントが浮かび上がります。
| 指標 | 先月 | 今月 | 変化 |
|---|---|---|---|
| セッション数 | 10,000 | 9,200 | -8% |
| コンバージョン率 | 2.8% | 1.9% | -0.9pt |
| 平均注文額 | 6,200円 | 6,150円 | -1% |
こうした数字を眺めるときは、「どこが悪いか」を探すよりも、「どこを直せば一番インパクトが大きいか」を意識するのがおすすめです。たとえば、アクセスは大きく減っていないのにコンバージョン率だけが急落しているなら、広告や集客よりも商品ページ・カート周りの体験にこそメスを入れるべきサインです。逆に、コンバージョン率は安定しているのにアクセスだけが細っているなら、ボトルネックは集客チャネルにあります。
より精度を上げるためには、データを細かく切り分けてみましょう。以下のような観点でセグメントしてみると、意外な「詰まりどころ」が見つかります。
- デバイス別(PC / モバイル / タブレット)でのCVR・離脱率
- チャネル別(検索 / 広告 / SNS / メルマガ / リピーター)の売上構成比
- 商品別の閲覧数・カート投入率・購入率の差
- 新規 vs 既存顧客での平均注文額とリピート間隔
最後に、見えてきた問題点を「感覚」ではなく仮説として言語化しておきます。例えば、モバイルだけカート離脱が高いなら「モバイルのカートページの読み込みが遅く、決済完了までのステップが多すぎる可能性」など、原因候補をはっきり書き出します。
- 数字から読み取れる事実(例:モバイルCVRが前月比40%ダウン)
- そこから導かれる仮説(例:ファーストビューの情報量過多によるスクロール離脱)
- 検証のための次の一手(例:商品ページのABテスト、決済フローの簡略化)
この「事実 → 仮説 → 次の一手」のひとまとまりをいくつか作っておくと、改善の優先順位が自然と整理され、漠然とした不調が、手を打てる「具体的な課題」へと変わっていきます。
ターゲット像と集客導線を照合しズレを一つずつ修正する
まず行うべきは、「誰に売りたいのか」を文章レベルまで具体化することです。
年齢・性別・居住地といった属性だけでなく、ライフスタイル・悩み・購買のきっかけまで掘り下げて書き出してみましょう。例えば、「30代女性・都心在住」ではなく、「在宅ワークで1日中PC前にいる肩こりに悩む30代女性」のような粒度まで落とし込むと、後の導線チェックが一気に明確になります。
次に、その人物が実際に通るであろう動線と、いまサイト上で用意されている動線を比較します。
以下のような形で、理想の行動と現状のページをマッピングしてみると、ズレが視覚化しやすくなります。
| 理想の行動 | 現在の導線 | 想定されるズレ |
|---|---|---|
| 悩みを検索 | ブランド名でしか流入なし | 検索キーワードが不一致 |
| 商品比較をしたい | 商品ページが単体で独立 | 比較コンテンツが不足 |
| 購入前に信頼を確認 | レビューが目立たない | 安心材料が見つけづらい |
こうして浮かび上がったズレを、一気に直そうとせず、「入口 → 回遊 → 商品ページ → カート」の順で一つずつ潰していくのがポイントです。例えば、入口のズレが大きいのに、いきなりカートUIだけを微調整しても効果は限定的です。検索キーワード、SNS投稿の内容、広告クリエイティブを見直し、「そのターゲットが日常で使う言葉」と「ショップ内で使っている言葉」を丁寧に合わせ込んでいきます。
また、サイト内のコピーやビジュアルも、理想とする人物像に合わせて再設計します。
- トップページ:ターゲットの「今の悩み」を最初の一画面で言語化できているか
- 商品ページ:スペックよりも、悩みがどう解決されるかを優先して説明しているか
- ブログ・コレクション:検索されやすいテーマで、導入としての役割を果たしているか
このあたりを一点ずつ確認し、「ターゲットの頭の中の順番」に沿って情報を並べ替えていきます。
最後に、修正の効果を定量的に捉える仕組みを用意します。
Shopifyのアナリティクスや連携ツールを使い、「どの入口から来た人が、どのページで離脱しているのか」を定期的にチェックしましょう。例えば、SNSからの流入は多いのに、コレクションページで離脱率が高いなら、そのページのコピーか商品構成がターゲット像と合っていない可能性が高いです。このように、数字をヒントにしながら、想定した人物像と実際の行動を比較し、ひとつひとつ微調整を重ねていくことで、集客導線は少しずつターゲットにフィットしていきます。
商品ページの訴求力を磨き直し写真と説明文で「欲しい理由」を明確にする
まず意識したいのは、「どんな人が、どんなシーンで、この商品を使っているか」を写真で一瞬で伝えることです。白背景の物撮りだけでは、機能は伝わっても”欲しさ”は生まれにくくなります。ライフスタイルが想像できるカットを用意し、使用シーン・サイズ感・質感が直感的に伝わる構成にしましょう。たとえば、同じ商品でも「仕事終わりのリラックスタイム」「週末のアウトドア」のように、複数の世界観を見せることで、自分ごと化を促せます。
写真構成を見直すときは、役割ごとに撮ると整理しやすくなります。
- アイキャッチ写真:一枚で世界観と主なベネフィットが伝わるメインビジュアル
- ディテール写真:素材感・縫製・ボタン・裏地など「こだわり」が伝わるクローズアップ
- スケール写真:人や日用品と一緒に写し、サイズ・容量をイメージさせるショット
- ストーリー写真:開封〜使用〜収納の流れが分かる「一連の体験」を見せるカット
このように役割を分けることで、撮影漏れを防ぎつつ、欲しくなるまでのストーリーを視覚で構築できます。
| 要素 | Before | After |
|---|---|---|
| 写真 | 白背景1〜2枚 | 世界観+使用シーン+ディテール |
| 説明文 | 機能列挙 | 悩み→解決→ベネフィットの流れ |
| 強み | 曖昧 | 他社比較で一目瞭然 |
説明文では、スペックを並べる前に、「なぜこの商品があなたの悩みを解決できるのか」を言語化することが重要です。事実(特徴)→意味(ベネフィット)→未来(どう変わるか)の順で書くと、読み手の頭の中で”欲しい理由”が自然に組み上がっていきます。例えば「防水素材です」ではなく、「突然の雨でも中身を守れるから、PCを入れていても傘を持ち歩かなくて済む」のように、行動レベルの変化まで描写すると、購入後の生活がリアルに想像できます。
あわせて、他商品との違いをはっきり見せることで、「買う理由」を後押ししましょう。
- よくある不満を明示:「重い」「すぐ壊れる」など、市場の定番ストレスを先に言語化
- それをどう解消しているか:素材・構造・設計思想をシンプルな言葉で説明
- 数字・比較で裏づけ:重量、容量、耐久テスト回数など、ひと目で差が分かる指標
ここで大切なのは、競合を悪く言うのではなく、「こういう人にはうちの商品が最適です」と、合うユーザー像をクリアにしてあげることです。
最後に、写真とテキストを分断せず、ストーリーとして一体化させましょう。テキストで「長時間座っても疲れにくいクッション性」と書いたなら、そのすぐ近くに、ソファでくつろぐ様子や座面の断面を見せるカットを配置します。視線の流れに合わせて、「悩み」→「商品との出会い」→「使用シーン」→「購入後の未来」が一枚ずつ積み重なっていく構成を意識すると、訪問者は説明されなくても”自分が使っているイメージ”まで到達しやすくなります。このイメージの鮮明さこそが、「なんとなく良さそう」を「今すぐ欲しい」へ変える鍵になります。
カート放棄と購入フローを点検し離脱ポイントごとに改善策を打つ
売上が伸び悩んでいるときこそ、カートから購入完了までの導線を「なんとなく」ではなく、データで可視化していくことが重要です。Shopifyのコンバージョン分析やGoogleアナリティクスを組み合わせれば、「商品をカートに入れる」「情報入力をはじめる」「支払いに進む」「注文完了」という一連の流れのどこで離脱が多いかがはっきり見えてきます。まずは感覚を捨て、数字をもとに「本当に改善すべきポイント」を特定しましょう。
離脱が多いステップごとに、原因候補と対策を洗い出します。たとえば「カートに入れたあとに離脱が多い」のであれば、送料や手数料、到着日などの情報がわかりにくい可能性があります。一方で「決済画面での離脱」が多いなら、支払い方法の少なさや、フォームの入力項目が多すぎることがボトルネックかもしれません。こうした仮説立てを丁寧に行うことで、やみくもな施策ではなく、離脱ポイントに直結したピンポイント改善が可能になります。
| 離脱ポイント | よくある原因 | 即効性のある改善案 |
|---|---|---|
| カートページ | 最終金額が見えない不安 | 送料・手数料を即時表示 |
| 情報入力 | フォームが長くて面倒 | 必須項目を最小限に絞る |
| 決済画面 | 支払い手段が合わない | コンビニ払いや後払いを追加 |
実際に施策を打つときは、ユーザー目線の心理的なハードルをひとつずつ取り除くことを意識します。以下のような小さな調整でも、離脱率が目に見えて変わることがあります。
- 送料や到着予定日の明示:カートページで合計金額とお届け目安をわかりやすく表示する
- ゲスト購入の許可:会員登録を強制せず、Eメールのみでスムーズに購入できるようにする
- 入力補助の活用:住所自動入力アプリや郵便番号サジェストで入力ストレスを減らす
- 安心材料の表示:返品ポリシーやセキュリティバッジをフォーム近くに掲載し不安を和らげる
さらに、カート放棄を前提とした「取り返す仕組み」を組み込むことで、失われたはずの売上を呼び戻すことができます。Shopifyのカート放棄メールや自動フローを活用し、タイミングと内容をテストしながら最適化していきましょう。
- タイミングの工夫:放棄後1時間以内・24時間後など複数パターンをA/Bテスト
- 内容の工夫:閲覧していた商品の画像、在庫数の少なさ、期間限定クーポンなどを組み合わせる
- チャネルの拡張:Eメールだけでなく、SMSやプッシュ通知を併用してリマインドする
リピーターを生むためのメール施策とレビュー活用で顧客体験を底上げする
一度購入してくれたお客様に「またここで買いたい」と感じてもらうには、購買後のメール設計が鍵になります。単なるサンキューメールで終わらせず、購入商品ごとに内容を変えたフォローアップや、使用方法のリマインド、Q&Aへの導線をセットにすることで「このショップはちゃんと面倒を見てくれる」という印象を与えられます。特に、初回購入者にはショップの世界観やブランドストーリーを軽く添えると、価格以外の理由で選ばれる土台が生まれます。
メールの設計では、売り込み一辺倒にならないよう、以下のようなコンテンツをバランスよく織り交ぜることが重要です。
- 購入後3日以内:到着前のワクワクを高める発送連絡+使い方のティザー
- 到着後5〜7日:開封・初回利用を後押しする使いこなしガイド
- 到着後14日以降:使ってみた感想のヒアリングとレビュー依頼
- 30日以降:リピートや関連商品のレコメンド、定期購入の提案
| タイミング | メールの狙い | CTA例 |
|---|---|---|
| 購入直後 | 安心感の付与 | 「注文内容を確認する」 |
| 商品到着後 | 利用開始の促進 | 「使い方ガイドを見る」 |
| 利用定着期 | 満足度の可視化 | 「レビューを書く」 |
| リピート期 | 再購入の後押し | 「前回と同じ内容で購入」 |
レビューは「集まれば勝手に売上が伸びる魔法の装置」ではなく、顧客体験を一段階引き上げるための対話の入り口として設計するのがポイントです。星評価だけでなく、悩みや利用シーンを書いてもらう設問を用意すると、同じ悩みを持つ見込み客への説得力が格段に上がります。また、良いレビューだけを見せるのではなく、あえて中立〜やや辛口の声も掲載し、それに対するショップ側の改善コメントを添えることで、ブランドへの信頼感が生まれます。
さらに、集まったレビューは商品ページに貼り付けるだけでなく、メール施策に再利用することで威力を増します。例えば、「同じ商品を2回以上購入したユーザーの声だけを抜き出したメール」を配信すれば、「リピートされている」事実が、そのまま次の購入を後押しする材料になります。また、よくある質問に近いレビューは、ヘルプページやステップメールのコンテンツとして再構成することで、サポートコストを抑えながら満足度を高めることができます。
こうしてメールとレビューを有機的に連携させると、単純な販促の連打ではなく「買ってからの体験がどんどん便利になる」流れを設計できます。お客様は、メールを開くたびに新しい発見や使いこなしのヒント、他のユーザーの生の声に触れ、「このショップとつながっている価値」を感じるようになります。その積み重ねが、セールに頼らなくても自然に戻ってきてくれるリピーター基盤へとつながっていきます。
結びの言葉
売上が伸び悩むタイミングは、決して「終わりのサイン」ではなく、「設計図を描き直すチャンス」です。
今回ご紹介した見直し手順は、魔法のように一晩で結果を変えるものではありませんが、ひとつずつ丁寧に取り組むことで、確実に「伸び悩みの正体」を浮かび上がらせてくれます。
・数字で現状を正しく把握する
・ショップの「入口」と「出口」を整える
・商品と訴求のズレを埋める
・集客とリピーター施策をバランスさせる
このサイクルを繰り返すことで、Shopifyストアは「なんとなく続ける場所」から、「意図して成長させるビジネス」へと変わっていきます。
もし今、売上グラフが横ばいでも、それはゴール前の停滞かもしれません。
今日の見直しが、数ヶ月後の「売上が伸びた理由」になるように、ひとつずつ検証と改善を積み重ねていきましょう。

