2025年1月より、「Shop Pay」が米国においてマーケットプレイス・ファシリテーター(Marketplace Facilitator)として扱われる予定であることが発表されました。これにより、特に米国向けに販売している日本のShopify事業者にとって、税金や会計処理の取り扱いに一定の影響が生じる可能性があります。
本記事では、専門的な税務知識を持たないShopify運営者の方にもわかりやすいように、
– 「マーケットプレイス・ファシリテーター」とは何か
– なぜShop Payがその対象になるのか
– 2025年1月以降、Shopifyストア運営にどのような影響があり得るのか
– 事前に確認しておきたいポイント
といった点を整理して解説します。
なお、本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、税務・法務についての最終的な判断は、必ず税理士や専門家にご相談のうえ行ってください。
目次
- Shop Payがマーケットプレイスファシリテーターになる背景と概要
- 対象となる州と税務ルールの変化を整理する
- Shopifyストア運営者に求められる設定変更と確認ポイント
- 請求書やレシートにおける税額表示の変化とお客様への説明方法
- 会計ソフトや経理処理への影響と実務対応の進め方
- サブスクリプション販売や割引コード利用時の税計算への影響
- 税務リスクを避けるための今からできる準備チェックリスト
- 不明点がある場合の情報収集先とサポート活用のすすめ
- Future Outlook
Shop Payがマーケットプレイスファシリテーターになる背景と概要
今回の変更は、Shop Payが単なる「決済手段」から一歩進み、税計算と徴収においてより主体的な役割を担うことにあります。これまで各マーチャントが個別に対応してきた消費税・売上税まわりの事務を、一定条件を満たす取引についてはShop Pay側が「マーケットプレイス」としてまとめて処理するイメージです。これにより、運営者はショップごとの細かな税率設定よりも、例外ケースの管理や売上レポートの確認に注力しやすくなります。
背景としては、各国・各州でオンライン取引に対する税ルールが年々厳格化していることがあります。特にデジタルプラットフォームに対しては、「取引を仲介する事業者=税の責任主体」とみなす制度が広がっており、ShopifyもShop Payを通じてその要件に対応せざるを得なくなっています。運営者側の感覚としては、次のような構図に近づくと考えると理解しやすいでしょう。
- マーチャント:商品・サービスの提供と価格設定に集中
- Shop Pay:対象地域の税率判定・計算・徴収を代行
- 当局:Shop Payを含むプラットフォーム側へ税務責任を求める流れ
| 項目 | 従来 | 変更後(対象取引) |
|---|---|---|
| 税率の判定 | 各ショップが設定 | Shop Payが自動判定 |
| 税金の徴収 | ショップごとに徴収 | Shop Pay名義で徴収 |
| ショップ側の役割 | 税設定と確認が中心 | 例外・レポート確認が中心 |
対象となる州と税務ルールの変化を整理する
まず押さえておきたいのは、「どの州で」「どの取引について」Shop Payがマーケットプレイス・ファシリテーターとして売上税を代行徴収するか、という整理です。多くの州ではすでにAmazonや楽天型マーケットプレイスに対して同様のルールが適用されていますが、2025年1月からは、shop Pay経由の決済についても同様の扱いになる州が順次広がる想定です。対象となる州では、Shop Payが関与する注文については、原則として売上税の計算・徴収・納付をShop Pay側が担い、マーチャントはその売上を「税額込みで受け取る」形に変わります。
運用面で重要なのは、「Shop Payが税務上の責任を負う部分」と「引き続きストア側が責任を負う部分」を切り分けて理解することです。典型的には、次のようなイメージになります。
- Shop pay対象取引:対象州では、チェックアウト時の売上税はShop Pay側が計算・徴収・納付
- その他の決済方法:従来どおり、ストア側が各州ルールに従って売上税を管理
- 帳簿・レポート:Shop Pay側レポートとShopify管理画面の売上レポートを突き合わせて管理
- 免税・特殊取引:免税顧客や特定商品の非課税扱いなど、設定ミスがあるとShop Pay側計算にも影響
| 区分 | 2024年まで | 2025年1月以降(対象州・Shop Pay決済) |
|---|---|---|
| 売上税の計算 | 原則、マーチャントが設定に基づき実施 | Shop Pay側が対象注文について自動計算 |
| 徴収・納付義務 | マーチャントが各州への申告・納付を担当 | 対象取引分はShop Payが州に納付、マーチャントは申告額を調整 |
| レポート対応 | Shopifyレポート中心で管理 | Shopifyレポート+Shop Pay税務レポートの両方を確認 |
Shopifyストア運営者に求められる設定変更と確認ポイント
まず優先すべきは、税金・支払いまわりの基本設定の見直しです。管理画面では、Shop Payを利用する決済チャネルの税金処理が、マーケットプレイス・ファシリテーターとしての仕様に合っているかを確認します。とくに、すでに外部アプリやスプレッドシートで税額を上乗せ・再計算している場合は、二重課税にならないよう整理が必要です。加えて、「どのチャネルで、誰が税金を徴収し、誰の名義で納税するか」を、運営メンバーの間で共通認識にしておくと、将来のトラブル防止につながります。
- 決済設定:Shop Payの有効/無効と対象国の確認
- 税金設定:国・州・都道府県ごとの税率と自動計算の有無
- アプリ連携:税計算・請求書発行アプリの仕様と役割分担
- ストアポリシー:特商法表記・利用規約・返金ポリシーとの整合性
| 確認項目 | 見る場所 | ポイント |
|---|---|---|
| 税額の表示 | カート〜注文確認画面 | 税金が一度だけ正しく加算されているか |
| 請求書・領収書 | 通知メール・PDF | 税額・名義・明細が一貫しているか |
| 分析レポート | 売上レポート | 売上と税額がチャネル別に把握できるか |
つぎに、社内フローと顧客向け案内の両方を更新することが重要です。Shop Pay経由の注文が、他の決済と税処理が異なる場合は、経理・会計担当への共有と、月次〆処理の手順書のアップデートが必要になります。また、よくあるお問い合わせ(税金の内訳、領収書の宛名、返金時の税額処理など)を整理し、ヘルプページや自動返信メールに反映しておくと、サポート負荷を抑えられます。最後に、変更後はテスト注文を行い、「お客様画面」「管理画面」「会計資料」の3つが矛盾なくそろっているかを確認してから、本番運用に入ると安心です。
請求書やレシートにおける税額表示の変化とお客様への説明方法
2025年1月以降、Shop Payがマーケットプレイス・ファシリテーターとして税額を代理徴収する対象地域では、請求書やレシート上の税額表示が変わります。これまで「店舗が税金を計算・徴収していた」場合は、明細の税額がすべて自店舗の取引として表示されていましたが、今後は「Shop Payが徴収する分」と「店舗側が徴収する分」が分かれて表示されるケースがあります。お客様から見ると、合計金額は変わらないものの、税額行のラベルや内訳が変わることで疑問を持たれやすくなります。
- 税額の合計は原則として変わらない(計算ロジックが変わる可能性はあり)
- 誰が税金を徴収・納付するかの表示が変わる
- 領収書・請求書の文言や注釈をあらかじめ整えておく必要がある
| お客様の疑問 | 説明のポイント |
|---|---|
| 「前と税の表示が違うのはなぜ?」 | 税金の合計額は同じで、徴収と納付の役割分担が変わったことを簡潔に伝える。 |
| 「どこが税金を受け取っているの?」 | 一部または全部の税金をShop Payが店舗に代わって受け取り、各地域のルールに沿って納付していると説明する。 |
| 「領収書として問題ない?」 | 法令に準拠した形式で発行しており、会計や経費精算に利用できることを明記する。 |
日常の対応では、カスタマーサポート向けに短い定型フレーズを用意しておくとスムーズです。例えば、注文確認メールやFAQに次のような文言を入れておくと、個別の問い合わせ対応がしやすくなります。
- 例:FAQ向け
「2025年1月以降、一部地域では決済プロバイダー(Shop Pay)が税金の計算・徴収・納付を代行しています。そのため、請求書・レシート上の税額表示や但し書きが従来と異なる場合がありますが、お支払いいただく税額の合計は各地域の税法に基づき正しく計算されています。」 - 例:チャット・メール返信向け
「今回のご注文では、Shop Payが当店に代わって税金を徴収しています。レシート上の税額表示が以前と異なりますが、合計金額や税率は各地域のルールに沿って正しく適用されていますのでご安心ください。」
会計ソフトや経理処理への影響と実務対応の進め方
まず押さえておきたいのは、Shop Payがマーケットプレイス・ファシリテーターとして消費税等を代行徴収・納付する範囲と、自社で引き続き計上すべき売上・税額の切り分けです。これにより、会計ソフト上の「売上高」「仮受消費税」「預り金(又は代行徴収税)」などの勘定科目の使い方が変わります。会計処理をシンプルに保つためには、Shop Pay経由の取引を別の売上区分として管理し、レポート単位で集計・仕訳を切る運用が有効です。特に、税額を自社で納付しない取引は、誤って仮受消費税に計上しないよう、仕訳パターンをテンプレート化しておくとミスを防げます。
- Shop Pay経由売上の補助科目化(例:Shop Pay売上)
- 税代行分の預り金処理かレポート内完結処理かの方針決定
- 会計ソフトの自動仕訳ルールの見直し・追加
- CSVインポートのマッピング項目確認・テスト
| 取引パターン | 会計上の主なポイント | 実務対応のヒント |
|---|---|---|
| Shop Payが税を代行徴収 | 売上高のみ計上、仮受消費税は計上しない | 専用の仕訳テンプレートを作成し、自動登録を優先 |
| 自社で税を納付する取引 | 従来どおり売上高+仮受消費税を計上 | 既存ルールを維持しつつ、Shop Pay取引と混在させない |
| クレジット手数料・Shop Pay手数料 | 支払手数料として計上、税代行分とは区別 | 手数料レポートを会計ソフトに紐付け、月次で確認 |
実務の進め方としては、まず現在のShopifyレポートと会計ソフトの仕訳ルールを棚卸しし、「どのデータをどこに流すか」を図に起こすことから始めます。そのうえで、移行時期を区切ってテスト期間を設け、少額取引で試験的に連携・仕訳を実行し、帳簿残高とShop Payのレポートが一致するかを確認します。あわせて、現場担当者向けに「どの決済手段がどの仕訳に対応しているか」をまとめた簡易マニュアルを作成しておくと、担当者交代時や繁忙期でも運用が乱れにくくなります。
サブスクリプション販売や割引コード利用時の税計算への影響
まず押さえておきたいのは、サブスクリプション決済でも、マーケットプレイス・ファシリテーターとしての税計算ルールは「都度の課金タイミング」で判定されるという点です。2025年1月以降、Shop Payを通じて自動更新される定期購入についても、各請求時点での税率・管轄が適用されます。初回注文時だけでなく、2回目以降の課金にも同様にファシリテーターとしての計算が行われるため、「初回と継続課金で税額がズレていないか」を明細レベルで確認できるようにしておくと運用上安心です。
割引コードやサブスク専用ディスカウントを使う場合は、「どこに対して割引がかかるか」によって税額が変わることがあります。一般的には以下のような考え方になります。
- 小計に対して割引 → 割引後の課税対象額に税が計算される
- 送料無料コード → 配送料に課税がある地域では、その分だけ税額が変動
- 特定商品だけ値引き → 対象商品の課税・非課税区分に応じて計算が分かれる
特に、同じサブスクリプションでも「初回だけ大幅割引」「2回目以降は通常価格」といった設計をしている場合、請求ごとの税額変化が顧客にとって分かりやすい明細になっているかが顧客対応面で重要になります。
| ケース | 割引のかかり方 | 税計算のポイント |
|---|---|---|
| 初回のみ50%オフ | 定期1回目の小計を半額 | 初回だけ税額も小さくなるため、2回目以降の増加を事前説明 |
| 毎回10%オフコード | 各回の小計に10%割引 | 毎回、割引後金額を基準に税を算出 |
| 送料無料コード | 配送にのみ適用 | 配送料が課税対象なら、その分の税額が減少 |
運用面では、「サブスクプラン」「割引条件」「税区分」を一覧で把握できるシートやアプリ側のタグ管理を用意しておくと、税額に関する問い合わせが来た際にもスムーズに説明できます。特に複数の割引施策を同時に走らせる店舗では、どの注文にどのロジックが適用されたかを追える仕組みづくりを意識しておくとよいでしょう。
税務リスクを避けるための今からできる準備チェックリスト
まずは、現状の体制を整理することから始めます。現在、どの州・どの国に対して売上があり、どのような税率・ルールで処理しているのかを、Shopify管理画面と会計ソフトの両方で確認しましょう。次に、Shop Payを経由した売上と、その他の決済手段(クレジットカード、PayPal等)を分けて把握できるようにしておくと、2025年以降の照合作業がスムーズになります。可能であれば、税理士や会計事務所にもShop Payのマーケットプレイス・ファシリテーター化について共有し、事前に質問や想定シナリオを洗い出しておきましょう。
- 販売地域リストの作成:どの州・国に出荷しているかの一覧を用意
- 決済手段ごとの売上把握:Shop Pay/その他の決済を区別してレポートを確認
- 税設定の棚卸し:Shopifyの「税金と関税」設定をスクリーンショットやメモで保管
- 顧問先への情報共有:税理士・会計担当に2025年1月からの変更点を説明
- 社内ルールの暫定案作成:どの資料をどのタイミングで誰が確認するかの流れをメモ
| 確認項目 | 担当 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| Shop Pay売上のレポート出力方法を確認 | 店舗運営担当 | 今月中 |
| 税務申告で利用している売上データの出所を整理 | 経理・会計担当 | 2〜3か月以内 |
| 税理士とShop Payの新ルールについて打ち合わせ | オーナー/管理者 | 年内 |
不明点がある場合の情報収集先とサポート活用のすすめ
税務や決済スキームの変更は、公式情報と第三者の解説を組み合わせて確認するのが安全です。まずは、ShopifyとShop Payに関する一次情報として、ShopifyヘルプセンターとShopify Tax関連ドキュメントを参照します。そのうえで、国税庁サイトや各州税務当局(米国向け販売の場合)の公開情報と照らし合わせると、マーケットプレイス・ファシリテーター制度としてのShop Payの位置づけが整理しやすくなります。特に、税率の自動計算に関する仕様や、請求書への税表示ルールなど、「自社で決める部分」と「Shopify/Shop Payが自動で行う部分」を切り分けながら確認することが重要です。
- shopifyヘルプセンター(日本語・英語)
- Shopifyコミュニティフォーラム
- 国税庁・各国税務当局の公式サイト
- 信頼できる税理士・会計事務所の解説記事
| 情報源 | 用途の目安 | 確認頻度 |
|---|---|---|
| Shopifyヘルプ | 仕様変更・操作方法 | 機能変更時や疑問発生時 |
| 国税庁サイト | 法令・基本的な税ルール | 年1回+制度改正時 |
| 専門家(税理士等) | 自社ケースの最終判断 | 方針決定時・リスク検証時 |
運用上の不明点は、段階的にサポートを活用するとスムーズです。まずは、「どの画面で」「どの表示が」「どのように分からないのか」を整理し、スクリーンショットと併せてメモしておきます。次に、ヘルプセンター内検索やコミュニティで同様の事例がないかを確認し、それでも解決しない場合は、Shopifyサポートやパートナーに相談します。サポート窓口に問い合わせる際は、以下の情報をあらかじめ用意しておくと、回答が的確になりやすく、やり取りの回数も減らせます。
- 対象ストアURL・プラン(Plusか否かなど)
- 問題が発生した注文番号やお客様の国・州
- どの税額・手数料の表示が疑問か(チェックアウト、注文詳細、レポートなど)
- 「本来どうなっていてほしいか」自社の希望・運用方針
税や制度に関する判断は、最終的には事業者の責任で行う必要があります。そのため、Shopifyサポートやコミュニティで得た情報だけで判断せず、税理士や会計事務所と連携して確認するフローをあらかじめ決めておくと安心です。たとえば、Shop Payのマーケットプレイス・ファシリテーターとしての取り扱いについて、社内で対応案を整理 → Shopifyの仕様を確認 → 仮の運用案を作成 → 専門家へレビュー依頼、という流れをテンプレート化しておくと、今後の制度変更にも対応しやすくなります。また、外部パートナーと情報共有する際は、
- これまでのShop Pay利用状況と売上構成
- 海外向け販売の有無と販売先の主な国・州
- 既存の会計・請求書発行フロー
といった背景情報もセットで伝えることで、より現実的なアドバイスを得やすくなります。
Future Outlook
本記事では、2025年1月からShop Payがマーケットプレイス・ファシリテーターとして扱われることによる、主な変更点と実務への影響について整理しました。
制度や税務の変更は、とかく複雑になりがちですが、日々の運営で押さえておくべきポイントは、
「どの取引について、誰が、どのような税金を計算・徴収・納付するのか」を正しく理解しておくことに尽きます。
まずはShopifyからの公式アナウンスや管理画面上の案内を確認し、自社の販売地域・商品構成・決済手段との関係を一つずつ確認していくことが重要です。
また、不明点が残る場合は、税理士や会計事務所などの専門家に早めに相談し、自社の状況に合わせて対応方針を固めておくと安心です。
2025年1月までにはまだ準備期間がありますので、本記事をきっかけに情報収集と社内での整理を進め、スムーズに新しいルールへ移行できる体制を整えていきましょう。


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