オンラインストアの売上やコンバージョン率を改善するには、「なんとなく良さそう」という感覚ではなく、データに基づいて判断することが重要です。その代表的な手法が A/B テストですが、これまでは外部アプリの導入や開発担当者への依頼が必要で、運用のハードルが高いと感じていた方も多いのではないでしょうか。
Shopify の新機能「Rollouts」は、テーマや機能の変更を一部の訪問者だけに段階的に反映し、結果を比較しながら本格導入を判断できる仕組みです。つまり、A/B テストに近いことを、Shopify 標準の機能で行えるようになりました。
本記事では、専門的な技術知識がないストア運営者の方でも理解しやすいように、Rollouts 機能の基本的な考え方から、実際の設定方法、運用時の注意点までを順を追って解説します。この記事を読みながら操作していただくことで、自社ストアでも安心して A/B テストを始められる状態を目指します。
目次
- Rollouts機能とは何か 基本概要とA Bテストとの関係
- Rolloutsを始める前の準備 テーマとアプリの確認ポイント
- Rolloutsでのテストパターン設計 売上とCVRに直結する切り口の考え方
- ターゲットの分け方と配分比率 どの顧客にどれくらい配信するか
- テスト期間と評価指標の決め方 データを正しく読み取るための基準作り
- Rolloutsの操作手順 実際の設定フローと注意点
- 結果レポートの見方と改善への生かし方 次のアクションの決め方
- よくあるつまずきと対処法 安全にA Bテストを続けるためのチェックリスト
- Future Outlook

Rollouts機能とは何か 基本概要とA Bテストとの関係
rolloutsは、テーマやアプリの変更を一気に全顧客へ反映するのではなく、特定の割合や条件の顧客にだけ段階的に公開できる仕組みです。たとえば「新しい商品ページレイアウトをまずは全体の20%の訪問者だけに反映する」といった運用が可能になります。これにより、売上や離脱率に大きな影響を与えうる変更でも、小さく試してから広く展開するワークフローを日常業務の中に組み込めます。Shopifyの管理画面や専用アプリから制御できるため、コード編集に慣れていない運営者でも比較的扱いやすいのが特徴です。
Rolloutsの考え方はA/Bテストとよく似ていますが、役割には違いがあります。A/Bテストが「どのパターンがより成果につながるか測定する仕組み」なのに対し、Rolloutsは「選んだパターンをどのように安全に公開するか管理する仕組み」という位置づけです。実務では、A/Bテストで勝ちパターンを見つけたあと、そのパターンを少しずつ全体へ展開したい場面が多くあります。そこでRolloutsを使うと、アクセス集中や予期せぬ不具合によるリスクを抑えつつ、段階的に公開範囲を広げることができます。
実際の運用では、A/BテストツールとRolloutsを組み合わせることで、次のような流れが自然に作れます。
- テスト用に複数パターンのページや機能を用意する
- A/Bテストでコンバージョンが高いパターンを特定する
- 勝ちパターンをRolloutsで一部の顧客に先行適用し、トラブルがないか確認する
- 問題がなければ公開比率を段階的に100%まで拡大する
| 項目 | A/Bテスト | Rollouts |
|---|---|---|
| 主な目的 | どちらが成果を出すか比較 | 安全に変更を本番へ反映 |
| 見るポイント | CVR・クリック率など | 不具合・離脱増加の有無 |
| 使うタイミング | 案を検証するとき | 採用案を導入するとき |
Rolloutsを始める前の準備 テーマとアプリの確認ポイント
安定したA/Bテストを行うためには、まず現在のテーマがRollouts機能に適した状態かを整理しておく必要があります。特に、複数のスタッフが日常的にテーマを編集しているストアでは、意図しない変更がテスト結果に影響することがあります。テストを始める前に、運用中のテーマと下書きテーマの役割を明確にし、編集権限や作業ルールをチーム内で共有しておくと、テスト期間中の「いつ・誰が・どこを変更したのか」が把握しやすくなります。
- 現在公開中のテーマのバックアップ(複製)を作成しておく
- テスト用の下書きテーマを1つに固定し、他用途と混在させない
- テーマ更新のタイミング(デベロッパーによるコード変更など)をチームで共有する
- アプリによるテーマ書き換えがないか、インストール済みアプリを確認する
次に、rollouts適用時に影響が出やすいアプリや設定を洗い出します。表示速度計測ツールやタグマネージャーなど、計測系アプリが複数入っている場合、A/Bテストの結果が二重計測されたり、片方のバリエーションだけ計測漏れが起きることがあります。テスト前に、どの指標をどのツールで見るのかを整理し、必要であれば一時的に使うツールを絞り込みます。
| 確認対象 | 主なチェック内容 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| テーマ | 複製有無・下書きの整理 | 本番とテスト用を明確に分ける |
| アプリ | テーマ編集・スクリプト追加 | テスト対象テーマで動作確認 |
| 計測設定 | GA・広告タグなどの設置場所 | 両バリエーションで同条件に統一 |
最後に、テスト期間中に発生しそうな運用イベントも事前に整理しておきます。大きなセール開始や商品構成の大幅な変更、料金表ページのリニューアルなどがテストと重なると、どの要因で数値が変化したのか判断しづらくなります。カレンダーにセールやキャンペーンの予定を書き出し、テストを行うタイミングを調整するか、テスト対象ページをキャンペーン対象外のページに限定するなど、運用スケジュールと矛盾しない計画にしておくとスムーズです。
Rolloutsでのテストパターン設計 売上とCVRに直結する切り口の考え方
売上やCVRに直結するテスト設計では、まず「どの指標を、どのタイミングで動かしたいのか」を明確にします。ありがちな失敗は、思いついた改善案をそのままテストすることです。代わりに、顧客の購買行動ステップを基準に仮説を組み立てていきます。例えば、商品詳細ページの離脱が多い場合は「商品魅力の理解不足」、カート投入後の離脱が多い場合は「送料や不安要素の解消不足」といった形で、課題をステップごとに分解してからRolloutsのテスト対象を決めます。
- 集客~流入:LP構成、ファーストビューの訴求軸
- 商品詳細:画像・レビュー・価格表示・メリットの伝え方
- カート~決済:送料表示、特典表示、フォームのわかりやすさ
| テストの切り口 | ねらう効果 | 測定する指標 |
|---|---|---|
| 価格表示と割引の見せ方 | 客単価アップ | AOV, 売上 |
| CTAボタンの文言と配置 | CVR向上 | 商品詳細→カート率 |
| セット販売・バンドル提案 | まとめ買い促進 | 1注文あたり商品数 |
Rolloutsでテストパターンを設計する際は、1テストにつき「売上」と「CVR」をどう両方で見るかをあらかじめ定義しておくと判断がぶれません。例えば、割引を強く出すパターンはCVRが上がっても、客単価が下がれば売上にマイナスになる場合があります。そのため、以下のように「勝ちパターンの条件」を最初に決めておきます。
- CVR優先型:新商品の認知拡大期やテスト流入が少ない場合に有効
- 売上優先型:セール期間や広告費を大きくかけている期間に有効
- バランス型:CVRが上がりつつ、AOVやLTVへの悪影響がないかを確認
| 勝ちパターン基準例 | 具体的な条件設定 |
|---|---|
| バランス型 | CVR +10%以上 かつ AOV -3%以内 |
| 売上優先型 | 売上 +8%以上 であればCVR変動は許容 |
最後に重要なのは、「どの顧客セグメントで勝ったのか」を必ず確認することです。全体では差が小さく見えても、新規客とリピーター、モバイルとPC、高価格帯商品と低価格帯商品で結果が大きく分かれることがあります。Rolloutsではテーマやセクション単位で出し分けがしやすいため、「新規客向けには安心感を重視したパターン」「リピーターにはアップセルを強めたパターン」のように、テスト結果を踏まえてパターンを使い分ける設計が可能です。ひとつの勝ちパターンで全体を塗り替えるのではなく、「誰にどのパターンが効くのか」を切り口として持ち続けることが、売上とCVRを同時に伸ばす鍵になります。

ターゲットの分け方と配分比率 どの顧客にどれくらい配信するか
まず決めるべきは「どの軸でターゲットを分けるか」です。Rolloutsでは、テーマやアプリの変更をすべての訪問者に一度に反映させず、条件ごとに配信対象を調整できます。たとえば、次のような切り口で考えると、Shopify運営の現場でも整理しやすくなります。
- 新規顧客 / リピーター:LTVや購入頻度の違いを見ながらテスト
- デバイス:モバイル・デスクトップでUIの反応を比較
- 主要トラフィックソース:広告経由・オーガニック検索・SNSなど
- 国・地域:言語や配送条件が異なるエリアごと
次に重要なのが配分比率です。一般的なUI変更のテストであれば、まずは「50:50」で均等配分し、どちらのパターンも十分なデータを集めます。一方で、既存の売上に影響を与えたくない場合は、既存バージョンを多めにし、新しいパターンを小さく試すアプローチが有効です。
| シナリオ | 旧バージョン | 新バージョン | ポイント |
|---|---|---|---|
| 標準テスト | 50% | 50% | シンプルで比較しやすい |
| 慎重なロールアウト | 80% | 20% | 影響を抑えつつ反応を見る |
| 段階拡大 | 70% → 50% | 30% → 50% | 結果を見て比率を調整 |
実務上は、いきなり複雑なセグメントを作り込むより、売上やCVRに直結しやすい層から優先的に配信していく方が管理しやすくなります。たとえば、まずは「モバイル+リピーター」にテスト配信し、問題がなければ「モバイル全体」、最終的に「全トラフィック」へと範囲を広げるイメージです。このとき、売上の大きい国・チャネルをいきなり100%切り替えないよう、対象と比率を記録しながら段階的に進めると、チーム内の合意形成もしやすくなります。

テスト期間と評価指標の決め方 データを正しく読み取るための基準作り
まず押さえたいのは、「どのくらいの期間テストを走らせるか」と「何をもって成功とみなすか」を最初に決めておくことです。Shopifyストア運営では、セッション数や注文数が日によって変動するため、短すぎるテスト期間だと「たまたま売れた/売れなかった」日に左右されてしまいます。目安としては、少なくとも1〜2週間、週末を1回以上またぐ期間を確保するのがおすすめです。そのうえで、日商規模に応じて「十分な注文数が集まるまで」という条件も合わせて設定すると、より信頼できるデータになります。
次に、どの指標でRolloutsの結果を評価するかを明確にします。売上だけを見て判断すると、客単価や返品率などの変化を見落とす可能性があります。テスト内容に合わせて、主となる主要指標(primary KPI)と、それを補完する参考指標(Secondary KPI)を決めておくと判断しやすくなります。
- 主要指標の例:コンバージョン率、平均注文額、商品ページからのカート追加率
- 参考指標の例:直帰率、ページ閲覧数、クーポン使用率、返品率
- 運用ルール:テスト開始前に「見る指標」を固定し、途中で増やしすぎない
| テストのねらい | 見るべき主な指標 | 目安のテスト期間 |
|---|---|---|
| 商品ページ改善 | カート追加率 / CVR | 2週間 + 一定の注文数 |
| 価格・割引見直し | 平均注文額 / 利益率 | 1〜3週間(セール周期に合わせる) |
| LPやバナー変更 | クリック率 / 直帰率 | 1〜2週間 |
最後に、「いつテストを止めて、どちらかに決めるか」の基準も事前に用意しておきます。たとえば、主要指標で5〜10%以上の差が一定期間続いたら採用候補とする、あるいは両パターンで大きな差がなければ、運用しやすい方・ブランドに合う方を選ぶといったルールです。また、セール期間や大型キャンペーン中は数値が大きくぶれるため、通常時と分けて結果を読むことも大切です。事前にこうした基準を決めておくことで、Rolloutsのテスト結果を感覚ではなく、共通ルールに基づいてチームで共有・判断しやすくなります。
Rolloutsの操作手順 実際の設定フローと注意点
まずは、Shopify管理画面の「設定」や「オンラインストア」から対象テーマを開き、Rollouts対応のセクションやアプリ設定画面に移動します。そこで、テストしたいバージョン(例:新しい商品ページレイアウトや告知バナー)を「バリアント」として用意し、既存デザインをバリアントA(現行)、新デザインをバリアントB(テスト)のように整理します。ここでは、表示テキストや画像差し替えだけでなく、ボタン配置や表示/非表示の切り替えもまとめて変更できます。作成後は、公開前にプレビューで必ず見た目とリンクの動作を確認しておきます。
次に、配分や対象を決めるステップです。rolloutsでは、どのバリアントを何%のユーザーに表示するかをシンプルに設定できます。
- 配信比率:例)A 50% / B 50% からスタートし、結果を見て調整
- 対象ユーザー:全ユーザーか、一部の地域・デバイスに限定するか
- 期間:開始日時だけでなく、終了日時・終了後に採用するバリアント
これらをあらかじめ決めておかないと、「なんとなく続けてしまう」「いつの間にか元に戻っていた」といった状況になりがちです。
| チェック項目 | 概要 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| 計測指標 | 何を見て判断するか | CVR / クリック率などを1〜2個に絞る |
| トラフィック量 | 十分な訪問数があるか | アクセスが少ないページは長めの期間で運用 |
| 変更範囲 | 一度に変えすぎていないか | はじめは文言や配置など小さな変更に留める |
運用中は、ダッシュボードで数値を定期的に確認し、「どちらが勝ちか」だけでなく、「どの要素が効いたのか」をメモに残しておくと、次回以降のRollouts設定がスムーズになります。また、テスト終了後は必ず勝ちパターンを本番として固定し、不要になったバリアントは削除・非表示にしておくことで、管理画面の混乱や誤った再適用を防げます。

結果レポートの見方と改善への生かし方 次のアクションの決め方
結果レポートを見るときは、まず「勝ちパターン」ではなく「学び」を探す意識を持つと整理しやすくなります。Rollouts のレポートでは、たとえば以下のような観点で数値を確認します。
- 対象指標:CVR、追加率、カート到達率、LTV など、今回のテスト目的に合う指標か
- 差分の大きさ:パターン A/B の差が「日々のブレ」を超えていそうか
- トラフィックの偏り:デバイス別、チャネル別、地域別で偏りが出ていないか
- 想定とのズレ:事前の仮説とどこが合っていて、どこが外れているか
この4点を押さえると、「なぜこの結果になったのか」をチーム内で説明しやすくなります。
| 確認ポイント | 見るべき指標 | よくある判断 |
|---|---|---|
| テスト継続か終了か | トラフィック量 / 期間 | サンプル不足なら継続 |
| 採用パターンの決定 | CVR / 収益 / 返品率 | 主指標+副指標で総合判断 |
| 次の仮説づくり | ユーザー行動ログ | 好調セグメントから着想 |
次のアクションを決めるときは、「なにを固定して、なにを変えるか」を明確にしておくと運用が安定します。たとえば、勝ちパターンを本番に反映するかどうかに加えて、以下のようなステップで整理します。
- 反映アクション:テーマへの組み込み、セクションのデフォルト化、メッセージ文言の更新 など
- 追加で試すテスト:同じ勝ち要素を別ページ(商品詳細、カート、コレクション)にも展開するか
- 保留・中止の判断:数値差はあるが在庫リスクやオペレーション負荷が大きいパターンは見送る など
- 学びの記録:テスト名、期間、仮説、結果、次回へのメモを簡潔に残しておく
このプロセスをテンプレート化しておくと、担当者が変わっても同じ基準で判断でき、Rollouts を使った継続的な改善サイクルが作りやすくなります。
よくあるつまずきと対処法 安全にA Bテストを続けるためのチェックリスト
実際に運用してみると、「テストがいつまでも終わらない」「どの指標を見ればよいか分からない」といった戸惑いが生じがちです。まず押さえたいのは、テスト前に「中止条件」と「採用条件」を明文化しておくことです。たとえば、期間(例:14日以上)、トラフィック量(例:各パターンで少なくとも◯◯注文)、主要指標の変化幅(例:CVRが+5%以上なら採用)などをあらかじめ決めて、チームで共有しておくと、途中で迷いにくくなります。
- トラフィック配分を急に変えない(極端な再配分は結果を歪める)
- テスト中のテーマやアプリの大幅な変更を避ける
- キャンペーン実施期間をメモしておく(セールや広告で数値が跳ねるため)
- モバイルとデスクトップを分けて見る(片方だけ悪化していないか確認)
| つまずきポイント | チェック項目 | 対処のヒント |
|---|---|---|
| 結果が安定しない | 期間が短すぎないか 平日・週末をまたいでいるか |
最低2週間は様子を見て、 季節要因やセール期間をメモ |
| どのパターンを採用すべきか迷う | 見る指標を1〜2個に絞っているか | 「CVR」と「平均注文額」など、 ショップの目的に直結する指標だけを比較 |
| テストが売上に悪影響を出さないか不安 | 元のバージョンの割合を残しているか | Rolloutsでまずは90%:10%から開始し、 問題がなければ徐々に比率を増やす |
安全にテストを続けるための最終チェックとして、公開前に次の点を確認します。「テストの目的は明確か」、「どの指標・期間で判断するか決まっているか」、「不調時にすぐ元に戻せる設定になっているか」の3つです。特にRollouts機能では、元のバージョンに一括ロールバックできるようにしておくと、万が一コンバージョンが落ち込んだ場合でも素早くリスクを抑えられます。この基本的なチェックリストを毎回なぞる習慣をつけることで、専門的な統計知識がなくても、安定してA/Bテストを運用できるようになります。
Future Outlook
本記事では、Shopifyの「Rollouts」機能を使って、テーマや機能のA/Bテストを行う基本的な流れと、実務で押さえておきたいポイントを整理しました。
・Rollouts機能でできること
・テストの設計とバリアント作成の手順
・配信条件の設定や期間の考え方
・結果の確認と、次の改善につなげる方法
これらを組み合わせることで、カンと経験だけに頼らず、データに基づいてストアの変更を判断しやすくなります。
最初から完璧なテストを行う必要はありません。小さな変更からでも、継続して検証を重ねることで、自店舗にとって有効な施策やパターンが少しずつ見えてきます。
本記事を参考に、まずは影響範囲の小さい箇所からRolloutsによるA/Bテストを試し、自社の運営フローに合った形で活用方法を育てていってください。
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