オンラインストアの売上やコンバージョンを伸ばしたいと考えたとき、「この施策は本当に効果があるのか」「変更して悪影響が出たらどうしよう」と、不安から一歩を踏み出しづらいことはありませんか。
その不安をできるだけ小さくし、根拠を持って改善を進めていくための代表的な方法が「A/Bテスト」です。
Shopifyでは、テーマや機能の変更を一部のお客様だけに試して結果を比べることで、「どのデザイン・文言・価格表示がより売上につながるのか」を検証できます。中でも「Rollouts」は、こうした段階的な公開やテストを支援するための仕組みで、専門的なエンジニアリングの知識がなくても、ショップ運営者が改善サイクルを回しやすくすることを目的としています。
本記事では、
– A/Bテストの基本的な考え方
- ShopifyでのRolloutsの役割
– 具体的な設定手順と運用のポイント
– 売上やCVR(コンバージョン率)の改善につなげるための見方・考え方
を、技術用語をできるだけ避けながら、Shopifyの運営担当者の方向けに整理して解説します。
「まずは小さく試して、数字を見ながら少しずつ改善していきたい」という方が、実務でそのまま使えるガイドラインとして活用いただける内容を目指しています。
目次
- A Bテストで売上が伸びる仕組みとShopify運営で押さえるべき基本ポイント
- Rolloutsの特徴とメリット Shopify標準機能との違いを整理する
- テスト前に準備すること 目標設定 KPI選定 ターゲットの決め方
- 売上アップにつながるテスト案 商品ページ カート回り 価格訴求の具体例
- RolloutsでのA Bテスト設定手順 テンプレートを使った実装の流れ
- テスト結果の見方と判断基準 どの指標を優先して改善に生かすか
- よくあるつまずきパターンと回避策 少ないアクセス数や偏りへの対応方法
- 中長期で成果を高めるためのテスト運用ルールと社内共有のポイント
- Key Takeaways
A Bテストで売上が伸びる仕組みとShopify運営で押さえるべき基本ポイント
ECにおけるA/Bテストは、「なんとなく良さそう」をやめて、データをもとに売上を伸ばすための仕組みづくりです。具体的には、同時期に2つのパターン(A案とB案)を一部のユーザーに出し分けし、「どちらが多くカートに入れたか」「どちらの購入完了率が高かったか」を比較します。これにより、デザインや文言、表示タイミングの違いが、実際の売上指標にどう影響しているかを数値で把握できます。感覚ではなく、「売上に貢献したパターンだけを残す」ことを繰り返すことで、ショップ全体の成績が少しずつ底上げされていきます。
Shopify運営で押さえておきたい基本は、「どこを」「何を指標に」テストするかを明確にすることです。特に非エンジニアの方は、テーマの大改修ではなく、管理画面やアプリ上で完結する変更から始めると運用しやすくなります。たとえば、以下のような小さな変更でも、売上に直結する指標を改善できることが多いです。
- 商品ページ:商品画像の構成、ファーストビューの説明文、価格の見せ方
- カート周り:追加入力項目の有無、送料表示のタイミング、クーポン入力欄の位置
- トップページ:おすすめ商品の並び順、バナーの文言、特集枠の有無
| テスト対象 | 主な指標 | Shopify運営でのポイント |
|---|---|---|
| 商品ページの構成 | CVR(購入率) | 写真枚数やレビュー表示を変えるだけでも効果を確認しやすい |
| カート/決済フロー | 離脱率 | 入力項目を減らすテストは、サポート負荷とのバランスも確認する |
| トップの訴求コンテンツ | 商品詳細ページへの遷移率 | キャンペーン告知だけでなく、定番商品の見せ方もセットで検証する |
Rolloutsの特徴とメリット Shopify標準機能との違いを整理する
Shopifyにはテーマの下書きや重複テーマを使った検証方法がありますが、実際の運用では「本番のトラフィックで安全に試したい」というニーズが多くあります。Rolloutsは、テーマ単位ではなくコンテンツや設定の”差分”だけを切り替えられるのが特徴です。そのため、在庫連携やアプリ設定をいじらずに、特定のバナーや商品セクション、価格表示などだけを対象にテストできます。また、テスト対象を「新規訪問ユーザーのみ」「特定の地域だけ」といった形で細かく絞り込めるため、通常運用に影響を出さずに改善施策を積み重ねられます。
- テーマ複製不要:既存テーマをコピーせず、変更したい箇所だけをロールアウトとして管理
- 対象ユーザーを柔軟に指定:デバイス・エリア・トラフィック割合などで配信条件を設定可能
- リスクを抑えた検証:不調なパターンは即時オフ、本番体験を崩さずに検証できる
- 定量的な比較:単なる「なんとなく良さそう」ではなく、売上やCVRで効果を確認
| 項目 | Shopify標準のテーマ切替 | Rollouts |
|---|---|---|
| 変更範囲 | テーマ全体 | 特定セクションや要素のみ |
| テスト方法 | 特定期間だけテーマを入れ替え | A/Bで同時配信し、指標を比較 |
| 運用負荷 | 複製テーマが増えやすい | 施策ごとにロールアウトを管理 |
| 分析のしやすさ | 外部ツールで個別に確認 | テスト単位で結果を整理・比較 |

テスト前に準備すること 目標設定 KPI選定 ターゲットの決め方
まず行うべきなのは、「なぜこのテストをするのか」を一文で言語化することです。売上30%増というゴールがあっても、そのための中間目標を決めなければ、テスト結果の判断があいまいになります。たとえば、商品詳細ページのテストなら「カート投入率を改善する」「商品比較で離脱するユーザーを減らす」など、ページの役割に合わせた狙いを明確にします。その上で、テストは一度で完結させず、小さな仮説を積み重ねて検証していく前提で計画を立てると、Shopify運営の実務に落とし込みやすくなります。
- ビジネスゴール:売上・利益・在庫消化などの最終目的
- ページの役割:集客・説明・比較・購入のどこを担うか
- 行動の仮説:「こう見せれば、この行動が増えるはず」という前提
- テストの範囲:PC/モバイル、既存顧客/新規など、対象をどこまで広げるか
これらを整理した上で、計測に使う指標を選びます。Shopifyの管理画面やRolloutsのレポートで追える数値のうち、最終判断に使う「主要KPI」と、原因を探るための「補助指標」を分けておくと迷いにくくなります。主要KPIはできるだけシンプルに1〜2個に絞り、残りは「なぜその結果になったか」を後から読み解くために使います。たとえば、カート投入率をメインにしながら、ページ滞在時間やスクロール率を補助的に確認するといった形です。
| 区分 | 具体例 | Rolloutsでの見方 |
|---|---|---|
| 主要KPI | カート投入率 / コンバージョン率 | バリエーション別の成果を比較 |
| 補助指標 | クリック率 / 離脱率 / 滞在時間 | ユーザー行動の違いを確認 |
| ターゲット | 新規訪問 / モバイル訪問 | セグメントを指定して配信 |
最後に、誰に対して検証するのかを決めます。全ユーザーを対象にするとテストは早く終わりますが、影響範囲が大きく、学びがぼやけることもあります。Rolloutsでは、Shopifyのトラフィックをセグメントに分けて配信できるため、まずは「モバイルの新規訪問者」「特定のコレクション閲覧ユーザー」など、改善インパクトが大きそうな層から始めるのがおすすめです。ターゲットを決める際には、以下の観点で優先順位をつけておくと、テスト設計がスムーズになります。
- トラフィック量:一定数のアクセスがあるか
- 収益インパクト:売上への寄与度が高い層か
- 課題の明確さ:離脱やカゴ落ちなど、問題がはっきりしているか
- 施策の実行しやすさ:バナー・コピー変更など、すぐ試せるか
売上アップにつながるテスト案 商品ページ カート回り 価格訴求の具体例
商品ページでは、まず「どの価格情報をどこまで見せるか」を細かく分解してテストします。たとえば、比較対象を変えるだけでもクリック率が動きます。よくあるのは以下のようなパターンです。
- 割引前価格+現在価格+割引率(例:¥9,800 → ¥7,800 20%OFF)
- セット割価格を強調し、単品価格は控えめに表示
- 価格のすぐ近くに「1日あたりの金額」を併記(サブスクや高単価商品の心理的ハードルを下げる)
- 在庫数や期間限定表示と価格を組み合わせ、「今、選びやすい条件」であることを明示
カート周りでは、「あと少しでおトクになる」構造を作ると客単価が変わります。Rollouts でテストする場合、カートページ上部のバナー文言や、しきい値のパターンを出し分けるのがシンプルです。
- 送料無料ラインの金額(例:¥5,000 / ¥7,000 / ¥10,000)をテスト
- カート内におすすめの追加入れ商品を1つだけ表示するパターンと、複数表示するパターン
- 「あと¥○○で送料無料」の表示位置(合計金額の上 / 下 / 画面上部固定バー)
- 決済フロー中のクーポン入力欄の有無・表示タイミング
| テストパターン | 例 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 価格表示ラベル | 今だけ価格 / セット割価格 | クリック率改善 |
| 割引の見せ方 | 金額差(¥2,000引き) vs 割引率(20%OFF) | CVR比較 |
| カート閾値 | 送料無料ラインを¥5,000・¥7,000で比較 | 客単価向上 |
| バンドル提案 | 「一緒によく購入される商品」を1件のみ表示 | 追加購入促進 |
RolloutsでのA Bテスト設定手順 テンプレートを使った実装の流れ
実際のセットアップでは、まず「どこを比べるのか」をテンプレートとして整理しておくと、毎回のA/Bテストが迷いなく進みます。私は最初に、対象ページ・比較する要素・計測する指標を表に落とし込み、Rollouts側のフラグ構成と紐づけています。たとえば、商品ページの「カートボタン文言」をテストする場合、Shopifyのテーマ内ではボタン文言を1か所だけテンプレート化し、Rolloutsのフラグ値でその文言を切り替える、という構成にします。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| テスト対象 | 商品ページのカートボタン |
| バリエーション | 「今すぐ購入」 / 「カートに追加」 |
| ターゲット | 全訪問者の50%ずつ |
| 主要指標 | カート追加率・購入完了率 |
テンプレートを使った実装の流れとしては、まずShopifyテーマ内に「rolloutsから受け取った値をそのまま表示するだけ」の部品を用意し、そこに対してRollouts管理画面でフラグを紐づける、という順番がおすすめです。例えば、Liquid側ではあらかじめ{{ rollouts.cart_cta_text }}のようなプレースホルダを埋め込み、Rolloutsで以下のような設定を行います。
- フラグ名:
cart_cta_text - バリエーション:
- A:標準文言(例:「カートに追加」)
- B:変更文言(例:「今すぐ購入」)
- 配分ルール:訪問者を自動的に50/50に分割
- トラッキング:ボタン押下 → カート追加 → 購入完了までをイベントとして送信
運用時は、毎回ゼロから考えずに済むよう、テストのテンプレートをパターン別に用意しておくと効率的です。例えば「ボタン文言テスト」「価格表示テスト」「バナー画像テスト」などの型をあらかじめ決め、各型ごとに以下をチェックリスト化しておきます。
- 必要なRolloutsフラグ名(例:
price_badge_label) - Shopifyテーマ側の差し替え箇所(セクション名・スニペット名)
- 必ず追う指標(CTR、CVR、平均注文額など)
- テスト期間の目安(例:最低7〜14日間)
テスト結果の見方と判断基準 どの指標を優先して改善に生かすか
テストが終わったら、まず「どの数字を見るか」を決めておくことが重要です。Shopifyの管理画面やRolloutsのレポートでは、多くの指標が表示されますが、売上改善を目的とする場合は、次のような優先順位で確認すると判断しやすくなります。
- 第1優先:注文数 / コンバージョン率(セッション数に対する注文率)
- 第2優先:売上合計 / 平均注文金額(AOV)
- 第3優先:カート追加率 / チェックアウト到達率
- 補助的に:直帰率、ページ滞在時間、スクロール率など行動データ
| 指標 | 役割 | 改善に使う場面 |
|---|---|---|
| コンバージョン率 | 全体の「買ってくれた割合」を見る | LPや商品ページの比較 |
| 平均注文金額 | 1件あたりの売上の質を見る | アップセル・セット販売の比較 |
| カート追加率 | 商品ページの「欲しいかどうか」を測る | 価格表示・写真・説明文のテスト |
どの指標を優先するかは、テストの目的とページの役割で変わります。例えば、商品詳細ページのテストなら、カート追加率 → コンバージョン率 → 売上の順で確認します。一方、カートページやチェックアウト手前のページであれば、コンバージョン率と平均注文金額を重視します。また、差が小さい場合は、行動データ(スクロール率や滞在時間)を参考に「方向性は悪くないが、まだ要素が足りない」といった仮説を立て、次のテスト内容を決めていきます。
よくあるつまずきパターンと回避策 少ないアクセス数や偏りへの対応方法
テストを始めて最初に直面しやすいのが、「そもそもアクセスが少なくて結果が安定しない」「PCだけ極端に多く、スマホはほとんど来ない」といった偏りです。アクセス数が少ない状態で結論を出してしまうと、たまたまの注文1〜2件に振り回されることになり、施策判断を誤ります。私は、期間に余裕がある場合は最低でも1〜2回の週末をまたぐこと、日別の注文数が普段どおりに推移しているかを管理画面で確認してから判断するようにしています。
- テスト対象を絞る:全ページではなく、アクセスの多い商品ページやコレクションページに限定する
- 測定指標を簡潔にする:CVRやカート追加率など、1〜2指標に絞って判断する
- 期間を固定する:「最低2週間」など、終了条件を事前に決めておく
- 集客施策を並行しない:大きな広告キャンペーンやセール開始とテスト開始を重ねない
| つまずき | 典型的なサイン | 現実的な回避策 |
|---|---|---|
| アクセス不足 | 1日あたりセッションが2桁以下 | 高トラフィック商品のみにテストを限定 |
| デバイス偏り | スマホ比率が極端に低い/高い | Rolloutsでデバイス別にセグメントして検証 |
| 期間による偏り | 平日と週末でCVRが大きく変動 | 最低2週間以上走らせ平均的な傾向を見る |
どうしても母数が集まらない場合は、「1回で完璧な答えを出そうとしない」ことも重要です。例えば、まずは大胆な2パターンで大きな方向性を決めるテストを行い、その後に勝ちパターンの中で文言や色など細部を微調整するテストに進む、という2段階構成にすると、少ないアクセスでも判断しやすくなります。また、Rolloutsの配分比率を「A:80% / B:20%」のように調整して、売上へのリスクを抑えながら試す方法もあります。無理に統計用語を理解しようとするより、「データの偏りが大きいときは結論を急がない」というシンプルな運用ルールをチームで共有しておくと、現場の判断が安定します。
中長期で成果を高めるためのテスト運用ルールと社内共有のポイント
中長期で成果を積み上げるには、テストを「単発の施策」ではなく「継続的な運用プロセス」として設計することが重要です。具体的には、月ごと・四半期ごとにテストテーマを決め、売上や利益だけでなく、LTVや返品率などの指標も並行して確認します。また、テスト自体の質を高めるために、仮説・計測指標・実施期間・除外条件(セール期間や大型キャンペーンなど)をあらかじめテンプレート化しておくと、担当者が変わっても一定レベルの運用が維持できます。
- テストの目的を1つに絞る(例:カート投入率改善、メルマガ登録率向上など)
- 集計のタイミングを固定する(例:毎週月曜に前週分をレビュー)
- 異常値の扱いルールを決める(大量返品・ギフト需要などの特殊要因)
- 勝ちパターンの再検証期間を設ける(季節要因を切り分けるため)
テスト結果の社内共有では、「数字だけ」でも「感覚論だけ」でもなく、意思決定に直結するレベルまで整理することが大切です。Shopify運用現場では、マーケティング、CS、在庫管理のメンバーが同じ情報を見られるようにしておくと、施策への理解と協力が得やすくなります。Rolloutsのレポート画面をそのまま共有するだけでなく、ポイントを要約したシートや簡単な資料に落とし込むと、非マーケティング部門にも伝わりやすくなります。
| 共有物 | 内容 | 頻度 |
|---|---|---|
| テスト要約シート | 目的・期間・結果を1ページに集約 | テスト終了ごと |
| 月次レポート | 売上・CVR・LTVへの影響を一覧化 | 月1回 |
| 運用ルール集 | テストフローとチェック項目を明文化 | 四半期ごとに更新 |
社内での合意形成を円滑にするには、テスト前後での「お客様の変化」をイメージしやすく見せる工夫も有効です。たとえば、Rolloutsで実施したパターンごとの商品ページをスクリーンショットで並べ、CSが受けた問い合わせ内容の変化や、返品理由の傾向を簡潔に添えると、現場メンバーが「なぜこのパターンを本採用するのか」を理解しやすくなります。そのうえで、社内ルールとして次のようなポイントを押さえておくと、中長期で安定したテスト文化が定着しやすくなります。
- テストの実施前に関係部署へ共有(在庫・配送・CSなど)
- 勝ちパターン採用時は必ず根拠を記録(数値・定性コメントの両方)
- 1つの失敗で結論を出さない(テーマは変えずに切り口を変えて再テスト)
- 新担当者へのオンボーディング資料を整備(過去テストのアーカイブを含める)
Key Takeaways
本記事では、Rolloutsを活用してA/Bテストを行い、売上向上につなげるまでの基本的な流れと考え方をご紹介しました。
重要なポイントは次の3つです。
- 「なんとなく」ではなく、仮説を立てて検証すること
バナーの文言や商品ページの構成、価格表示の仕方など、「これを変えたら、なぜ売上が伸びると思うのか」を言語化し、テストの目的を明確にすることが大切です。
- 小さく始めて、数字で判断すること
すべてを一度に変えるのではなく、影響範囲を絞ってテストし、「どのパターンが、どの指標をどれだけ改善したのか」を確認しながら進めることで、リスクを抑えつつ改善を積み重ねられます。
- テスト結果を「終わり」にせず、次の改善につなげること
勝ちパターンを採用するだけでなく、「なぜこちらが良かったのか」を振り返り、今後の施策や別ページの改善にも活かしていくことで、継続的な成長が期待できます。
rolloutsを使うことで、専門的な開発知識がなくても、こうしたA/Bテストを日常的な運用の一部として組み込むことが可能になります。
まずは、影響の大きそうな1〜2ページからテストを始め、少しずつ自社のショップに合った「勝ちパターン」の蓄積を目指してみてください。
継続的な検証と改善を通じて、自店舗ならではの最適なユーザー体験を形にしていきましょう。
コメントを残す